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東和薬品傘下に入った三生医薬の今後 健食事業部長・只野一彦氏に聞く

 今年3月、株式譲渡手続きが完了し、連結売上高1,650億円超のジェネリック医薬品メーカー大手、東和薬品㈱(大阪府門真市、吉田逸郎代表)のグループに入った健康食品受託開発・製造大手の三生医薬㈱(静岡県富士市、今村朗代表)。東和薬品との事業シナジーをどう図るのか、総売上高(約240億円)のおよそ7割を占める健食事業(健康食品事業)に何らか影響が及ぶのか──行方が注目されている。4月の役員人事で三生医薬の健食事業部長に就任した只野一彦・取締役上席執行役員(=写真)にインタビューした。

事業部の組織再編実施 「個人ではなくチームで」

──健食事業部長就任前はフレーバーカプセルなどニューアプリケーション事業部長を務められ、海外向けの仕事が多かったそうですね。

只野 入社は2012年。三生医薬がカーライルグループに入る前です。当初は健康食品受託製造の営業を行っていたのですが、14年以降はずっとニューアプリケーション事業。その間に健康食品受託の営業にも携わっていましたが、お客様は海外ばかり。ですから国内についてはまだ〝浦島太郎状態〟というか(笑)。

──そうは言っても早速、健食事業部の組織再編を行われたようです。

只野 営業拠点について、お客様の近くで活動出来る従来からあった東京、大阪、福岡に加え、静岡にも置くことにしました。製造拠点の近くに営業部隊を置き、スピードアップを図るのが目的の1つ。また、これまで別々だった営業部隊とカスタマーサビース部隊を統合してチーム編成を行いました。今後はチームとして受託営業や顧客サービスなどお客様のベストパートナーを目指して活動していきます。

──どのような狙いですか。

只野 ビジネスも人と人の関係から生まれますよね。ですから着任後の約1カ月は事業部メンバーのインタビューに時間を使いました。組織再編はその結果を踏まえたものです。お客様にどれだけ近づくことができるか、お客様のために何ができるのか、あるいは何をなすべきなのか、といった意識を強く持つ組織とするための再編です。個人ではなくチームとして取り組むことで、メンバー個々のセールスなどのスキルや人間力などを高めてもらいたいと思っています。といっても、新しい組織がスタートしたのは5月中旬ごろのこと。まだまだこれからです。

──三生医薬の印象が変わっていきそうです。

只野 良い意味でそうなりたいです。私たちは今、第3ステージを迎えています。創業者がセールス面も含めて猛烈にけん引したのが第1ステージ。創業者から株式を継承したカーライルグループが属人的な組織からの脱却を図るため数値化や見える化などに取り組んだのが第2ステージ。そして東和薬品のグループに入った現在が第3ステージ。創業者はお客様から非常に好かれていた。私が営業に行くと「お前じゃない。近藤さんを連れてこい」みたいなことも(笑)。浪花節なのですよね。一方、それだけじゃダメだと、好かれる理由を明確化して継承していくことが大事なのだという方針が取られ、そこから大きな学びもあったのが第2ステージ。といっても、三生医薬のDNAから〝近藤イズム〟とでも呼ぶべきものが無くなったわけではなくて、まだまだ残されている。だから第3ステージは、これまでの各ステージからのいいとこ取りをするステージになる。健食事業部もそのようなかたちにもっていきたいと思っています。そのために、お客様の近くにいる必要があり、チームとして仕事をする必要がある、ということです。

東和薬品とのシナジー創出 「さまざまなアイデアある」

──健食事業部長に指名したのは石川前会長兼社長(22年3月末退任)だったと聞いています。

只野 三生医薬の3事業部のうち最も大きな部門を任されてしまった。私の役割は、健食事業部全体としてセールススキルなどを高めていくこと。それが出来れば、お役御免だとくらいに思っていますが、やはり海外市場に向けた取り組みを推進するのも役割だと理解しています。国内健康食品市場の伸びが鈍化している中で、海外市場をどのように攻略していくか。健食事業部を任された以上、そこを避けて通れません。

