JADA、サプリメントのアンチ・ドーピングGLを公表(後)
<WADA禁止表を対象に、年1回以上の分析>
「スポーツにおけるサプリメントの製品情報公開の枠組みに関するガイドライン」では、GMP認証を取得した生産施設で製造された製品について、分析を定期的に実施し、その分析結果を公開すると規定した。
製品分析の対象となる物質は、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が公開する統計情報に基づいて検出された禁止物質のうち、WADA禁止表にある各区分の上位50%の物質を1次的対象範囲とする。その60%以上の範囲について、年1回以上の頻度で分析すると規定している。
サプリメントの情報公開サイトは、中立的な立場の組織が運営するように求めた。サイトでは、生産施設審査結果と製品分析結果の情報を公開。製品分析結果は、対象物質の範囲や分析方法、下限値を開示する。異なるロットの製品分析や追加分析を実施した場合には、新たな情報を追加し、製品の消費期限が来た場合には削除すると規定。認証マークは設けない。
【解説】
<認証は団体利益ではなく、アスリートのためのもの>
同ガイドラインは、GMPについて、厳格な要件が要求されるcGMPレベルを原則と位置づけた。それに合致している「NSF-GMP」と「JIA-GMP」は、従来からJADA認証プログラムの要件となってきた。このため、“アスリートのリスク軽減”を目的とする同ガイドラインで、引き続き対象となるのは自然な流れ。一部の企業を除き、スポーツニュートリションを販売する代表的な大手では、NSF-GMPやJIA-GMPに対応している。アスリートを守るためには、cGMPと同等レベルの管理が必須となる。
ところが、同ガイドラインでは、厳しい要件が求められるcGMPと比べ、「そのレベルにない」(コンサルティング企業)と指摘される「JHNFA-GMP」や「JHIFS-GMP」も推挙した。そうした矛盾に、業界関係者は混乱するのではないだろうか。
cGMPは800ページを超えるガイドラインの順守が要求される。さらに、米国食品医薬品局(FDA)による査察をはじめ、各種の厳格な対応も要求される。一方、我が国のGMPガイドラインはわずか13ページにすぎず、そのハードルの違いは歴然としている。ある業界関係者は、「実際の問題として、日本のGMP認証を取得した工場が、cGMP認証も取得しようとする場合、かなり苦労しているのが現状」と説明する。
生産施設審査の適用基準を「cGMPに相当」と定めた以上は、アスリートが負うドーピングリスクを軽減させるために、新たに加わった2つのGMPについても、cGMPと同一基準を明確に義務づけるといった措置が求められそうだ。「cGMPとよく似たことを行っている」、「実質的にほとんど同じ」というような漠然とした説明では説得力がないだろう。
サプリメントのアンチ・ドーピング認証は、アスリートのためのもの。同ガイドラインはあくまで「サプリメント認証の枠組みに関する有識者会議」が策定したものだが、各団体の利益を優先させてはならないことは指摘するまでもない。
(了)