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原因はプベルル酸?モナコリン?それとも? あいまいな国の関与がもたらした制度の功罪

 TBSが6日に放送した「報道特集」は、「“紅麹問題”被害者の怒りと不安」というテーマで小林製薬㈱(大阪市中央区、小林章浩社長)の紅麹関連製品回収問題を取り上げた。
 「意図していない成分」が含まれるとされる『紅麹コレステヘルプ』と、健康被害を生じている対象ロット以外の製品を比較分析するなど、調査報道にふさわしい検証を行っていた。
未知の成分「ピークX」をプベルル酸の疑いがあるとする厚生労働省に対して、同品に含まれる「モナコリンK」に疑いの目を向ける昭和大学の佐藤均教授の指摘。2013年にトクホ申請された清涼飲料水の関与成分はこの成分だったが、許可には至っていない。
 『――コレステヘルプ』の機能性関与成分は「米紅麹ポリケチド」とされているものの、これは「モナコリンK」の別名にすぎない。このことが、行政が何かを隠しているのではないかという陰謀論がささやかれる原因を作っている。一刻も早い原因究明のためには、小林製薬はもちろん、行政関係者の勇気ある情報開示が不可欠だ。

 番組には3代目の消費者庁長官を務めたこともある、(一社)消費者市民社会をつくる会(ASCON)の阿南久代表理事も登場した。ASCON科学者委員会が行っている機能性表示食品の届出における科学的根拠の判定シートが紹介され、同品が3段階評価の最下位C評価(ある程度の根拠)であることを伝え、同社の姿勢を問う場面があった。

機能性表示食品制度の欠陥を指摘する声止まず

 一連の情報番組でも、コメンテーターやゲストが、国の関与がなく、事業者の届出制として運用されている機能性表示食品制度の構造的な欠陥を指摘するケースが増えた。
 消費者庁は1日以降、政府の指示を受けて、機能性表示食品の今後のあり方を検討するチームを庁内に発足、5月末までを目途に今後のあり方を取りまとめる作業に入っている。

 今後のあり方について何が議論されるのか? 何を総括し、どう変えるのか? 健康被害事象の報告の義務付けなど国の関与のあり方が大きな焦点になるのではないかという見方がある。ただそれだけで本当にいいのだろうか? 今後、関与の度合い、関与の質が問われることになる。

 これまでにも国の関与がなかったわけではない。編集部が昨年4月に行ったアンケート調査では、事業者のほぼ10%が機能性表示食品制度に不満を抱いており、その多くが「実質的に審査が行われているから」というものだった。それでもあくまで、「(国は関与せず)形式的なチェックにとどめている」と主張する消費者庁だが、どこからどこまでが形式的チェックで何が実質的審査かとの基準も定義もない。「この数年で審査内容や基準も変わってきており、古い機能性表示食品については市販後3~5年を目安にし評価機関を設けるべき」(販売会社)、「消費者に対して商品選択の指標になっているが、広告を出せる大企業の商品だけが目立っている」(支援会社)などの指摘もあり、担当官によるバラツキやその裁量による受付公表が行われているのではないかとの疑いを持つ事業者は一定数存在する。そのほころびの1つが機能性関与成分の名称をめぐる国の関与だ。

医薬品成分は別称で届出を受付公表

 例えば、これまでに桑葉由来成分を機能性関与成分とした届出が数多く受付公表されている。
 2021年1月28日、「桑由来モラノリン」を機能性関与成分とした粉末桑茶の届出が公表された。表示しようとする機能性には「本品は、糖の吸収を抑え、食後血糖値の上昇を緩やかにする機能があることが報告されている桑由来の成分が含まれています」とある。桑由来成分「桑葉モラノリン」は「1-デオキシノジリマイシン(DNJ)」の別名で、この成分は「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(医薬品リスト)に収載されている。ただし、クワの「葉・花・実(集合果)」は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収められている。
 他にも、「本品には桑の葉由来イミノシュガーが含まれます。桑の葉由来イミノシュガーには食後血糖値の上昇を抑える機能があることが報告されています」と表示する商品がある。機能性関与成分は「イミノシュガー」といい、これも同じく医薬品成分DNJを含む成分である。

 そして、桑由来モラノリンを関与成分とした商品は表示の中に関与成分名をうたっていないが、イミノシュガーの方は堂々とうたっている。21年当時、この違いについて消費者庁は次のように語っている。