──海外企業を顧客にしていたニューアプリケーション事業部での経験が役立つのでは。

只野 どうでしょうか。ただ、2014年から本年健食事業部長に着任するまで、世界各国のお客様とコミュニケーションを取ってきたのは事実です。現地にも何度も足を運んでいる。その中で、日本製品に対する需要だったり、三生医薬が持つ技術力に対するニーズだったりを肌身に感じてきました。健康食品に対する需要もそうです。日本製のサプリメントや健康食品を求めている企業は東南アジアの国々を含めてかなりある。そこは、東和薬品とのシナジーを図れる部分ではないかとも感じています。

──東和薬品との事業シナジー創出に向けた取り組みについて聞かせて下さい。

只野 東和薬品が三生医薬の買収を発表したのは昨年12月ですが、手続きが完了したのは今年3月8日です。法律上、今後の協業に向けた本格的な話し合いを行えるようになったのもそれ以降。ですから、具体的なところは本当にまだ何も決まっていません。さまざまなアイデアがそれぞれの頭の中にあるだけというか。ただ、これまでの三生医薬では考えられなかったようなこともできる可能性があるとは思っています。

──只野事業部長の頭の中にはどのような考えが?

只野 三生医薬は現在、海外に拠点を持っていません。以前は中国・上海にあったのですが。一方、東和薬品は海外拠点を保有しています。1つはスペイン、もう1つは北米。グループ企業として私たちもそこを活用させてもらいながら協業していく、東和薬品と共に欧州や北米のマーケットを開拓していく。例えばそんな考えが私の頭の中にはあります。具体的なものでは全くありませんが。

 先ほども言いましたが、健食事業部長としての私の役割の1つには海外市場の開拓がある。東和薬品のグループに入ったことで、海外も含めてお客様の近くにいられるようになる可能性が出てきた。単に海外向けの営業を行うというだけではなくて、海外に製造拠点を保有することも不可能ではないかもしれないと思っています。それは海外だけでなく国内のお客様のサポートにつながるかもしれない。ここ数年、当社でも国内のお客様の海外志向がどんどん高まっていて、健康食品事業の売上高の実に2ケタ%が海外で販売されています。現下の円安状況はしばらく続くでしょうから、今後、お客様の海外志向が加速度的に高まっていくかもしれない。そうした中で、海外に拠点を持つ東和薬品と協業していくことで、私たちが以前から取り組んでいる海外輸出サポートを新しいステージに引き上げられる可能性もあるのではないかと考えています。あくまでも私の頭の中だけで、ということですけど。

全ての取引先にとってのベストパートナー目指す

──東和薬品との事業シナジー創出に向けてはさまざまな可能性があると。

只野 そうですね。東和薬品のグループに入ったことで、私がニューアプリケーション事業に携わっていた当時のリソースでは困難だったことにもチャレンジできるようになる可能性がある。その可能性を健食事業部で実現できれば、成長が鈍化傾向にある日本の健康食品市場をさらに伸ばしていくためのお手伝いができるようになるかもしれない。そのように考えています。

──東和薬品の傘下に入ることについて社内で不協和音が起こったりしませんでしたか。

只野 一切ないです。なぜなら三生医薬を子会社にする目的を、東和薬品は明確に示してくれたからです。治療、つまりジェネリック医薬品をコア事業としつつ、未病や健康維持・増進のための製品やサービスも消費者のために展開していくのだと。そのために、三生医薬が保有する技術力、顧客基盤、そして健康食品関連のノウハウを活用したいのだと。未病や健康維持・増進はまさに三生医薬が創業以来ずっと取り組んでいる部分であって、そこを生業としてきました。それもあって東和薬品の子会社になることに対するアレルギー反応は一切出なかった。今回の件は私たちにとってそういう出来事で、そのようにして第3ステージを迎えたということです。

──最後に、取引先へのメッセージを。

只野 当社のミッションの1つに掲げられているのは「取引先への使命」です。取引先というのはお客様だけではなく、一緒に仕事をさせていただいている原材料や機械メーカーなどサプライヤーを含め、私たちがお付き合いをさせていただいている全てが含まれます。三生医薬のやっていることは、医薬品の世界で言えば「ドラッグ・デリバリー・システム」を作ることであって、何らかの機能性を持つ素材や成分を体のどこかに届けるためのお手伝いをしているに過ぎない。その意味で、私たちは取引先がいなければ何もできない。だから今後も全ての取引先にとってのベストパートナーでありたいと考えています。

──ありがとうございました。

【聞き手・文:石川 太郎】取材日:2022年6月23日

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