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消費者契約法改正へ議論継続 積み残し論点を整理、中間取りまとめへ

 消費者庁は13日、第7回「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」を開催し、第4回から第6回までの積み残し論点について約3時間にわたり議論した。
 事業者による消費者の多様な脆弱性への配慮を促進する仕組みや官民協議会の位置付け、契約解除権、「解約料」の説明制度、継続的契約における契約変更時の規律など幅広い論点について意見を交わした。山本隆司座長は、中間取りまとめの作成に着手するよう事務局へ正式に要請した。

配慮規定と官民協議会の在り方議論

 冒頭では、第4回検討会で議論された「事業者等による消費者の多様な脆弱性への配慮を促進する仕組み」の積み残し論点を取り上げた。同議論では、配慮規定そのものの方向性に大きな異論はなく、事業者だけでなく取引に関与する関係主体も含め、消費者の多様な脆弱性への配慮を促進する方向性自体に異論はなく、おおむね賛同する意見が多かった。

 もっとも、具体的な制度設計を巡っては課題も指摘された。特に議論となったのは、契約当事者以外の第三者の利益をどこまで考慮すべきかという点。配偶者や扶養親族など家族への影響まで配慮義務の対象とする場合、事業者の予見可能性が損なわれ、新たな調査義務や情報収集義務につながりかねないとの意見があった。
 また、事業者がリスク回避のために必要以上に確認事項を増やせば、かえって取引の円滑さが損なわれる可能性もあるとの指摘があった。

 これに対し、取引当事者だけではなく、デジタルプラットフォーム事業者など取引基盤を提供する主体についても一定の役割を担うべきとの意見が出たほか、高齢者取引では社会福祉士やケアマネジャー、医療職など専門職の知見を制度に反映させる必要性も提起された。官民が連携して健全な市場を形成するためには、多様な主体が参画する枠組みが必要との考えにおいて一致した。

 官民協議会をどのように制度化するかも大きな論点となった。
 複数の委員からは、官民協議会を消費者契約法に位置付けるとともに、内閣総理大臣が策定する指針との関係を明確にする必要との声が上がった。指針を遵守することが消費者契約法上の規律を遵守したことの評価につながる制度設計を求めるとの考え方だ。
 さらに、官民協議会は全体会と業種別部会による多層構造とし、地域レベル、業界レベル、国レベルでそれぞれ機能する仕組みが望ましいとの提案もあった。実効性を確保するには、消費者庁の人員や予算の充実も必要との指摘が相次いだ。

 これに対し、官民協議会はソフトローとして位置付けられる以上、それを支えるハードローが不可欠との意見も出た。悪質事業者への法的規律が存在して初めて、優良事業者が参加する協議会が機能するとの考え方に基づいている。また、すでに運用されている取引デジタルプラットフォーム消費者保護法上の協議会との役割分担を明確にすべきとの指摘もあった。

 山本座長は議論を受け、配慮規定については特段の異論はなく、包括的な規範を具体化する指針を策定する方向についてもおおむね理解が得られたとの認識を示した。その上で、官民協議会は悪質事業者を市場から退出させるとともに、健全な事業者、消費者、有識者が知恵を出し合いながら市場を形成する場であると説明。
 「立派な制度を作っても機能しなければ意味がない。消費者庁が主導し、できるところから着実に実績を積み重ねることが重要」と述べた。

解除権制度の要件巡り意見交わす

 第5回検討会から継続審議となっていた「多様な脆弱性による影響を踏まえた契約の拘束力から消費者を解放する仕組み」についても議論が行われた。
 焦点となったのは、どのような場合に消費者へ契約解除権を認めるかという要件である。事務局はこれまで、「消費者が適切な判断をすることが困難な状態にあること」、「深刻な結果となる内容の契約であること」、「第三者への連絡を通じて事業者の予見可能性を確保すること」の3要件を提示してきたが、今回は特に第三者への連絡要件の実効性について意見交換した。

 委員からは、第三者への連絡を解除権の要件とすることには限界があるとの指摘が相次いだ。これに代わる考え方として、消費者が判断困難な状態にあり、契約内容が著しく不当であることに加え、事業者が契約内容の客観的な不当性を認識し得たことを要件とする考え方が浮上した。消費者の脆弱性そのものを事業者が認識していたかではなく、契約内容の客観的側面を認識できたかを問うことで、事業者の予見可能性を確保しながら解除権を認めるという考え方だ。

