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東洋新薬、顧客支援を一層推進 【24年、私たちはこう取り組む】機能性表示食品、研究開発通じて差別化に貢献

 健康食品・化粧品ODMメーカー大手、㈱東洋新薬(服部利光社長)の2024年は、前期振るわなかった業績の早期回復に努める年になる。健康食品事業に関して引き続き基盤とするのは、枠をはみ出す広告をせずとも差別化できる、機能性表示食品を求める顧客の期待に応えるための研究開発。新規の機能性表示食品対応素材の投入や既存素材のヘルスクレーム拡充などを計画通りに実行し、顧客商品の売上促進を側面支援する。

アグレッシブになれなかった前期

 前期、2023年9月期の東洋新薬のグループ売上高は286億円だった。300億円を下回るのは3期ぶり。減収は、少なくとも10数年以上前にさかのぼる必要がある。取材に応じた副社長取締役の髙垣欣也氏は前期を振り返る。

 「もともと前期は社内体制の強化に力を入れるということで、予算計画も、例年通りにアグレッシブというわけではありませんでした。それが前提ではあったのですが、結果は想定を超えていました。大きかったのは、通信販売のお客様がこれまでのようには振るわなかったことです。コロナ禍の状況も変化して新規獲得、リピート率ともに苦戦されたようです。新商品についても、広告費の高騰によって発売を見合わせる動きが広がりました。当社としても、強みの機能性表示食品に関して、新しいチャレンジの製品や難しいヘルスクレームのものなどの投入が遅れてしまいました。その分、今期は期待できるものが多いと感じています」

 前期が始まってすぐの22年10月、髙垣氏は同期の売上目標について記者の取材にこう答えていた。

 「我われにしては、保守的な目標を立てています。この先、何が起こるか分からない。今期はそういう心づもりで、地に足をつけながら各事業に取り組みます。これまでは、とにかくアグレッシブ。しかしここにきて生じている外部環境の大きな変化は、アグレッシブな目標を立てることを許しません。グループ売上高500億円を目指すという中期的な目標を見直す考えはありませんが、この先予測できない事態が生じたとしても、しっかり対応できるよう、今期は社内体制をさらに整えるなどしながら、力を蓄えておくつもりです」

 東洋新薬のグループ売上高は、21年9月期、翌22年9月期の2期連続で大きく伸びていた。21年は前期比16%増を記録して300億円を初めて突破。翌年は同7%増と伸び率は減少したものの、一層の業績拡大を果たしていた。それを大きく支えたのは、新型コロナ期に目を見張る隆盛を見せた通販市場だった。髙垣氏は当時の取材で、「健康食品、化粧品ともに、通信販売を手がけるお客様からの受注がとりわけ好調でした」と述べていた。

 一方で、23年9月期は「保守的」になる必要があった。長期化するロシアによるウクライナ侵攻など不穏な国際社会情勢に加え、急激な円安を受け、さまざまなコスト高や物価高が企業や消費者を苦しめていたからだ。そのため例年であれば打ち出すアグレッシブな業績目標を手控え、社内体制の強化に資源を振り向けた。その結果について髙垣氏はこう語る。

 「急激な業績拡大で対処する必要のあった生産性の向上であったり、業務プロセスの見直しだったりといった社内体制の強化に組織を横断するかたちで取り組むことができました。今後も継続していく必要はあるにせよ、今期以降の業績を下支えするものになるはずです」

巻き返しを図る今期、カギは研究開発の進展

 ただ、減収は想定外だったに違いない。その要因について、同氏の話からうかがえるのは、22年9月期まで好調だった顧客商品の販売鈍化が想定を超えていたことだ。背景にあるのは、アフターコロナへの移行によって通販市場全体が落ち着きを見せたことの他に、インターネット通販で機能性表示食品を販売する顧客が、広告表示に依存するかたちの差別化競争に巻き込まれた可能性がある。

