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国民の健康向上にどう生かすか
薬局へアドバイザーの配置を

食生活ジャーナリストの会 代表幹事 小島 正美 氏

 
成長戦略の一環としては合格点
 科学的根拠があれば、一定の健康効果を消費者庁への届け出で表示できる「機能性表示食品」の制度が2015年にスタートして7年目に入った。
 どう評価するかは、食品企業、消費者、医師・科学者のどういう視点に立つかで異なるだろうが、健康食品の健全な育成という観点から見れば、まずまずの合格ラインだろう。これまでの成果と今後の課題を考えてみた。

 機能性表示食品の意義を語るには、その出自を確認しておく必要がある。
 この制度は2013年6月、当時の安倍政権の成長戦略の一環として生まれた。
 それまで信頼できる健康食品といえば、国が審査して許可する特定保健用食品(トクホ)しかなかった。そのトクホを取得するには、製品の有効性を確かめるための臨床試験も含め1億円以上もの資金が必要だった。
 そこへ、自社試験がなくても、文献報告で科学的根拠があれば、事業者が消費者庁に届けるだけで一定の健康効果を表示できる機能性表示食品が加わった。当然ながら、中小の食品企業でも以前に比べて容易に参入できるようになった。

 当初は消費者庁の受理(届出公表)が遅く、どこまで増えるのか懐疑的だった。だが、徐々に受理スピードが速くなり、6年余りで4,000品目を超えた。その品目数はトクホの4倍近くにもなり、もはやトクホの存在がかすんでみえるほどの増加ぶりだ。
 安倍政権の規制改革会議委員だった森下竜一氏(大阪大学大学院教授)は記者向けの講演で「成長戦略としては成功だった」と幾度なく話している。私の思いも同じだ。

多様な健康強調表示も特色
 トクホを上回るプラスの効果として、健康表示の多様性も挙げられるだろう。
「肌の水分保持」、「血圧上昇の抑制」、「疲労感の軽減」、「目のピント調節」、「リラックス効果」、「整腸作用」など、体の機能にかかわるさまざまな表示が可能になった。極めつけは「免疫機能の維持」、「認知機能の改善」、「尿酸値の上昇抑制」などだ。
 医薬品ではないため、病気を治す表示は認められていないが、それに近いような機能性表示が認められたのは驚きである。

 こうした多様な健康強調表示と4,000品目を超える製品が揃えば、消費者の選択は格段に増える。2018年に米国のサプリメントショップを視察した際、棚ごとに豊富な製品が機能用途別に並んだ光景を目の当たりにし、「日本が米国並みになるのは、数年では無理だろう」との印象を抱いたが、予想より早く、米国並みに近づきつつあるとの思いを持ち始めた。

国民の健康レベルもアップ
 もしかしたら日本は米国を上回る特徴を発揮するかもしれない。日本ではリンゴやミカン、モヤシ、魚のイワシのような生鮮食品も機能性表示食品の適用対象になっている。このことは地域の農林水産業の振興につながる経済効果を持つことを意味する。
 さらに緑茶やトマトジュース、大麦、ヨーグルトなどの加工食品でも機能性表示食品が多くみられる。この意義は大きい。日常の食生活に機能性表示食品を多く取り入れることで自分の健康意識を高めるきっかけになるからだ。

 農水省の外郭団体である農研機構が機能性表示食品を利用した健康モデル弁当を作り、効果をテストしたところ、内臓脂肪が低下する研究成果があった。こうした成果事例を国民全体の食生活に生かせば、理屈の上では機能性表示食品が国民の健康レベルを引き上げることにもつながるはずだ。

 機能性表示食品制度の発足前に、政府は健康・医療戦略推進法を定め、国民の健康寿命の2年の延伸を目標に掲げたことは案外と知られていない。
 つまり、機能性表示食品の普及で健康寿命を延ばすという目標もあったわけだ。この観点から考えると、機能性表示食品をどのように活用すれば、健康寿命の延伸に寄与できるかに関する研究がもっとあってよいはずだ。健康食品業界に対しては、健康食品の売上の1%程度を、こうした健康寿命延伸効果を知る疫学研究に投じる責任を期待したい。

 機能性表示食品がいくら増えても、その活用法が分からなければ、国民全体の健康レベルは上がらない。そうした活用法をアドバイスできる健康食品の専門家をもっと薬局に配置する政策も必要だろう。
 

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