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機能性関与成分にDNJ、3社に質問 2社から回答、1社からは回答なし

 小林製薬㈱(大阪市中央区、小林章浩社長)の紅麹サプリメントによる健康被害について、ウェルネスデイリーニュース(WNG)編集部ではその後も、「中間製品への合否判定基準」、「出荷判定の際の1ロットのサイズ」、「健康被害を発生させたロットにおけるロバスタチン含有率」など、5月31日~6月6日にかけて同社広報部に対していくつかの質問を行っているが、「厚生労働省主導で原因究明が行われている。品質管理体制の精査については事実検証委員会の委員に委嘱し調査・検証が行われているため、回答は控える」と取り付く島がない。

 紅麹サプリ事件で有害事象の原因となったのは医薬品を機能性関与成分とする機能性表示食品だった。医薬品を機能性関与成分とする機能性表示食品は他にもある。WNG編集部が14日を回答期限として関係3社に質問状を送ったところ、うち2社から回答があり、1社からは回答がなかった。

紅麹菌+モナコリンK=原因物質

 今回の事案について調査を進めている厚生労働省と国立医薬食品衛生研究らは5月28日、途中経過報告において、健康被害情報のあるロットからプベルル酸とは別に未知の化合物「Y」と「Z」を検出。いずれも、モナコリンKと基本骨格が類似しており、紅麹菌がモナコリンKを産生する過程で青カビの介在により生成されたと推定している。
 原因究明の調査はいまだ途上だが、問題はモナコリンKが何らかのかたちで関わっている可能性は否定できず、しかも同成分がロバスタチンという医薬品の別称に過ぎないという点にある。

厚労委で大西衆院議員が指摘

 4月19日、立憲民主党の大西健介衆議院議員は厚生労働委員会でモナコリンKに関する質問を行っている(2分35秒~)。機能性表示食品『紅麹コレステヘルプ』の届出上の機能性関与成分は「米紅麹ポリケチド」だが、それはモナコリンKの総称であり、LDLコレステロール産生阻害作用はモナコリンKの作用によるものと述べている。そして「モナコリンKというのは、別名ロバスタチンといって、WHOが医薬品成分として位置付けている」と続け、「医薬品成分が機能性表示食品として売られていること、これは根本的な問題だと思う」と指摘している。

 医薬品成分と機能性表示食品の機能性関与成分の関係についてはウェルネスデイリーニュースでも再三にわたって報じてきた
 大西議員が取り上げているモナコリンKについても、2013年4月22日付で大和製罐㈱(東京都千代田区)が「紅麹(モナコリンKとして)」を関与成分とする清涼飲料水として特定保健用食品に申請していた。申請された保健用途は「コレステロールが気になる方に適する食品」という表示。当時、用いられた根拠論文は「紅麹エキス配合茶飲料の血清コレステロールに及ぼす影響および安全性の検討」(『健康栄養食品研究』2010年13巻1号)。
 結局、この申請は許可に至ることはなかった。その後、グンゼ㈱(大阪市北区)が事業化。16年5月、小林製薬が事業を譲り受け、2018年春からモナコリンKを配合した『紅麹コレトール』という商品を発売。他方、20年6月に機能性表示食品として『紅麹コレステヘルプ』を届け出て、翌年4月から販売を開始している。一方の『紅麹コレトール』は21年1月で終売している。

 本稿では、『紅麹コレステヘルプ』で起きた一連の有害事象がモナコリンKが原因であるかどうかを問いたいのではない。問題は、これと類似の機能性表示食品、すなわち、医薬品成分を機能性関与成分としている商品が他にも市場に出回っていること。そして、そのような現状を招いた一因が、現在、積極的な発言を控えている業界団体の関与によるものだったのではないかという点を懸念している。