 消費者庁は昨年12月、いわゆる「ダイエット系」機能性表示食品のインターネット広告をめぐり、届出内容の範囲を明らかに超える「はみ出し広告」が景品表示法違反(優良誤認)にあたるなどとして、都内の販売事業者2社に対して措置命令を行った。

 ひと月のうちに2度の行政処分が行われた事実が示唆するのは、機能性表示食品の不当な「はみ出し広告」がネット上で横行している可能性だ。届出の範囲を守った広告を行う商品の存在感がかすみ、不当ゆえに訴求力の強い広告を行う商品に消費者が流れる。そうした本末転倒が生じているのではないか。「はっきりとしたことは分かりません。ただ、『際どい広告の他社に売上が流れている、荒らされている』という話は聞いたことがあります」と髙垣氏は話す。

 いずれにせよ、主力事業であり、それまで旺盛な需要があった機能性表示食品の受託開発・製造にブレーキがかかったことが、久方ぶりのマイナス成長の主因になったとみられる。届出表示が不当表示とされて業界を震撼させた6・30措置命令の影響も受けたという。

 「お客様は(機能性表示食品の届出に)慎重になられました。新製品の案件が立ち消えになったり、届出の内容を見直すということで進行が止まったりといったことが、それなりの数、ありました。(科学的根拠の確認対象となった88件に含まれていたため)届出が撤回された製品もあります」

 そのように例年とは様相の異なる前期を終え、23年10月から新しい期(24年9月期)に入った東洋新薬。今期進める取り組みについて髙垣氏は、「まずは業績を元の数字に戻すこと。そこからさらに伸ばしていけるようにすること」とコメント。「前期は特に上半期が振るわなかったのですが、今期は違います」と手ごたえも語る。

 健康食品事業については引き続き、機能性表示食品に注力する方針。研究開発や製品化の進展が、今期以降の業績拡大に向けた1つの鍵になると見る。「計画より遅れてしまいましたが、前期のうちに投入した機能性表示食品向けの新しい独自素材であったり、新たなヘルスクレームを拡充した既存素材であったりが売り上げとして実っていくのが今期。ほかにも今期投入予定のものを用意していますから、計画通りにきっちり投入していくことを第一に考えていきたいです」

増していく多様性、広げる顧客の選択肢

 前期は、新規の機能性関与成分として、「日常生活における一時的な疲労感の軽減」を訴求できる黒ショウガ由来テトラメチルルテオリンを投入した。また、バナバ葉由来コロソリン酸を機能性関与成分とする独自素材の「バナスリン」(同社の登録商標)について、歩行能力向上、肩および腰の負担軽減といった3つのヘルスクレームを同時に行えるようにした上で、新規の機能性表示食品対応素材として提案を始めた。

 他にも、既存関与成分の葛の花由来イソフラボンや、ターミナリアベリリカ由来没食子酸などについてヘルスクレームを拡充。葛の花では、「日常の身体活動による脂肪の燃焼を高める」旨を新たに訴求できるようにした。今期以降について髙垣氏は語る。

 「(機能性表示食品対応)素材のバリエーションや、各素材で可能なヘルスクレームの多様性を増していくことで、お客様の選択の幅を広げていきたいと考えています。素材だけでなく、剤型や風味などについても同じように増やしていき、付加価値が高く、差別化も可能な製品を、お客様に提案していきたいと考えています」

 前期から続くコスト高や物価高など、業績の下振れ圧力からは現在も解放されていないが、今期以降の取り組みを通じて、「V字回復につなげたい」と髙垣氏。取材では明かしていないさまざまな施策や努力を積み重ねていくことになりそうだ。

【石川太郎/2023年12月取材】

(冒頭の写真:東洋新薬の生産拠点「インテリジェンスパーク第一工場」。改正される平成17年通知にもしっかり対応していく、という)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-28(本部・鳥栖工場)
TEL: 0942-81-3555(本部)
URL: https://www.toyoshinyaku.co.jp
事業内容:健康食品・化粧品・医薬品・医薬部外品の受託製造

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