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消費者庁・蟹江室長に聞く~届出事前確認と今後の展望~ 【機能性表示食品特集】「秘密保持義務など要件へ」

 機能性表示食品の届出をめぐり事業者は新たな選択を迫られることになる。近く、消費者庁での届出確認期間を最終的に「ゼロ日」とすることを念頭に置いた、民間団体での届出事前確認の仕組みが構築されるためだ。ルールメイキングを担当する消費者庁食品表示企画保健表示室長の蟹江誠氏(=写真)に今後の展望を聞いた。会員向け月刊誌『Wellness Monthly Report』第49号(2022年7月号)に掲載したインタビュー記事の全文を公開する。

<制度の信頼性高める努力 消費者理解も深めたい>

──制度創設から8年目を迎えました。保健表示室長に着任してまだ間もないですが、これまでの制度運用に対する評価を聞かせて下さい。

蟹江 年々、届出公表件数が着実に増加している状況で、2022年度には約5,000件を超えました。食品の種類としては生鮮食品を含めて日常摂取する食品形態と同様のものから、錠剤やカプセルといった形状のものまでさまざまなものがあります。健康の維持・増進に資する「特定の保健の目的が期待できる旨の表示」、いわゆる機能性の表示の内容についても、血圧やコレステロールの低減、おなかの調子を整える、免疫機能の維持など多岐にわたります。機能性表示食品制度は、事業者の責任において機能性の表示を行うもので、消費者の選択の幅を広げるとともに、各地域の経済活性化にも大きな役割を果たしていると考えています。

──制度創設以来、制度の運用改善を繰り返してきました。

蟹江 これまで、消費者団体や事業者団体などの関係者からの意見を踏まえ、累次にわたり、機能性の表示ができる対象成分の明確化や製品に関する情報公開の充実などの、機能性表示食品制度の運用改善を行ってきました。また、本制度に対する消費者の信頼性の向上を図るため、事後チェックとして、機能性の科学的根拠や品質管理に関する検証事業などを実施するとともに、20年3月には「機能性表示食品の事後チェック指針」を策定し、事業者の自主点検などの取組を促しています。

 消費者庁としては、本制度がますます信頼性の高い制度となるよう、届出資料の円滑な確認や事後チェック体制の充実などを通じて、適切な制度運用に努めていきたいと考えています。また、今後とも、消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資する表示となるよう、機能性表示食品に対する消費者の理解を深め、適切な利用を促進するための普及啓発を引き続き進めます。

<スケジュールに変更ない 運用開始、本年度中に>

──インタビューの本題に入ります。近く制度化されることになる民間団体等での届出事前確認についてです。それを行う必要がある理由を改めて聞かせてください。

蟹江 先ほども申し上げたとおり、機能性表示食品の届出件数は年々増加していて、今年5月末時点における届出公表件数は約5,000件に上ります。このうち21年度の届出公表件数は約1,500件となり、過去最多でした。

 また、新規届出の増加に伴い、変更の届出も増加していて、これまでの消費者庁の体制では、機能性表示食品の届出の確認期間が長期化するおそれが想定される。こうした状況を踏まえ、届出確認業務の合理化・効率化を図るため、関係団体による届出事前確認の仕組みの構築を検討することにした、ということです。

──運用開始は本年度中とのこと。予定通りに進みそうでしょうか。

蟹江 現在、連絡協議会において関係団体との意見交換を行っていて、当初の予定どおり検討を進めているところです。今年夏頃に、事前確認の実施に当たって必要となる体制に関する要綱や実務的な手順書などの案をとりまとめ、一定の試行期間を経て、本年度中を目途に仕組みの運用開始を目指しているところで、スケジュールに変更はありません。仕組みの概要などについては、その内容を明らかにできるようになった段階で、順次お知らせします。

──事前確認を担う団体として、現在までに、日本健康・栄養食品協会と日本抗加齢協会の2団体が名乗り上げています。今後、他にも名乗り上げる団体が出てくるのでしょうか。見通しを聞かせてください。

蟹江 届出事前確認の仕組みについては、公表実績のある機能性表示食品の範囲を対象として、「公平性・公正性」、「信頼性・専門性」、「継続性」、「制度発展への寄与」が担保される仕組みとすることが必要と考えています。

