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科学的レベルが低い論文
学会・研究会は厳しく批判されるべき

 ㈱ウェルネスニュースグループ(東京都港区)では、機能性表示食品制度が施行されて7年目の昨年、「機能性表示食品ここが変わった」というテーマで、機能性表示食品制度をめぐる事業者・行政・消費者などへの要望、制度に対する評価などについて、6人の識者に意見を聞いた。(編集部)

(公財)食の安全・安心財団理事長 東京大学名誉教授 唐木 英明 氏

食品の機能性評価モデル事業スタート
 機能性表示食品の誕生から早くも7年。制度の準備段階から関与してきた立場から、その変遷を振り返る。

 2010年の消費者庁「『健康食品の表示に関する検討会』論点整理」を受けて、2011年に消費者庁が日本健康・栄養食品協会に委託した「食品の機能性評価モデル事業」が始まった。「評価パネル会議」座長として日本学術会議会長金澤一郎氏が就任し、同副会長であった筆者も参加した。その目的は、機能性食品の安全性と機能性の評価手順を検証することで、市場規模が大きく、ある程度の科学論文が存在するn-3系脂肪酸、ルテイン、ヒアルロン酸などの11成分について評価を試行した。評価資料はメタアナリシスあるいはシステマティックレビューとし、これらがない場合にはRCTを用いた。また、有害事象については評価対象論文から情報収集を行った。

 評価は科学的根拠の量と質とした。会議では効果の大小(エフェクトサイズ)も検討すべきという意見が強かったが、判断できる試験結果がなく、今後の課題とした。安全性は基本的に食経験に基づく判断であり、過剰摂取や相互作用に関する情報が必ずしも十分ではないことが指摘された。その後、日本健康・栄養食品協会は独自に機能性評価事業を立ち上げ、企業の依頼を受けて製品の評価を行い、筆者はこれにも参加した。

消費者庁が検討会設置
 2012年に消費者委員会は「『健康食品の表示の在り方』に関する考え方」を公表し、食品に機能性表示を認めることを政府に建議した。また農水省は「機能性を持つ農林水産物・食品開発プロジェクト」を開始した。2013年には規制改革会議が「一般健康食品の機能性表示を可能とする仕組みの整備」について答申し、安倍総理が「健康食品の機能性表示の解禁」を宣言し、消費者庁は「食品の新たな機能性表示に関する検討会」を設置した。また国会議員を中心に「健康食品の機能性表示研究会」が発足し、その討議内容も踏まえて2014年に検討会報告書が公表され、2015年に機能性表示食品制度が発足した。

 この制度は、企業が科学的根拠を取り揃えて消費者庁に届け出ることで機能性表示が可能になるのだが、届出開始を前にして消費者庁は詳細なガイドラインを作成した。そのなかで多くの企業から異論が出たのが、健康食品は健康な成人が利用するという前提に基づき、臨床試験の被験者を健康な成人としたことだった。
18歳以上の被験者を使った研究が多いことから、2016年度の規制改革会議において18、19歳の被験者を認めるよう要望が出され、2017年のガイドライン改正時に条件付きでこれを認めた。ガイドラインは2021年までに6回の改正が行われている。

機能性表示食品の継続的評価へ
 2015年に最初の届出が行われた時点で、いくつかの消費者団体が届出資料を点検し、機能や安全性の科学的根拠が不足しているとして厳しく批判した。安全性については食経験を根拠とするものが多く、健康食品として比較的短期間販売されたことを食経験とするなどの正当性が問われた。
機能についてはモデル事業でも問題になった効果の大小の判断が問題視された。批判を受けた企業の中には消費者団体を提訴するものも現れ、その影響もあったのか、消費者団体による届出の評価は一過性に終わった。

 しかし、機能性表示食品制度が健全に発展して消費者の信頼を得るためには、継続的な評価により届出の科学的レベルの向上を図ることが必須である。この作業に乗り出したのが、制度誕生時の消費者庁長官、阿南久氏が主催する「消費者市民社会を作る会」(ASCON)である。ASCONは評価のための科学者委員会を設置し、私も顧問として参加した。モデル事業での経験を生かして、評価は届出論文の科学的レベルを判断した。

 その後、本来あるべき姿として届出企業の自己点検・自己評価に移行し、委員会は自己評価を検証する方向に移行しつつあるが、点検・評価・改善というPDCAサイクルを回すことが企業の信頼性を高め、消費者の評価を高めるのであり、企業の努力が求められる。

 最後に、届出資料として使用するために科学的レベルが低い論文を出版する学会・研究会は厳しく批判されなくてはならない。

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