1. HOME
  2. エビデンス入門
  3. エビデンス入門(15)バイアス・リスク

エビデンス入門(15)バイアス・リスク

関西福祉科学大学 健康福祉学部 福祉栄養学科

講師 竹田 竜嗣 氏

 機能性表示食品の研究レビューを実施する際に、論文の質の評価でよく用いる用語に、「バイアス・リスク」がある。今回はバイアス・リスクについて解説する。

 学術論文は、一般的に著者が考えること(仮説)をさまざまな方法で証明を試みていくことによって成り立っている。臨床試験であれば、食品成分や薬剤の効能について、何らかの仮説を立てて立証するために、多くの場合、ヒトに摂取させて(介入して)、その変化を見て、仮説が成り立つかどうかを統計的手法によって証明する。

 その際、立証するために著者が考えた試験デザインによって行う。本連載で既に説明したように、前後比較試験、プラセボ対照比較試験などの試験デザインを決めて実施し、結果を論文にまとめる作業を行う。

 機能性表示食品の届出で実施するシステマティック・レビュー(SR)は、機能性関与成分に着目し、臨床試験の論文を集め、機能性の有無などを評価する手法である。このSRの場合、作る者(評価する者)と論文の著者は異なることが多い。また、個々の論文は試験方法や人数、対象者もそれぞれ異なる場合が多い。そのため、それぞれの論文を同じ尺度で客観的に評価しにくい。

 そこで、論文の結果(肯定的、否定的)とは別に、論文の質を評価して、質の高い論文の結果に重み付ける手法を組み合わせて、結果とともにエビデンスの強さを判定する手法を取る。SRは、各論文を「批判的に」評価していく作業であり、論文の質の評価は一般的に減点方式で行う。その評価項目をバイアス・リスクと呼ぶ。

 バイアス・リスクの項目は、主として論文の結果に影響を与える因子別にいくつかの種類があり、その程度を「低い、中程度、強い」と評価していく。

 機能性表示食品制度の研究レビューの参考書式には、選択バイアス、実行バイアス、測定バイアス、症例減少バイアス(不完全アウトカム報告)、その他のバイアス(選択的アウトカム報告)が書かれている。

 選択バイアスと実行バイアスは、主として被験者を無作為に群分け(プラセボ群・実食品群)したかや、摂取している食品の群が参加者または実施者にわからなくなっているか(盲検性)について、バイアスとして挙げられている。この2つのバイアスの種類は、被験者の心理的なプラセボ効果や、実施者の意図的な群分けにより、試験結果が影響を受けるかどうかといった観点から設けられている。

 そのほかにも、例数減少バイアスなど、試験の実施後の解析で、初めに割り付けられた群からどの程度、解析対象被験者数が減少したかなど、試験の解析や報告内容(測定すると計画した全ての内容を報告しているか)なども試験結果に影響すると考えて設けられている。

 これらの例は、文献ごとに評価するものであるが、ほかにも、非精確性(被験者数の少ない研究では、結果の偶然性が否定できない)、言語バイアス(英語文献だけでなく、日本語文献など多言語による文献検索を実施したか)、出版バイアス(肯定的な結果は報告されやすいが、否定的な結果は報告されにくい)といった、研究レビューとして複数の文献をまとめる際のバイアスも評価されている。

 このように、バイアスとは各試験結果や研究レビュー全体に影響しそうな要因を批判的な観点から挙げて議論することで、エビデンスの強度について検討していく指標である。 

(つづく)

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