 例えば、「公平性・公正性」については、特定の事業者に偏らない役員構成、届出確認者などの利益相反の排除、「信頼性・専門性」については、専門知識を有する者による一定の手順に従った届出確認、秘密保持義務、「継続性」については、団体の経理的基礎など、突然の休廃止が生じないようにすること、「制度発展への寄与」については、科学的知見の質を評価・相談できる組織が置かれていること──などが考えられます。

 そのため、連絡協議会で関係団体との意見交換を行いつつ、仕組みの具体化を行っているところです。それらの仕組みに則り、適切に実施できる能力などを有していれば、事前確認を実施する団体に当該するものと考えています。

──事前確認の仕組みが始まった後も、消費者庁に直接届け出る道が残されます。すると、現行の「50日ルール」はどう扱われるのでしょうか。もし、そのルールが残されるのだとすれば、仕組みの利活用が広がらない可能性も考えられます。

蟹江 届出事前確認の仕組みについては、公表実績のある機能性表示食品のみを対象範囲としていて、その他の機能性表示食品の届出に関して現時点では、50日の目標期間は変更しないことを考えています。民間団体などでの届出事前確認の仕組みが機能しなければ、消費者庁における確認期間は長期化する恐れがあります。引き続き、関係団体などとの意見交換を行いながら、届出確認業務の合理化・効率化を図るための検討を進めます。

──事前確認の対象となる「届出実績のある機能性表示食品」とは、例えば、届出が公表された機能性表示食品と同一性を失わない程度の変更が行われた食品の届出(再届出)であっても、届出表示などが一部異なる場合もあり、どこからどこまでを「届出実績がある」とするのか難しい判断が求められそうです。

蟹江 その点についても、関係団体などとの意見交換を行っています。試行しながら道筋を付けていくような流れも考えられます。

──事業者はコストを気にしていると思います。高額すぎれば仕組みの利活用が広がらないでしょうし、逆に、低額すぎれば事前確認を担う団体の運営がままなりません。届出1件あたりの適正な事前確認料金について考えを聞かせてください。

蟹江 事前確認の体制整備がなされている団体が独自に、合理的な確認料を定めるものと考えられます。料金について、基本的に当庁は関与しません。

<データベースの更改を予定 消費者への情報提供を充実>

──機機能性表示食品制度は「未完の制度」とも言われています。完成に向け、解消すべき課題はまだあるとお考えでしょうか。その解消に向けてどのように取り組むのか。考えを聞かせてください。

蟹江 機能性表示食品は、科学的根拠に基づく機能性が、事業者の責任において表示されるもので、消費者に誤認されることなく商品を選択できるよう、適正な表示を担保することが重要です。

 機能性の科学的根拠に関しては、システマティックレビューの報告の質を向上させることを目的とした国際指針である「PRISMA声明」が20年に改訂されました。これまで、消費者庁で定めている届出ガイドラインにおいては、研究レビューの記載についてPRISMA声明チェックリスト2009年版に準拠するよう求めていましたが、今後、PRISMA声明2020年版に準拠するよう本届出ガイドラインを改訂することが必要だと考えています。届出者においては、届出内容の見直しや科学的根拠の確認などの自主点検に取り組み、届出者自らが倫理観を持って本制度の信頼の確保のために努めていただきたいと考えています。

 また、現行の機能性表示食品に関わる機能性表示食品制度届出データベースおよび公開データベースについて、25年4月に次期システムへの更改を予定しています。更改に当たり、各データベースのユーザーから意見を伺い、機能性表示食品の届出手続の効率化、消費者などへの情報提供のあり方などの観点から、必要に応じてこれらデータベースの機能の見直しを検討しています。

 システムの更改を通じて、消費者のヘルスリテラシー向上にも寄与できればと考えています。消費者が正しい情報を得て商品を選択するという観点から、消費者の機能性表示食品に対する理解促進を図るための普及啓発について、引き続きしっかりと取り組んでいくつもりです。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川 太郎】

蟹江誠氏プロフィール:1991年厚生省(現厚生労働省)入省。2016年4月よりHACCP企画推進室長、19年4月より輸入食品安全対策室長、22年4月より消費者庁へ出向にて現職。

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