サプリの定義、私たちはこう考える 【特集:サプリの定義】業界団体・消費者団体・有識者、交差する多様な声
業界団体、消費者団体、そして有識者らは、サプリメントの定義をどう考えるのか。また、消費者庁が提示したサプリの定義案をどう受け止めているのだろうか。対面での聞き取りや書面回答、アンケートで得られた見解や意見を以下にまとめる。とてもではないが一つには括れない多様な声が聞かれた。4回に分けて掲載する。
妥当、だが分かりづらい 目的規定に抜け道懸念
森田満樹・(一社)FOOD COMMUNICATION COMPASS代表
サプリメントは形状だけでは定義できない。目的や成分(内容物)も含めて定義に盛り込むべきであるということをヒアリング(2026年2月5日の消費者庁食品衛生基準審議会新開発食品調査部会)で提案させてもらった。
消費者庁が今回提示した定義案にはそのすべてが盛り込まれている。その意味では妥当だと思うが、日本語として非常に分かりづらい。サプリメントは通常の食事を代替するものではない。それを的確に伝えることが定義の目的であるはずだが、このままでは、補助するものではなく代替するものであると読み間違われてしまうのではないか。
目的のところも議論の余地がある。生理機能を調節するという概念は、食の三次機能からきたものだ。それはトクホ(特定保健用食品)に認められた機能でもある。
しかしサプリメントには、ダイエットやリラックスなど、トクホ以上のことをうたっているものも多い。そうしたものも生理機能の調節(食の三次機能)と整理して良いのだろうか。消費者の誤解が生じるおそれがあり、(新開発食品調査部会)委員が「目的とする」ではなく「期待される」に改めるべきだと主張したことは理解できる。私はヒアリングで目的について「健康の維持・増進に特別に役立つことをうたって販売されたり、そのような効果を期待して摂られている食品」と提案した。
定義案は、全体的に分かりにくさがあると思う。それは置いておいても、委員の主張が取り入れられたという印象を受ける。そこは評価したい。サプリメントとは過剰摂取のおそれがあるものであるという特性が反映されている。消費者にとってはやはり、過剰摂取のおそれのあるものは(規制から)逃がさないようにしてもらいたい。
ただ、懸念もある。濃縮された成分を摂取しやすい食品形状にした製品をつくり、サプリメントではないとして、GMPや健康被害報告などの規制から逃れようとする事業者が出てこないだろうか。
機能性表示食品の健康被害は、毎日摂取するサプリメントで起きた。これは機能性表示食品制度の問題であったし、過剰摂取のおそれのあるサプリメントの問題でもあった。
そうである以上、サプリメントは規制される必要がある。(無規制に近い)その他のいわゆる健康食品であれば尚更だ。規制されなければ、安全性に懸念のある粗悪な商品がまた流通され、同じ問題が起きてしまう可能性がある。業界は、あのように大きな問題を二度と起こしてはならない。
学術会議提言と方向性同じサプリ独立の枠組みを評価
堀正敏・日本学術会議第二部副部長(東京大学大学院農学生命科学研究科教授)
日本学術会議の提言「我が国の機能性食品制度に関わる課題と対応」(2026年2月27日)では、サプリメントの定義について、「通常の食品を補うことを目的とし、食品の一次機能(栄養的機能)あるいは三次機能(生体調節機能)を有する食品成分を含むサプリメント形状の食品」とすることを提案していた。
今回、消費者庁が提示した定義案を見ると、一次機能や三次機能という言葉こそ使っていないが、「通常の食事による栄養摂取の補助」は一次機能、「通常の食事による三次機能の補助」は三次機能をそれぞれ意味している。これは我々が提言した科学的な立場を汲み取っているものと評価できる。
一方で、消費者庁はサプリメントを食品に位置付ける方向性を示した。この点、我々の提言では、サプリメント法を制定して、食品とも医薬品とも法的に区別して取り扱うことを提案していた。これは、機能性成分が高濃度で含有されること、場合によっては不純物も同時に高濃度に濃縮されて含有されるおそれがあることなど、サプリメントは通常の食品とは多くの点で異なることを踏まえたものだ。
ただ、消費者庁は、サプリメントを食品として整理しつつ、保健機能食品から、その他のいわゆる健康食品まで横串で位置付ける方向性も示している。これは、独立した法律を作るわけではないにせよ、いわゆる健康食品の中でサプリメントを定義し、独立させるものと言える。これが実行されれば、従来とは大きな違いが生じると思われ、サプリメントの安全性の確保などに向けたある程度の効果が期待できる。最終的には、その他のいわゆる健康食品におけるサプリメントは減っていくのではないか。
個人的な見解だが、サプリメントを定義し、規制するのであれば、国際的な基準に合わせるべきだと思う。そうすることで、日本のサプリメントが海外にもっと展開できるようになるのではないか。単にGMP義務を課すというのではなく、米国のように「cGMP」を課してはどうか。業界にとってはつらいことなのかもしれないが、事業者の海外展開を後押しするような規制が行われるべきだと考える。結果的に、業界も活性化していくのではないか。
「濃縮されたもの」とは何か サプリは第3のカテゴリ
合田幸広・国立医薬品食品衛生研究所 名誉所長
定義案には「濃縮されたもの」とある。そうしたものにはリスクがあるという認識の下で議論が進んでいる。だが、ここで言う「濃縮」とは何であるかについてのコンセンサスがまったくないまま議論されているのではないか。
天然物中の特定の化合物の濃度を大幅に高めたような抽出物は、確かに「濃縮されたもの」だろう。一方で、水分を飛ばしただけのような抽出物もそうだろうか。そうした抽出物の安全性は通常の天然物とさほど変わらない。
そもそも、濃縮されていない加工食品はほとんど存在しない。つまり、濃縮という行為自体にリスクがあるのではなく、「天然に存在するものと(大きく)成分組成が異なるもの」を長期的に摂取するものであるからサプリメントにはリスクがある。そのことを「濃縮」の一語に集約させたのだと思うが、議論の前提として、そういった本質が正しく理解されている必要がある。そうでなければ今後、誤解や混乱が生じるおそれがある。
ほかにも違和感を覚えたことがある。食品と医薬品以外の第3のカテゴリとしてサプリメントを取り扱っている国・地域はないという話があった。法的にはそうなのだろうが、本質的には第3のカテゴリとして取り扱われている。私自身そうすべきだと考える。だが、定義案や議論からは、第3のカテゴリであるという意識や思想はほとんど感じられない。
なぜサプリメントが第3のカテゴリであるのかといえば、第1に、「明らか食品」ではないこと。第2に、見た目や風味だけで品質の良し悪しがわからないこと。第3に、食経験を超える量を摂取させる可能性があること。安全性の観点からは最後のところが最も重要であり、「濃縮されたもの」の話とも密接に関わる。サプリメントの規制のあり方を検討するとき、そこをどう規制していくのかも問われるはずだ。そういった意識や思想を定義に落とし込んでいくべきだし、落とし込むためにはどうするべきかという議論が行われて然るべきだと思う。
いずれにせよ、今回の定義案は、サプリメントの範囲を広く捉えることを目的にしているのだろう。「その他過剰摂取のおそれのあるもの」ともある。事業者にとっては、非常に怖い定義案になっているのではないか。
(『Wellness Weekly Report』2026年6月号より転載。次回につづく)
【編集部】
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