原田CEOが描く「えがお」の成長戦略 「来年から過去の歴史をリニューアルする」(原田氏)
㈱えがお(熊本市東区、北野忠男社長)は11日、南青山のスパイラルホール(東京都港区)で「株式会社えがお 成長戦略及び新商品『フトラント』記者発表会」を開催した。最高経営責任者(CEO)の原田永幸氏が新商品の紹介後、えがおの成長戦略の推進について、その概略を説明した。
北野忠男代表取締役会長兼社長が1989年、「ロフティ」の名称で創業した同社。その後、2008年に「えがお」に商号変更し、15年には年商260億円、会員数は500万人に達した。ところがその後、同社の売上は下降線をたどり続けることになる。原田氏によれば、同社の売上は現在150数億円、会員数94万人にまで落ち込んでいるという。また、売上の7割を同社の主力商品『えがおの黒酢』と『えがおの肝油 鮫珠』の2品が占めている。
ダウントレンドという厳しい局面を迎えた同社だが、昨年は微増ながら増収増益を達成。「食品と美容商材に競争力がないわけではない。売れていないわけではなく、売っていなかったというのが適切な表現」と原田CEOは過去7年の不振について語る。もちろん、16年に熊本は2度の大きな地震に見舞われるという不幸もあった。
成長戦略はキャッシュ・カウの最大化がカギ
原田氏は、主力商材『えがおの黒酢』と『えがおの肝油 鮫珠』を同社のキャッシュ・カウとみなし、その最大化を図る。そこで生み出した利益を新たな施策に投資するという好循環の中で、同社が持つ「食品」、「サプリメント」、「美容商材」などの約80品目について、独立したブランドのプラットフォーム構築を目指す。
同氏は、「例えば、アルマーニも、エンポリオ・アルマーニ、ジョルジオ・アルマーニ、ハイアットホテルグループにも、パークハイアット、ハイアットリージェンシーというふうに顧客層、価格帯によって違ったサブブランドがある。同じようなイメージで、食品・サプリ・美容商材という3つの事業ポートフォリオを構築していく中で、コア・バリューとは何かを改めて整理する」と話す。
2023年『えがおの黒酢』をリニューアル
来年から、過去の歴史の新しいリニューアルを行う。子どもからファミリー、そして高齢者まで、「一生、健康と幸せを支援するえがお」というブランド構築を目指す中、まず『えがおの黒酢』をリニューアルする。黒酢の濃度を150%にし、乳酸菌を加え、現在のカプセルからより飲みやすく小粒化し、機能性表示食品にチャレンジする。『えがおの肝油 鮫珠』をはじめとしたその他のサプリメントも、機能性表示食品化を目指す。従来、成分を商品名としている商品群について、順にユニークな名前に改称し、ブランド価値を上げていく。例えば、アスタキサンチンは『キレイニナルト』、内脂燃は『ヤセルト』などと、やはり九州の方言を生かしたネーミングに変える。
また、味覚糖とタイアップしてキッズ向け肝油ドロップのOEM商品を開発。大麦を使った健康飲料をはじめとした多くの食品の開発にもすでに着手。熊本をベースにした独自の通販商品も開発中だ。
ターゲット層を40代に広げ、CMキャラクターにアーティスト起用
サプリメント摂取の目的は健康を害してこれから回復していこうという「問題解決型」と、40代から今の健康を維持していこうという自己投資世代がけん引する「健康維持型」の2パターン。これまで70代・80代の問題解決型に特化してきたターゲット層を「健康維持型の40代以上に広げ、健康維持のために自己投資する顧客マーケットの掘り起こしを行う」(同氏)とする。
「体が弱った高齢者にサプリメントを訴求するという29分のインフォマーシャルがサプリ業界では典型」という同氏。元々、長尺のインフォマは九州初の化粧品会社として、かつて一世を風靡したヴァーナル化粧品が元祖。九州の単品通販はこれに右へ倣えをして一頃、隆盛を極めた。ところが時代は変わった。デジタル化の進展に伴い、顧客ニーズも変化した。それでも原田氏は、「急に(現状を)変えると売上が下がる」とし、「少し慎重に保持しながら」健康維持型・投資型に対してはCMキャラクターに、シンガーソングライターの石井竜也氏を起用するなどし、顧客市場の新たなニーズの開拓を図る。
高効率・低コストのデジタルマーケティングに着手、東阪名へ進出
関東や関西エリアではCPO(Cost Per Order)が高いため、これまではサプリのインフォマーシャルはほとんどローカルに特化していた。今後は、90秒や短尺のメディアにもチャレンジし、東阪名圏に進出する予定だ。サプリと美容については、高効率・低コストのデジタルマーケティングにも着手する。
有識者とのエンドースメントも積極的に推進するという。早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構部門長の矢澤一良氏と、若手女優との対談をネットを通じて発信していく。さらに、オンラインメディカルとのタイアップは不可欠。新たなカテゴリーにおける顧客価値の創造にも取り組む。今も進めているBtoB事業では、海外事業でもトップとのアライアンスを積極的に進め、アジアにおけるビジネスチャンスを広げる。
新たな人材のリクルートで組織力強化
人材と組織力を一層強化する。「新しいマーケティングにチャレンジをするためには、新しい組織力と人材が不可欠」(原田氏)と強調。今年から、熊本本社の他に渋谷に戦略企画とマーケティングの拠点を新設。すでに、戦略企画やデジタルマーケティングなどに豊富な知識と経験を持つ有能な人材を採用した。既存の人材と新たなビジネスに必要な人材の融合を図り、化学反応による組織力の強化と事業推進の起爆力へとつなげていく。
「これからはスマホを使ったEC市場への進出」(同)も視野に、「まずは来期200億円を目指す」と宣言。300億、500億もサプリメント業界では不可能ではないという強気の原田氏は「1,000億円という数字に何年で到達できるかというチャレンジだと考える」と意気込みを語る。同氏によれば、売上構成比は「まずは”食品”、食品と連動する”サプリ”、そして”美容”の順ではないか」という。
【田代 宏】
(冒頭の写真:成長戦略を語る原田永幸CEO、TouTube動画の写真:ゲストとして招いた安田美沙子さんとポーズをとる原田氏)