 イミノシュガーについて原材料たる食品中に含まれるもので、機能性表示食品として届け出をすることは妨げていない。必要な科学的根拠、一定の科学的根拠、安全性と機能性に関しての科学的根拠が整えられて届け出されたということで公表に至ったもの。ただし、表現法についてはやはり、当該成分名は表現しないなどの工夫をしたことによって、そういう表現方法を取られたということで医薬品とは誤認させないような工夫がなされているものと考えている」

 桑葉由来モラノリンについて「あくまでも届出であるため、届出表示に成分名を表示するかしないかは事業者の判断によるもの。また、薬機法に抵触するかどうかは厚生労働省の判断によるため、消費者庁としては、届出段階では、ほかの内容も含め、ガイドラインに沿ったかたちでの届出がなされていることから公表に至った。ただし、届出公表後、事後チェックなどにより何らかの問題があると判断された場合は、事業者に対応を求めることになる。そのため、事業者側も、しっかり情報収集し、届出されているのではないか」

 上の「原材料たる食品中に含まれるもの・・・」についてその意味を説明する。

課長通知「医薬品の範囲に関する基準」変更

 2019年3月、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課(厚労省監麻課)が「『医薬品の範囲に関する基準』」に関するQ&Aについて」(薬生監麻発0315第1号)という通知を出した。
 通知によると、「『専ら医薬品リスト』に収載されているものであっても、それが野菜・果物等の生鮮食料品に元から含有される成分である場合は、当該成分を含有している生鮮食料品の医薬品該当性について、当該成分を含有することのみを理由として医薬品に該当するとは判断せず、食経験、製品の表示・広告、その製品の販売の際の演術等を踏まえ総合的に判断する。また、当該生鮮食料品を調理・加工して製造された食品についても、当該加工食品の製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は鈍化を目的とした加工をしておらず、かつ、食品由来でない当該成分を添加していない場合は、前段と同様の取り扱いとする」とし、従来の規制を緩和する方向性を示したのである。

 これを受けて消費者庁が「機能性表示食品に関する質疑応答集」を改正した。届け出る食品の機能性関与成分が厚労省の『専ら医薬品リスト』に含まれる場合、厚労省の通知で示された考え方を踏まえ、医薬品に該当しないと判断した場合は機能性表示食品として届け出ることを妨げないとの解釈を示した。

行政はこぞって機能性関与成分に医薬品成分の転用許す

 このような状況について当時、編集部の取材に対して厚労省は、「明らかに薬機法に抵触するような表現でなければ、ヘルスクレームや表示内容だけでは判断できない。広告表現などを含めて総合的に判断する必要がある」とコメント。東京都薬務課も、「あくまでも一般的な考え方として、機能性表示食品として届け出された商品であるため、医薬品とは判断しない」と回答している。

 消費者庁も、医薬品リストに収載されている成分を関与成分とした機能性表示食品については、厚労省にお伺いを立てた上で受付公表した。これを国の関与と言わず何というのか?
 ただ、小谷穀粉の担当者は、表示に機能性関与成分名を使っていない理由について、「消費者庁から具体的なサジェスチョンがあったわけではなく、何度か差し戻される過程で、薬機法に抵触する可能性を鑑みて表示を変更したところ、公表に至った」と説明している。明確な判断基準はつかめておらず、消費者庁とのやり取りは長期にわたったという。このような状況に多くの業界関係者は「画期的」と喝采を送った。

 さて、届出情報に報告されている『紅麹コレステヘルプ』の機能性関与成分は「米紅麹ポリケチド」。しかし、作用機序を示す別紙様式(Ⅶ)では、LDLコレステロール産生阻害作用に寄与しているのが「モナコリンK」だと明記してある。また、「モナコリンKは、コレステロールを減少させる薬のロバスタチンの有効成分と化学的に同一で、ロバスタチンと同じタイプの副作用や薬剤相互作用を引き起こす可能性がある」(厚労省「eJIM」)。もっとも「ベニコウジ」は非医薬品リストに掲載されており、ベニコウジ色素については(一社)日本食品添加物協会が安全性に関する声明を出すことで風評被害に配慮している。今回問題となっているのは、あくまで小林製薬の紅麹原料を使用したサプリメントに限ることはいうまでもない。

 しかし11年前、モナコリンKを関与成分として特定保健用食品(トクホ)にトライした事業者がいた。(⇒つづきは会員専用記事閲覧ページへ)【田代 宏】

(冒頭の画像:回収命令を出した大阪市の発表資料より)

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