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改正特商法「電子メール契約」がアダに~参議院(前)

 204通常国会で提出された法案のうち、すでに約8割が成立するなか、「消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案」(改正特商法、預託販売法案)は、参議院において苦戦している。
 妨げとなっているのが、「契約書面等の電磁的方法による提供を例外的に可能とする」改正案。消費者庁は、書面での交付を原則としながらも、消費者の承諾を得た場合に限り、例外的に電子契約書面などの電磁的方法による提供、例えば、電子メールでの提供を可能とする制度改革を行うこととしている。
 これに対し、消費者団体や弁護士会、弁護団、司法書士会などの163団体から猛烈な反対の声が上がっているのである。果たして改正特商法はどうなるのか?6月16日までの会期に着地点を見出せるのか?

<改正法施行前にガイドラインの見直しも>
 5月28日、参議院で開かれた「地方創生及び消費者問題に関する特別委員会」で行われた質疑では、与野党の議員7人による質問が行われた。そこでは、改正法の施行を待たずに、悪質な通販事業者による消費者に誤認を与えるような表示について、ガイドラインの見直しを行うとの消費者庁からの発言もあった。同委員会で行われた質疑応答を紹介する。
 質問に立ったのは、自由民主党・国民の声の藤末健三議員、自由民主党・進藤金日子議員、立憲民主党・川田龍平議員、公明党・伊藤孝江議員、日本維新の会・柳ヶ瀬裕文議員、国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵議員、日本共産党・大門実紀史議員ら7人。井上信治内閣府特命担当大臣をはじめ、消費者庁の高田潔次長らが参考人として出席した。

<「事業者の過度な負担に配慮を」藤末氏>
 藤末議員は、「悪質な事業者がいるために規制がどんどん強化されるわけだが、健全な事業者に過度な負担をかけないように配慮してほしい」と事業者側に立った発言を行った。また、消費者庁で検討会が進んでいる「消費者裁判手続特例法」の改正に言及。被害回復裁判手続制度において、消費者被害の回復のために消費者庁が適格消費者団体に提供する書類が、どのような場面で、どのような書類が提供されるかについて質問した。
 消費者庁の片桐審議官は、「提供する書類については内閣府令で定めることとしているが、現段階では、消費者庁が行った行政処分の処分書などを想定している」と答えた。

<「デジタル技術の専門家の意見も」(進藤氏)>
 自由民主党・国民の声の進藤議員は、契約書面等の電子化について、「消費者の利便性向上と消費者利益の保護の両者のバランスをどのように図っていくのか、井上大臣の考えを求めた。
 大臣は、「今回の制度改正は、社会や経済のデジタル化をさらなる消費者の保護につなげることを図りつつ、電子メールなどにより必要な情報を受け取りたい消費者のニーズにも応えるためのもの。近年は、紙よりもデジタル技術を活用して、必要な情報を保存閲覧し、やりとりする方がより便利であると感じる国民も増えているのではないか。改正法案が成立した暁には、消費者相談の現場の声などを真摯に聞きながら、具体的な制度設計を進めていく中で、消費者の利便性の向上および消費者利益の保護の両者の充実を図っていく」と官僚的な発言を行った。
 
 進藤議員は、消費者利益の保護ということは極めて重要である一方、消費者の利便性が損なわれないようにしてほしいと強調した。さらに、デジタル技術者などの専門家の意見も聞くべきだと付け加えた。
 
 「消費者の利便性」という言葉はこの後も、政府の参考人の口から繰り返し出てくる。利便性を図るために電子メールによる契約書面の交付が必要となるという論法である。これに対して大門議員が「そういう一般的な話をしているのではない」とたしなめる一幕が後半に登場する。訪問販売・電話勧誘・マルチ商法など、そういう特商法の世界の話をしているなかで利便性を高めても困るというのである。163団体の多くの人は、ジャパンライフ事件で消費者を騙した社員などを念頭に置いて話しているのだと説明する。

<パブコメ破棄の問題に言及>
 立憲民主党の川田議員は1時間にわたり質問した。冒頭、ジャパンライフ事件をめぐり、消費者庁が2013年に預託法の政令改正の際に行ったパブリックコメントに対する意見を廃棄していたことについて、「考えられない」として、消費者庁の姿勢を糾した。これは委員会当日の朝刊で、一部のメディアが報道していた。
 これに対して井上大臣は、「提出された意見について、意見内容および意見提出者ごとにまとめた資料を作成、保存していたものの、意見そのものを保存していなかったことは事実」とし、「今となっては、当時の判断は必ずしも適切ではなかったと考えている」と説明、「今後は公文書管理を含め、消費者庁の事務をしっかり監督する」と述べた。
 
 川田議員は、消費者庁には行政文書を30年間保存する義務があるとし、当時の安倍政権への忖度があったのではないか、また今回、デジタル庁の新設を進めている菅政権の忖度で今回の法改正も進められたんじゃないか、と切り込んだ。

(つづく)

【田代 宏】

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