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細胞培養食品(仮名)に個別審査を 消費者4団体が審議会で要望、GMP導入も議論

 消費者庁はきのう28日、「令和8年度第2回食品衛生基準審議会新開発食品調査部会」をオンライン形式で開催した。「細胞培養食品(仮称)」に関するヒアリングが実施された。同会議には参考人3人とヒアリング団体から4人が出席し、これまでの議論に関して消費者団体等から意見を聴取した。

 ヒアリングでは、主婦連合会(若月壽子監事)、(一社)Food Communication Compass(森田満樹代表)、日本生活協同組合連合会(早川敏幸品質保証本部 安全政策推進室 室長)、(一社)全国消費者団体連絡会(郷野智砂子氏)が順番に登壇した。各団体に共通する意見として、細胞培養食品の安全性確認における規制のフレームワークについて、国による個別審査型(類型1)が適切との見解を示した。

 主婦連合会は、戦後の混乱期に「台所の声を政治に」と立ち上がった1948年の設立以来、景品表示法などの制定に寄与し、消費者の権利確立を柱に活動を展開してきた歴史を紹介。過去にはゲノム編集技術応用食品に対し、安全性審査の義務付けや情報伝達体制の導入を求める意見書を提出した経緯を説明した。
 細胞培養食品については、食経験のない未知の食品に対する不安感を吐露した。生きた動物から細胞を採取し、成長因子や培養液を用いて増殖する過程において、不純物や変異細胞の混入、長期摂取時の影響などに懸念を示した。企業側は環境負荷の低減や動物愛護などのメリットを掲げるものの、現状の高コスト構造が解決し通常の畜産と同等の価格になるのかと疑問を呈した。その上で、食品としての安全性を第一に確保し、課題を明確化すべきと訴えた。さらに、国が厳しく監視する体制とトレーサビリティの確立、事業者に任せない分かりやすい表示制度の必要性を強く主張した。

 (一社)Food Communication Compassは、科学的根拠に基づく食情報の発信を図る立場から意見を述べた。細胞培養食品にはタンパク質不足の解決といった期待がある反面、これまでにない技術や実験室で作られることへの不安も根強いと分析した。
 同団体は、過去の遺伝子組換え食品の導入時を振り返り、安全性の評価や表示制度が開始される前に市場流通が始まり、消費者の不信感を招いた「ボタンの掛け違い」を教訓にすべきと指摘。シンガポールやEU等の諸外国が新規食品を「Novel Food(食経験のない新規食品)」として扱っている点に触れ、日本においても独自の新規食品の安全性評価の仕組みの導入を提案した。また、届出制度では参入障壁が下がり、衛生管理が不十分な事業者を排除できない恐れがあるとし、消費者保護の観点から行政機関による製品ごとの確認・審査型が最も信頼性が高いと結論付けた。

 日本生活協同組合連合会は、これまでの同部会における懸念点やハザードの網羅的な整理を評価した。その上で、規制のあり方として審査型(類型1)を支持する3つの理由を提示した。
 第1の「消費者受容」に関して、ゲノム編集食品の任意の情報提供が組合員に受け入れられなかった経験を挙げ、国の審査や表示義務が製品普及に寄与すると論じた。第2に「科学的な妥当性」の面から、自然界で起こる変化とするゲノム編集とは異なり、最終製品が既存の食品と同等となると現時点では断言できないと指摘した。第3の「国際整合性」については、諸外国でも実質的に行政の関与を経て流通が認められる現状を説明した。
 また名称に関して、「細胞性食品」と「細胞培養食品」のいずれにも一長一短があるとしつつ、消費者が正しく理解するための補足説明が不可欠だと見解を述べた。

 (一社)全国消費者団体連絡会は、4つの観点から要望を提示した。まず、未知の技術による食品ゆえに、科学的に問題がないと言われても消費者は簡単に納得できないとし、初期段階では国や専門機関が個別に確認する審査型にするべきと求めた。また、アニマルウェルフェアにおける優位性や従来の畜産への影響の有無など、開発の目的や消費者メリットを明確に伝えるよう要求した。
 さらに、知らずに食べる事態を防ぐための表示ルールの整備や、外食産業などで利用された場合でも消費者が自ら選択できる環境の確立を促した。そして、「細胞培養肉」等の呼び方に怖いイメージを持つ消費者の声を取り上げ、適切な用語の検討と透明性の高いリスクコミュニケーションの継続を求めた。

細胞の由来や行政の課題で意見交換

 ヒアリング後の意見交換では、各委員からさまざまな評価や質問が寄せられた。北嶋聡委員(国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター、安全性予測評価部シニアフェロー)が、事業者らが想定する細胞の種類や部位について質問したところ、消費者団体からは「どの器官から採取するかまではイメージがない」「内臓系や甲状腺等の臓器が混ざることへの不安がある」といった率直な意見が出た。全国消費者団体連絡会は、受精卵を培養するといった倫理的側面への懸念も口にした。これに対し北嶋委員は、米国での甲状腺混入による健康被害の実例などを挙げ、あらゆる可能性を想定した専門的なリスク評価の重要性を語った。

 一方で、穐山浩参考人(星薬科大学薬学部教授)は、消費者団体が求める国の安全性審査の義務付けについて、行政の枠組み変更や専門家の人材リソース不足といった課題を指摘し、持続可能な体制構築の難しさに言及した。松尾真紀子委員(東京大学大学院公共政策学連携研究部特任准教授)からは、消費者庁の役割を踏まえ、表示と安全性のガイドラインで使用する用語を政府全体で統一すべきとの意見が上がった。

ガイドライン案には食品GMP導入の要望

 後半では、事務局より細胞培養食品の安全性確認上のポイントを整理したガイドライン案が示された。本案は、過去の部会で整理した31項目の懸念点・ハザードを基に、各工程の確認事項を具体化したもの。第3章から第5章にわたり、出発材料となる細胞の特性、製造工程におけるコンタミネーション管理、製品に関する総合考察等が記載された。

 この案に対し、品質保証をより確実なものにするための改善要求が相次いだ。穐山参考人は、過去の食品事故の多くが品質管理の脆弱性に起因するとし、紅麹事件の教訓からHACCPの限界を指摘した。その上で、製造管理と品質管理を明確に分けたGMPレベルの体制構築と、製品標準書での残留規格値の設定を求めた。五十君靜信参考人(東京農業大学食品安全研究センター長/総合研究所教授)も同調し、医薬品と区別するために「食品GMP」という言葉を使用すべきと提案した。また、細胞調達時に遺伝子操作がないかの明記や、最終製品を「収穫物」と定義して評価範囲を明確化することも要求した。

 さらに、石見佳子委員(東京農業大学総合研究所参与・客員教授)からはウシ胎児血清(FBS)不使用の明言や、栄養成分の評価において「極端な」不均衡という表現を改め、国際基準に準じて「栄養学上の不利益が生じないこと」と記載すべきとの指摘があった。瀧本秀美委員(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所理事)は、事業者が過不足なく対応できるチェックリストの作成を要望し、事務局もこれに応じる姿勢を見せた。松嵜くみ子委員(跡見学園女子大学心理学部兼任講師(教授))からは、想定外の事態が起きた際の対応方針も盛り込むべきとの声が上がった。

 事務局は本日の議論を踏まえ、引き続きガイドラインの整理や規制のフレームワークに関する検討を進めるとしている。

【藤田 勇一】

関連資料:令和8年度第2回食品衛生基準審議会新開発食品調査部会(2026年5月28日)(消費者庁ホームページへ)

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