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健康食品産業協議会が描く未来像 橋本正史会長に聞く(後)

 産業の健全な成長、発展を果たすためには業界団体の取り組みが欠かせない。サプリメント・健康食品業界6団体や関連事業者らで構成される(一社)健康食品産業協議会は今後、事業者や消費者のためにどのような取り組みを進めるのか。橋本正史会長(=写真)に展望を聞いた。

──会員企業が100社に近づいています。

橋本 正会員(事業者)と賛助会員を合わせた会員企業は現在96社(22年12月15日現在)。私は以前から、会員が300社を超えれば、業界団体として社会的な存在感が出てくると言っていて、まだまだこれからだとはいえ、自然発生的にそれに近づきつつあります。財政的な話も含めて300社以上の規模にまで拡大できるのが理想です。その意味でも広報委員会(※前編参照)の活動はとても大切。私たちの活動を対外的に示していくことで、健康食品産業協議会は健康食品産業の活性化のために取り組んでいる団体であるということがもっと表に見えてくる。そうなればもっと仲間を増やせると思っています。

──医療用医薬品メーカーを中心に健康食品市場への新規参入が目立っています。

橋本 健康維持増進への寄与を目指しているのは一緒です。ぜひ私たちの仲間になってもらいたい。生鮮食品や一般加工食品を専業としている方々もそうです。

 最近は、農林水産省で輸出促進を担当している方々ともコミュニケーションを取っています。彼らが目指しているのは農産物にとどまらない食品の輸出促進で、そこにはサプリメントなど栄養補助食品も含まれる。実際、21年から栄養補助食品の輸出統計が取られ始めていて、例えば22年1~5月の輸出額を前年同期と比較すると35%伸びています。金額としては81億円から109億円に増えました。これをさらに伸ばすためにどうすればいいか、という割と実務的で前向きな話を農水省の方々としています。農林水産から医薬品まで、機能性表示食品など健康食品に関わる多くの企業を巻き込みながら市場全体のパイを増やしていくのが私たち産業協議会の目標です。

──以前から海外を目指すべきだと語っていますね。

橋本 企業はもとより業界団体も、国内にとどまるのではなく、経済成長率の高いASEAN(東南アジア諸国連合)を始めとする海外を目指すべき。会長就任以来、そう言い続けています。人々の健康維持増進に寄与するメイド・イン・ジャパンの製品を世界に広げていくためです。日本は世界で最も早く超高齢社会が到来した国であり、いわば健康維持・増進に関する最先端を走っている。そのため世界からも注目されているというアドバンテージを生かさぬ手はありません。安倍晋三元総理は、機能性表示食品制度を世界最先端の制度にしたいと仰っていた。業界団体としてもそれを目指すために、世界に向けて情報発信していく必要があると思っています。

 企業個別の動きを見ると、かなり戦略的にASEANに出て行っている様子がすでに見受けられます。例えば、分析機器を食品中成分の分析技術やノウハウなどとともに輸出しようとする動きも見られる。業界団体としても、各国の関係機関や業界団体などとコミュニケーションを図りながら、それをサポートできるようにしたい。個人的な考えですが、機能性表示食品を輸出するにしても、製品だけでなく制度や分析といった、フレームごと輸出できるような将来像を描いています。日本の制度とASEANなど諸外国の制度とのハーモナイゼーションを図ることで、日本の企業が外に出ていきやすくなるし、その逆も考えられる。そうなれば日本の健康食品産業全体がさらに活性化する。イノベーションを起こしやすくもなるとも思います。

──とても大きな絵を描いているようです。とはいえ、日本の健康食品には定義さえ存在しません。業界団体トップとしてどう考えていますか。

橋本 足元のさまざまな課題を解決しようとすれば、行きつくところはそこですよね。定義がないから場当たり的な個別対応を取らざるを得ない。特定のヘルスクレームを取り上げて、医薬の領域に入り込んでいるか否か、のような。結局、声の大きな方々に振り回されることになる。海外のようにGMPが未だ義務化されておらず、その認証を民間で行っているのも定義や制度がないからでしょう。サプリメントや健康食品を定義し制度化したほうが、行政も企業ももっと楽になるのではないか。そう思っています。

 私としては、大局的な視点を大切にしたい。諸外国に比べて低いと指摘されている消費者の健康リテラシーをどう高めるか、あるいは、健康食品市場全体の健全化をどのように図っていくかといった大きな視点です。機能性表示食品にしても、届出件数が増えたとか、市場規模が拡大したとか、それはそれでとても良いことですが、そこばかりを考えて何の工夫もなく制度を放置しておけば、すぐ頭打ちになる可能性だってある。もっと大局的な視点に立って、戦略的に取り組んでいく必要がありそうです。

──どのような取り組みが考えられますか。

橋本 例えば、医師など医療従事者の理解をもっと得られるように働きかける。また、米国など海外では実際に行われていますが、サプリメントが医療費削減にどの程度貢献しているかを調査し、明らかにするのも良さそうです。健康食品業界にはシンクタンクがないとの指摘を、ごく最近耳にしましたが、本当にそう。大局的に視点に立つためにも、そういうものを作っていく必要がある。個人的な思いとしては、会員やリソースをもっともっと増やし、健康食品産業協議会は業界団体でありシンクタンクでもある、という方向に進んで行けば良いと思っています。

(了)

【聞き手・文:石川 太郎 取材日2022年12月下旬】

プロフィール:2019年5月、(一社)健康食品産業協議会の会長に就任。現在2期目。ルテインなどサプリメント原材料の製造販売を手掛ける米ケミン・インダストリーの日本法人、ケミン・ジャパン㈱の代表と兼務。

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