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第3回契約書面電子化検討会(中)
禁止行為の是非をめぐり議論が伯仲

 会合の後半は、「事業者の禁止行為」、「第三者の関与のあり方」の2テーマについて議論が進められた。事業者の禁止行為」については、訪問販売協会が提出した意見に対して正木委員が出した否定的なコメントについて、消費者団体サイドから複数の反対意見が出た。

電子交付の場合にプレゼントを付ける行為

 まず、「電子交付の場合にプレゼントを付けるなど、電子交付を選択した方が有利であると思わせるような取引条件を設け、電磁的方法を承諾するよう促す行為を禁止してはどうか」とする訪販協の意見。
 正木委員は、訪販協がややこしいことに巻き込まれるのを嫌い、禁止してくれという気持ちは分かると一定の理解を示しながらも、消費者に寄り添っていない行為と指摘した。その理由として、今や公共機関や政府さえも請求書に対する電子ポイント、マイナポイントなどを提供している時代。特典を付けてくれという消費者が出て来た時には、消費者に寄り添わなければいけないとし、「特典を付けるのを禁止というのは、これはちょっとできないんじゃないか」と述べた。

事業者が消費者にデジタル機器の操作方法を教える行為

 次に「事業者が消費者の代わりにデジタル機器を操作したり、操作方法を教えるなどの行為を禁止してはどうか」という訪販協の意見について、正木委員はあくまで丁寧に教えることが必要と強調した。教えずに、「あえて困惑するような画面を作って、これは教えられない。だからあなたが自分で判断してと言って振り込むことにもなりかねない」とし、あくまで教えるという立場を取ることを勧めている。

 以下、同見解をめぐる各委員のコメントを紹介する。

 河村委員「消費者からの自発的な真意の意思表明であるということを歪めないために、何かプレゼントをつけますよとか、こういうことがありますよというのは禁止すべき。その点について、経団連の委員の方が、電気料金やガス料金やいろいろなスマホの料金など、クレジットカードとかもそうだが、毎月の使用料とかが電子化することで手数料が安くなったりということがあるではないかと言ったが、安くなっているというのは、契約における書面のことではなく、消費者が契約した後の毎月の何かのお知らせについての紙なのか、郵送なのか、電子なのかの話だから、特商法の中における、消費者保護機能のある書面についての交付とは同列にはできない。
 事業者が消費者の代わりにデジタル機器を操作したり、教える行為が禁止行為というのも、消費者団体の中でもそれは先ほどの面も今回のこの教えることも、当然に禁止行為だというふうに考えている。これはどちらも禁止すべきで、こちらも経団連の委員の方から教えちゃいけないなんてサービスが悪いじゃないかというご意見があったが、これはもう当然にその適合性があるかどうかってことが大変問題になっているわけで、適合性がある消費者に電子交付を受ける適合性があるということを判断するためには、自身が使えるということでなければいけない。事業者が、手取り足取り教えるとか、優しく教えてあげるというようなことがあってはならないと思う。そうしなければ使えないのであれば、書面にすべき」

 池本委員「書面の電子化の承諾というのは、適合性のあるものが各シーンに基づいて自発的主体的に希望した場合に限って認めていくと、本来、契約内容とクーリングオフを直後に告知する、その方法を電子化していくわけだから、そういった条件のある人が具体的に希望した場合に限る。そのことからすると、操作方法を教えるというのは適合性のない人にも、その方が何か、説明だけ聞いてそれもいいかなというふうになった人へ操作方法を教えればよいというふうになっては困る」

 増田委員「ポイントを付けるとか、割引するなどによって誘導されることによってトラブルに繋がる。陥らなくてはわからないような人というのは、リテラシーがまだまだということで適合性がないふうに当然に判断できる。その辺のところについては検証していただきたい」

 小田井委員「私どもは事業者団体だが、同時に訪問販売ホットラインという相談機関を持ってる。訪問販売にかかわる消費者トラブルが減少することが業界の発展に繋がるというふうに考えている。プレゼントをつけることで電子交付の方がいいと、その動機付けになったといっても、それがここで言われている真意に基づく承諾ではないというふうに当たるのかどうかというと、それは必ずしもそうではないのではないかというふうには思うが、ここではデジタルが苦手な消費者の方、例えば電子交付された書面を自分1人ではどうやって見るのかわからないというような人に対してこっちの方がお得ですよと、条件で電子交付を選択するというようなことは防いだ方がいいと考える。
 また、承諾を取得する方法について電磁的方法で行う方がいいのかなと考えている。ヒアリングのときに申し上げたが、消費者自身、デジタル機器を操作してもらって、そういった操作ができない方の場合には承諾をすることができないという、そういうシステムであれば書面電子化が原因のトラブルは防げると考えている。より確実に担保するために事業者が消費者の代わりにデジタル機器を操作してあげたりとか、操作方法を教えてあげるというようなこともしてはならないと、そういうルールにしてはどうかなというふうに考えている」

各委員の反論に対する正木委員の釈明

 正木委員「プレゼントのお話もどうですか、携帯会社の紙だろうが、紙を電子にするものだろうが公共料金の問題はマイナポイントだろうが、結局、事業者の方は(電子化によって便利になり)メリットがあるじゃないかという消費者の心理にどう応えて寄り添っていくかという問題で、それは考えなくていいのですかというのが私の問題提起。おっしゃるように禁止するとこの部分でトラブルは起きないわけ。消費者が何で事業者はこんな楽になってるのに、(こちらにメリットを)寄越さないのだと言っても、いや禁止されてるので消費者庁に行ってくださいという話になるだけなので、トラブルは起きないかもしれないが、本当にそれが消費者に寄り添っているのだろうかという疑問を持つ。
 消費者の代わりにデジタル機器を操作したりというのが、目の前にいるおじいちゃんおばあちゃんのタブレットだか携帯電話を取り上げて、無理やり契約しちゃうとか、これは恐喝とかの別の法律でも十分罰せられる話だと思うのだが、操作方法を教えるというのは全然レベルが違う。このボタンを押す前に、これはこういう意味だよねと確認したいということなので、それを禁止してしまうというのは適合性の原則とか何とか言う前の問題として難しい。紙の契約書にハンコ押していいかどうかの時でも、これこういう意味だよねと、ここにハンコ押したらこういうことだよねと聞くのも駄目なのかっということにもなりかねない話。いろいろな誤解があって、現場は大変だというのは増田さんのおっしゃるところもそうでしょう。訪問販売協会さん、主婦連合会さんもきっと苦労しておられると思うが、本当にそれで消費者のためになるだろうか。寄り添って対応しなきゃいけないのではないかいうのが私の考え」

(つづく)

【田代 宏】

関連記事:第3回契約書面電子化検討会(前)

     第3回契約書面電子化検討会(後)

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