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エビデンス入門(56) Totality of Evidence(トータリティ・オブ・エビデンス)の考え方 

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授 竹田 竜嗣

 機能性表示食品の研究レビューによる届出においては、最終的なエビデンス評価を行う際に、表示しようとする機能性に関連が深いアウトカムについて統合する。
 統合の方法は、メタアナリシスを実施して複数の研究結果を統計学的にまとめる定量的な方法と、メタアナリシスまでは実施せず、各採用論文の質なども考慮しながら統合する定性的な方法がある。いずれの方法においても、ガイドラインには、Totality of Evidence(エビデンスの総体)で評価するように記述されている。

 また、ガイドラインでTotality of Evidenceは、設定したPICOに対して肯定的、否定的を問わず、総合的に評価するとも記述されており、研究レビューは、網羅的な論文検索と基準(PICO)を満たした採用論文の全体評価が求められている。

 採用論文の総体評価において、メタアナリシスでは定量的な手法であり、統計的有意差の有無ではっきりとエビデンスが有効である(評価項目においてプラセボに対して統計的有意差がある場合をここでは指す)か、有効でないかの答えが出るが、メタアナリシスを伴わない定性的な評価では研究レビュー実施者の判断に委ねられている。
 定性的な研究レビューでエビデンスが有効か有効でないかを判定する場合に、一番簡単で分かりやすい方法は、採用論文数における有効な文献と有効でない文献の数で判断する方法だ。採用論文数で有効である文献が有効でない論文数を上回っていれば、エビデンスの総体も有効であると考察する手法である。一番簡単な手法だが、機能性表示食品のガイドラインの質疑応答集には、次のような記述もある。

 「(肯定的な研究の数(論文数の割合)が肯定的でないものを)必ずしも上回る必要はない。ただし、肯定的な論文の数が否定的な論文の数よりも少ない場合は、その数の差を覆す評価を行った合理的な理由を詳細に説明する必要がある。」

 このことから、論文数での判断だけでなく、バイアス・評価を含めた論文の質も各論文で考慮し、総体評価を行うことも可能であると思われる。
 しかしながら、有効である論文と有効でない論文数が同数の時は、各論文の質から有効であると考察することは可能かもしれないが、それ以外の場合は、困難であることが多い。特に出版バイアスも考慮するとさらに難しくなる。そのため、定性的なレビューにおいては、実質的に、有効である論文数と有効でない論文数の比較によって考察することが無難であると考えられる。

(つづく)

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