 また、事業者の主観的要件を導入すれば、リスクを避けるために事業者が契約そのものを回避する行動につながる可能性があると懸念する委員もいた。制度の目的は消費者を市場から排除することではなく、必要な商品やサービスを適切な配慮の下で提供しながら、不当な契約だけを是正することにあるとの考えに基づいている。
 議論では、解除権制度は悪質事業者への制裁ではなく、多様な脆弱性によって不当な契約を締結した消費者を契約の拘束から解放する制度として位置付けるべきとの考え方を共有した。

「解約料」説明制度拡充を提案

 「解約料」の実態を踏まえた制度については、第5回検討会で提示されたA案、B案を踏まえた補足説明が事務局から行われた。A案は事業者側に立証責任を課す仕組み、B案は原状回復賠償に相当する部分などについて消費者側が立証責任を負う仕組み。
 つまり、A案は事業者が「この解約料は妥当です」と説明する方向へ立証責任を移す案で、B案は、立証責任を全面的に移すのではなく、解約料の中身によって消費者と事業者で分担する案となる。いずれについても制度が複雑になることや、「平均的な損害」の概念を明確化しにくいことなどの課題が指摘されてきた。

 事務局は、両案を組み合わせても課題はなお残るとした上で、これまでの議論を生かし、「解約料」条項に関する説明制度を拡充する方向性を提案した。
 具体的には、消費者契約法第3条の努力義務を拡充し、解約料の内容や算定根拠について事業者がより丁寧に説明することを促す考え方だ。併せて、消費者契約法第9条第2項など既存の説明制度との連携も視野に検討を進めることとした。

 委員からは、説明義務を強化するのであれば、どのような算定根拠が許容されるのかについても官民協議会やソフトローを活用しながら具体化すべきとの意見が出された。

 また、山下純司座長代理は、A案とB案を組み合わせた独自案を提示した。平均的損害額を超えない範囲を推定する考え方を基本としつつ、契約解除後に目的物が返還される場合や役務提供開始後に解除された場合など、契約類型ごとに有効と推定される範囲を条文上例示する案である。さらに、複数の解約料を設定している契約については、一定条件の下で事業者の立証負担を軽減する仕組みも提案された。

契約変更時の通知規律を検討

 第6回検討会から継続して議論された継続的契約については、契約変更時の規律が論点となった。事務局は、契約変更に関する補足資料を示し、規律の対象となる契約類型や、民法の定型約款変更規定との関係について説明した。

 委員からは、重要事項を変更する場合には、現在のような単なる周知だけではなく、消費者へ個別通知を求める規律を設けることを検討すべきとの意見が出た。個別通知により、消費者が契約内容の変更や合理性について判断する機会を確保できるとの考え方だ。

 また、事務局が示した通知事項のうち、「変更前に解約できる期間、条件、方法」については、そもそも解約権が存在しない場合の位置付けが分かりにくいとの指摘もあった。これに対し事務局は、解約権がある場合にはその内容を通知し、解約権がない場合でも契約更新の判断材料となる情報提供を想定していると説明したものの、通知内容の在り方についてはさらに検討を深める必要があるとの必要性を確認した。

 山本座長は会議の最後に、今回取り上げた積み残し論点については一定の方向性が見えてきたものの、なお制度設計を詰める必要がある事項が少なくないと総括した。その上で、これまでの検討会での議論を踏まえ、中間取りまとめの作成に入るよう事務局に正式に依頼した。
 事務局はこれまで出ていなかった追加意見がある場合には事務局宛てに寄せるよう委員に呼び掛けるとともに、中間取りまとめに向けた対応をできるだけ早く進めるとした。 

 今回の検討会では、消費者の多様な脆弱性への配慮を促進する枠組みから、契約解除権、「解約料」の説明制度、継続的契約における情報提供まで幅広い論点が議論された。共通していたのは、ハードローによる法的規律と、指針や官民協議会などのソフトローを組み合わせながら、消費者保護と事業者の予見可能性を両立させる制度を模索する姿勢である。今後は、今回示された方向性を踏まえ、個別制度をどこまで具体化できるかが焦点となりそうだ。

【田代 宏】

配布資料はこちら(消費者庁HPより)

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