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東洋新薬・髙垣副社長に聞く【前期業績と今期戦略】外部環境が大きく変化、地に足つける必要ある

 サプリメント・健康食品から化粧品までOEM/ODMを手がける受託開発・製造大手の㈱東洋新薬(本部:佐賀県鳥栖市、服部利光社長)。新型コロナ禍で停滞した経済活動が再開し始めた一方で、急激なコスト増など大きな変化が生じた前期(2022年9月期)の業績と今期の事業戦略を髙垣欣也副社長取締役に尋ねた。

22年9月期売上高 2ケタ近く成長

──前期業績について伺います。前々期(21年9月期)のグループ売上高は約303億円、伸び率は16%を示していました。

髙垣 正式な決算結果はまだ固まっていません。公表は11月下旬以降を予定しています。そのため詳細についてはお答え出来ませんが、グループ全体の売上高は前期比で2ケタ近く成長といったところ。おかげ様で順調に伸ばすことが出来ました。

 前々期と同様に、通信販売を手がけるお客様からの受注がとりわけ好調でした。健康食品、化粧品ともに、です。傾向としても大きな変化は見られず、健康食品は引き続き機能性表示食品や青汁の受注が順調に増えました。化粧品は、シワの改善などを訴求する医薬部外品やクッションファンデーションなどが好調でしたね。化粧品事業の売上高規模はまだまだ小さいのですが、伸び率に関しては引き続き健康食品を上回りました。

 ただ、全体として、伸び率は前々期ほどではない。健康食品、化粧品とも、新型コロナを背景に増えた需要が一巡したように思います。

──前期の第4四半期にハードカプセル不足問題が発生しました。影響は。

髙垣 当社の場合、ハードカプセルの使用率はそれほど高くありません。とはいえ、少なからず影響を受けました。より大きな影響を受けたのはお客様です。発売や販売などの計画変更を余儀なくされましたし、一時は商品の販売継続に支障をきたす状況に陥った。現在もカプセルが不足している状況に変わりはありませんから、我われとしても対応を続けているところです。

 起きてしまったことは仕方がないし、我われとしてはその中で何とか対応するしかない。しかし、我われと同業の多くの関係者が同じように感じていると思うのですが、いま何が起こっているのかなどといった情報開示の仕方やその内容、タイミングなどについて、もっと違うやり方があったのではないか。そのように思っています。

コスト高の影響大きく 値上げをお願い

──22年が明けてからは原材料や資材、エネルギーなどのコスト高が深まっていきました。どのように対応しましたか?

髙垣 コスト削減に努めました。しかし収益の圧迫は避けられませんでした。今期は、そのインパクトが通年で及ぶことになる。すでに値上げが進んでいる通常の食品とは異なり、健康食品や化粧品は値上げしづらい商材であることは理解していますが、輸入に頼る部分も多い商材ですし、その中で為替がここまで円安に振れてしまうと、企業努力だけで吸収するのは困難です。お客様には、製品個別に値上げをお願いせざるを得ません。すでに前期から値上げのお願いを順次進めているところですが、そのお願いが1回や2回では終わらない製品が出てくる可能性もある。本当に先行きが見通せません。

──物価高の中、上昇したコストを最終商品価格に転嫁したとして、それが健康食品の消費に及ぼす影響をどう見ていますか?

髙垣 一定の影響は避けられない。ただ、健康食品は、その全てがということではありませんが、生活必需品に近づいているのではないか。健康に対する人びとの意識が新型コロナ禍で高まりました。健康食品に対する意識も昔と変わり、特別なものではなく、かなり身近な存在になっていると思います。といっても、値段の高い商品は買い控えが起こる可能性がある。当社が出来ることして、コストを下げるためのご提案、より付加価値を高めるためのご提案に注力していきます。

──今期の業績目標について。

髙垣 今は先行きが見通せない。だから、この先なにが起こるか分からない。今期はそういう心づもりで、地に足をつけながら各事業に取り組みます。公表はしませんが、これまでの我われとしては保守的な目標を立てています。

 これまではとにかくアグレッシブ。ここ数年で急速に業績を伸ばすことが出来た背景にはそれもあったと思います。しかし、ここにきて生じている外部環境の大きな変化は、アグレッシブな目標を立てることを許さない。グループ売上高500億円を目指すという中期的な目標を見直すつもりはありませんが、この先、予測できない事態が生じたとしてもしっかり対応できるよう、今期は社内体制をさらに整えるなどしながら、力を蓄えておくつもりです。

機能性表示食品の価値、製剤技術でも高める 

──今期の健康食品事業に関する戦略を伺います。

髙垣 機能性表示食品が軸になります。新しいヘルスクレームや機能性関与成分を引き続き提案できるようにしたい。どこまで実現できるかは分かりませんが、準備しているものがいくつもあります。例えば、既存の機能性関与成分ですがラフマについて、睡眠に関するヘルスクレームを拡充できるようにします。エネルギー消費増加機能のある黒ショウガについても独自に研究を進めていて、ヘルスクレームを体温の維持や疲労感の緩和などまで広げます。

 また、以前から研究開発を進めているバナバの抽出物に関しては、ひざ関節や歩行機能をはじめ、姿勢などに対するベネフィットといった、従来にない領域にアプローチしようとしています。免疫に関するヘルスクレームは、正直、非常にハードルが高い。ただ、引き続きチャレンジしているところです。

──製剤技術を開発する専門部隊を新たに作ったそうですね。

髙垣 商品の付加価値を高められるのは何も独自素材ばかりではありません。製剤技術も有効です。それは機能性表示食品の差別化にも有効で、ヘルスクレームは同じだとしても、他社の商品と差を付けることができる。独自製剤技術の開発は以前から取り組んでいたのですが、専任までは置いていなかった。健康食品の受託製造会社としてはやはり、製剤技術を通じて、お客様が販売する商品の付加価値を高めていく取り組みがもっと必要だろうということで、専門部隊を新たに設けることにしました。味や香りといった部分も含めて、新しい価値を提供していける製剤技術の開発を目指しています。

東京に開設した商品開発ラボ 顧客満足向上に一役 

──前期、東京支店に併設するかたちで開設した商品開発専用ラボ(クイックラボ渋谷。以下、QLS)の本格的な運用を始めました。顧客から好評のようですね。

髙垣 本部(佐賀県鳥栖市)にあるラボとほぼ同じ環境を整えました。本部に出向かずとも技術者と直接ディスカッションできたり、商品の試作が具体的に可能であったりということで、満足してもらっているようです。販売プロモーション向けの撮影を行える環境も整っています。とても良い環境を作れたのではないかと思っています。

 QLSは我われとしてもメリットがあって、本部と並行して試作を進められるようになりました。本部のラボが手一杯になりつつありますから、結果的にキャパの拡充につながった。また、研究開発や技術職の人材を首都圏で採用できるようになったのも大きいですね。これまでは、勤務地が鳥栖であるというのがネックになっていた面もありました。首都圏以外の人たちにとっても、東京で勤務できるのが魅力になっているようです。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川太郎】

(下の画像:「クイックラボ渋谷」のラボスペース。東洋新薬提供)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:佐賀県鳥栖市弥生が丘7-28(本部・鳥栖工場)
TEL: 0942-81-3555(本部)
URL: https://www.toyoshinyaku.co.jp
問合せ:https://www.toyoshinyaku.co.jp/contact/
事業内容:健康食品・化粧品・医薬品・医薬部外品の受託製造

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