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幕を閉じた健康食品「紅豆杉」 それに代わって登場「白豆杉」、異なる食薬区分

 日本で長年販売されてきた、ある健康食品の製造販売がこのほど終わった。終わらされた、とも言える。背景にあるのは、厚生労働省が所管する医薬品医療機器等法に基づく食薬区分の変更。製造販売会社の社長は「納得できない」と訴えるも、法の規定に従い製造販売を取り止めるとともに、新製品を発売した。その名は「白豆杉(はくとうすぎ)」。

健康食品としての歴史に幕、背景に食薬区分の変更

 25年以上にわたり国内で販売されてきた健康食品「雲南紅豆杉」(以下、紅豆杉=こうとうすぎ)。その製造販売が10月23日までに終了した。

 昨年10月、紅豆杉を医薬品として規制する旨を厚生労働省の監視指導・麻薬対策課が決定。これにより食薬区分における紅豆杉の位置づけがガラリと変わり、イチイ科植物の紅豆杉を原材料にした健康食品など加工食品の製造販売が規制されることになった。厚労省が設けた1年間の経過措置期間(猶予期間)が同日、終わった。

 中国・雲南省から独占的に輸入する紅豆杉の「心材」を原料にした健康食品(お茶、エキス粒)を国内の協力工場で製造し、百貨店や薬局への卸売や通信販売などを行ってきた会社がある。1971年設立の㈱紅豆杉(神奈川県相模原市、信川高寛社長)だ。

 「今でも(食薬区分の変更を)全く納得していない」と信川社長。怒りは収まらず、食薬区分変更の差し止めを求める仮処分を裁判所に申請した。それでも紅豆杉の製造販売は完全に取りやめた。「悪法もまた法。守る義務がある」といい、10月24日以降、「私たちが長年販売してきた紅豆杉を購入できる場所は日本全国どこにも無い」。仮処分の申し立ては、東京高裁が同23日までに却下した。

非医から専ら医に 販売会社や購入者の訴え届かず

 紅豆杉をめぐる食薬区分変更の経緯を振り返る。

 食薬区分とは、製品の原材料について「医薬品に該当するか否か」をリスト化して示すもので、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」(以下、専ら医)と、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」(非医)の2つに分類されている。専ら医リストに載せられた原材料は、薬機法の規制(無承認無許可医薬品規制)を受け、健康食品など食品に使用することは原則、できない。

 その中で、紅豆杉の心材は、「25年以上前から」(信川社長)、ウンナンコウトウスギの名称で非医リストに収載されてきた(その樹皮、葉は専ら医)。だからこそ同社は、紅豆杉の心材を原料にした健康食品を長年、製造販売できていた。

 しかし、昨年2月、食薬区分を審議する有識者らのワーキンググループ(WG)が新たな判断を示す。心材も専ら医とするのが妥当だとする判断だ。信川社長は現在も強く反論しているが、議事概要によれば、「国内外で食経験もなく、含有成分であるpaclitaxel(パクリタキセル)は医薬品として使用されている化合物であり、極めて強い毒性を有する」ことが理由とされた。

 ちなみに、パクリタキセルについて信川社長は、自社で実施した製品分析では検出されない(検出限界以下)と主張。よしんば含有しているのだとしても非常に微量であり、人体に影響を及ぼすほどの量ではないと訴えている。

 一方、WGの判断に対するパブリックコメントには700件を超える、健康食品として長年の食経験がある、これまでに健康被害は起きていない──などといった反対意見が寄せられた。異例の数に上った反対意見を受け、厚労省は審議を再度実施した。

 しかしWGは判断を維持。そして厚労省は同年10月、ウンナンコウトウスギの心材の区分を専ら医に変更する食薬区分改正を通知。流通実態があることを考慮し、1年間の経過措置期を設けることになった。

廃業の判断を翻意 白豆杉は救世主になるか

 今年2月、信川社長はウェルネスニュースの取材に、廃業する考えを述べていた。「紅豆杉一本でやってきた」(同)ため、それ以外に販売しているものは何も無い。最盛期には年間約13億円を売り上げていたが、早晩ゼロになる。経過措置期間中から取引先離れが頻出してもいた。「25年以上かけて積み上げてきたものを一瞬でダメにされた」(信川社長)と忸怩たる思いを抱えながらも、事業継続不可能の判断は自然な流れだったと言える。

 だが、信川社長はその後、決断を翻意。紅豆杉に代わる製品を用意することができたためだ。

 同社は11月1日から新製品を発売する。中国から輸入したハクトウスギ(以下、白豆杉)の心材を原料にした、国内製造の健康食品の販売を始めることにした。

 「(紅豆杉を購入していた消費者に)受け入れてもらえるかどうかはやってみないと分からない。需要が無ければ会社は畳むしかない。新規事業として、ゼロからのつもりで始める」と信川社長は話す。安定的に原料調達ができるようになるまでは、エキス粒のみを取り扱うことにする。

食薬区分WG、「属の異なる別の植物」

 紅豆杉と白豆杉。どちらもイチイ科の植物で、名称が似通っているが、それぞれ異なる植物だとされる。食薬区分においても、別の植物として取り扱われている。前述のとおり紅豆杉は現在専ら医リストに収載されているのに対して、白豆杉の心材は以前から、ハクトウスギの名称、Pseudotaxus chieniiの他名で非医リストに載っている(樹皮、葉は専ら医)。このため信川社長は「中国から原料(心材)を調達することさえできれば、健康食品として販売していける」と判断した。

 一方、食薬区分において紅豆杉と白豆杉は、「同じもの」として扱われてきた経緯がある。国内における紅豆杉の健康食品としての歴史を終わらせることになった昨年10月の食薬区分改正まで、ハクトウスギの他名がウンナンコウトウスギと説明され続けてきた。

 それを改めることにしたのも前述のWG。ハクトウスギは「イチイ科Pseudotaxus属のPseudotaxus chieniiであり、イチイ科イチイ属のウンナンコウトウスギ(Taxus yunnanensis)とは属の異なる別の植物」だとして、それぞれを別品目として食薬区分リストに載せることになった。遺伝子情報などを基にした植物の鑑別研究の進展にともない、異なる植物であることが明らかになった、ということなのだろう。

 とはいえ、同じイチイ科の植物。白豆杉も紅豆杉と同じ課題を抱える可能性も脳裏をよぎるが、昨年10月の食薬区分改正のタイミングで、紅豆杉の心材とともに白豆杉の心材を専ら医とする判断をWGや厚労省がしていない以上、白豆杉に食薬区分上の課題はないと捉えるのが自然だといえる。

 「白豆杉の日本での食経験はほとんどないと考えられるが、基礎研究は中国で行われてきた。私たちとしても、岐阜大学に設置してある寄付講座などを通じて研究を進めていく。臨床試験を行う必要があるとも考えている」。信川社長はそう話す。定期的な成分分析や原料に心材以外の樹皮などが絶対に含まれないようにするなど、厳格な製造・品質管理も求められそうだ。

【石川太郎】

(冒頭の写真:紅豆杉が11月1日から発売する新製品のパッケージ。下の写真:紅豆杉の信川社長)

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