業界要望で医薬品成分も使用可能に

 今年5月8日に行われた衆院厚生労働委員会では、大西議員がこの件について発言している。
 17年11月に行われた規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループにおける業界要望では、(一財)バイオインダストリー協会や(一社)健康食品産業協議会が「専ら医薬品リストに掲載されている成分であったとしても、機能性表示食品の機能性関与成分として扱うことを可能とすることなどについて要望。それを受けるかたちで可能になったという風に理解しているが宜しいか」との大西議員の質問に対し、消費者庁の依田審議官は、「(事業者団体の要望を受けて」18年1月30日の同ワーキンググループにおいて、厚生労働省および消費者庁から専ら医薬品リストに掲載されている成分を含む食品であっても当該成分が生鮮食品に元から含まれている成分であって、その生鮮食品を機能性表示食品として届け出る場合には、当該成分を含有しても医薬品とは扱わず、他の届出と同様に確認を開始する旨、両省庁それぞれが関係するQ&Aにおいて措置予定ということで対応しているという状況」と答弁している。

 結果、19年3月に厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課(厚労省監麻課)が課長通知「『医薬品の範囲に関する基準』」に関するQ&Aについて」(薬生監麻発0315第1号)を発出。これを受けて消費者庁が「機能性表示食品に関する質疑応答集」を改正。「届け出る食品の機能性関与成分が、厚労省の『専ら医薬品リスト』に含まれる場合、消費者庁はどのように確認するのか」という質問を追加。これに対し、厚労省の通知で示された考え方を踏まえ、医薬品に該当しないと判断した場合は、機能性表示食品として届け出ることを妨げないとした。

 何のことはない、構図としては事業者団体と厚労省、消費者庁の三つ巴による構造的癒着が根底にあったということである。こう見てくると、今回起きた紅麹サプリによる健康被害は3者にとって重要な意味を持つと考えることもできる。

 当時を知る関係者は、「事業者団体から団体交渉を申し入れしたのはグルタチオン、Sアデノシルメチオニン、DNJ、γオリザノール、タウリンの5成分」だと話している。

 小林製薬は今回、WNGの取材に対して、機能性関与成分を「米紅麹ポリケチド」とした経緯について、行政と協議して決めたと話している。かつてトクホの申請では却下した「モナコリンK」であることを知って厚労省が承認したとも考えにくいのだが、小林製薬が緘黙を決め込んでいる今となっては真相は藪の中だ。果たして本件を小林製薬1社だけの問題として片づけてよいものかどうか、今後の動向が注目される。

機能性関与成分「イミノシュガー」「モラノリン」

 規制緩和を受けて機能性表示食品に用いられている医薬品成分は他にもある。WNG編集部では、医薬品成分「1-デオキシノジリマイシン(DNJ)」を機能性関与成分として配合した商品を販売している3社に質問した。機能性関与成分「桑葉由来イミノシュガー」を使用しているトヨタマ健康食品㈱(東京都中央区)、㈱ファンケル(神奈川県横浜市)、「桑葉由来モラノリン」を機能性関与成分としている㈱小谷穀粉(高知市高須)の3社である。

 厚労省の課長通知には、「『専ら医薬品リスト』に収載されているものであっても、それが野菜・果物等の生鮮食料品に元から含有される成分である場合は、当該成分を含有している生鮮食料品の医薬品該当性について、当該成分を含有することのみを理由として医薬品に該当するとは判断せず、食経験、製品の表示・広告、その製品の販売の際の演術等を踏まえ総合的に判断する。また、当該生鮮食料品を調理・加工して製造された食品についても、当該加工食品の製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は鈍化を目的とした加工をしておらず、かつ、食品由来でない当該成分を添加していない場合は、前段と同様の取り扱いとする」とある。

 紅麹サプリ事件の影響、ならびに上記3社が販売している製品が「成分の抽出、濃縮」などの加工を行っていないかどうか聞いたところ、トヨタマ健康食品と小谷穀粉からは回答があったが、ファンケルからは回答期限の先週14日までに回答が得られなかった。

 一問一答は以下のとおり(⇒つづきは会員専用記事閲覧ページへ)【田代 宏】

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