消費者庁、第5回霊感商法検討会開催 紀藤委員「PIO-NETの保存期間10年が救済のネックに」
消費者庁は28日、第5回「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」(霊感商法等検討会)を開催した。議題は「消費者教育に関する取組」と「消費生活相談に関する対応」。
まず、消費者庁と国民生活センタ(国セン)ーが現在の取り組みと今後の対応について説明。続いて、紀藤正樹委員が松本サリン事件被害者弁護団としての活動を通じて学んだ課題。芳野直子委員が、1999年に日本弁護士連合会が提出した意見書「反社会的な宗教活動にかかわる消費者被害等の救済の指針」の内容について説明した後、質疑に移った。この時、紀藤委員は松本サリン事件の経験から、利害当事者が解散命令を行うことの難しさを改めて説明した。
菅野志桜里委員は消費者庁に対して、一般論と断った上で「ある宗教法人に対して解散命令請求をする場合、文部科学省以外で、所轄庁として(消費者庁が)質問権を行使したり、それに基づいて解散命令請求をかけるということが可能と考えられるのか」、「霊感商法というものを宗教だからといってタブー視せず、こういう社会的現象を高校生を含めて、消費者教育の中できちんと伝え、被害をどう避けるか、どこが救済できるのか、どこに相談できるのかということを教えているか」、「マインドコントロールを解くためのカウンセリングなどについて、(消費者教育の実践の中で庁の報告にあったように)リストの充実だけではなく、どのようにバックアップするかについて(具体的なかたちで)消費者庁はどう考えているのか。教えられていないとすれば法的・実務的に何がハードルとなっているのか」の3点について質問した。
消費者庁は、法人規制については、文部科学省以外においては、宗教法人法に基づき都道府県が権限を持つ、また、消費者教育などについては今後、教材の改定も含めて検討中とした。
紀藤委員は、主に国民生活センターのPIO-NET(パイオネット)に関する質問を行った。パイオネットにおける消費者相談の保存期間が10年と限られていることが被害救済の障害の1つになっているとし、「特定の団体に関する相談が継続的に行われた場合、保存期間を延ばすことができるのかどうか」、できるとすれば「その根拠は何か」、「パイオネットの情報が文化庁宗務課と共有されているのかどうか」、「パイオネットは実名主義になっているのかどうか」について質問した。
同氏は、オウム真理教や旧統一教会など特定の団体による消費者被害が起きた場合、団体などの実名が登録されていなければ、教育自体があいまいな形になるのではないかと指摘。さらに「相談と教育の関係が連携しているのか」について質問し、カルト団体などの被害は特異的だとし、幅広い専門家の養成が必要だと訴えた。紀藤委員によれば、宗務課が相談窓口を有していない中、相談窓口を持っている消費者庁との連携はどうなっているのか、また、パイオネットとの情報共有がどうなのか、過去の経緯も含めて説明を求めた。質問に対して、迂遠な説明しか行うことができない庁と国センに対して業を煮やした紀藤委員は、全体像をつかむためにも次回以降、文化庁宗務課の担当者と2世信者の召喚を求めた。
また、河上座長が国民生活センターに対して2世信者による質問の有無について質問したところ、国センは「記憶にない」と回答。菅野委員が消費生活センターへの献金に関する相談の有無についても質問したが、こちらも「記憶がない」との回答だった。
消費者教育、消費者相談対応について庁と国センが「やってる感」満載の報告だった割に、霊感商法対策については手抜かりの多い実態が明らかとなり、宗教問題に長年携わってきた紀藤委員らに比べて、実務的なズレが目立つ会合となった。
そのような中、宮下委員は献金対策について、「寄附の募集に関する禁止行為」を規定する公益法人法第17条が参考になると説明するとともに、芳野委員が報告した日弁連の意見書を高く評価し、献金の禁止について意見書に述べられている基準を可能な範囲で取り入れる必要があるとした。
5回の会合を経て「多くの論点が出揃った」(河上座長)とし、次回10月4日に開催予定の会合はフリーディスカッションで論点を深める。
同検討会の模様は、4日までYouTubeのアーカイブ動画で公開されている。
【田代 宏】
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