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エビデンス入門(18)研究に関する倫理指針

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科

講師 竹田 竜嗣 氏

 今回は、ヒト試験を実施する上での倫理指針について述べる。人を対象とした研究に限らず、一般的に科学研究を行う上で、科学者は社会の貢献を意識して研究している。医学系の研究では、最終的な対象はヒトであることが多く、研究対象の人権を守る必要がある。そのために、医学系の研究では、研究を行う上でのさまざまなルールが存在する。

 倫理指針とは、これらのルールをまとめ、研究者が取る行動などをまとめたものである。ほとんどの科学雑誌は、指針に沿って行った臨床研究の報告のみを掲載している。また、動物を用いた研究でも、動物愛護の観点から、動物実験に関する倫理指針が定められている。

 さらに近年では、医学の進歩により、遺伝子治療なども発達してきた。遺伝情報(ゲノム情報)から得られる情報は膨大であることから、個人情報またはそれ以上の扱いを求められる傾向が強まっており、ヒトゲノム情報に関する倫理指針も定められている。

 倫理指針の内容は各国の事情によって異なるが、日本におけるヒトを用いた臨床研究は厚生労働省が管轄し、倫理指針を定めている。機能性表示食品の申請などを踏まえた研究についても、倫理指針が適用される。

 最新の倫理指針は、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」である。2014年に制定され、17年に一部改訂された。この研究倫理指針の主な内容は、研究対象者である被験者の尊厳と人権の保護、研究者が取るべき行動、研究の進め方などである。

 特に、被験者への同意の取得方法(インフォームドコンセント)や同意撤回の自由などについて、細かく記載されている。また、個人情報保護法との兼ね合いもあり、個人情報の取り扱いに関する指針も含まれる。そのほか、研究の質を確保し、透明性の高い研究を行う上での指針も定められている。

 その他の指針として、動物実験については文部科学省が「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」を定めている。動物愛護の観点などから、動物実験委員会での研究計画の審査や、動物に対する苦痛の軽減、動物実験者の安全確保などを求めている。

 このように機能性表示食品の開発だけでなく、ヒトや動物を用いた研究は生体から大きな情報が得られる半面、試験に協力する被験者や動物への尊厳などを確保し、適正に実施することが必要である。

(つづく)

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