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事後チェック指針 が引き上げた
科学的根拠のレベル

㈱グローバルニュートリショングループ 代表取締役 武田猛氏

撤回の速度上がる
 「事後チェック指針」の運用が始まって1年半が経過した。執筆時点(2021年11月23日)での届出撤回は495件、その内20年4月1日以降の撤回が239件で約5割に上る。届出撤回の理由全てが機能性のエビデンスに関するものではないが、それにしても届出撤回のペースは間違いなく上がっている。

 「事後チェック指針」が策定された目的は、事業者の予見可能性の向上、つまり、届出前にどのような点が問題となるのかが分かるようにし、届出後の疑義を未然に防止することだった。同時に、公表済み届出に対しては、「事後チェック指針」に違反する場合には遡って撤回へ向けて指導するとされていた。この1年半、この機能が働いていたものと思われる。

 「事後チェック指針」の「科学的根拠に関する事項」の内容は、過去に実施された検証事業の報告書で指摘されていたことが改めて示されているに過ぎない。具体的には、16年7月7日に公表された「「機能性表示食品」制度における機能性に関する科学的根拠の検証-届け出られた研究レビューの質に関する検証事業報告書」、17年10月16日に公表された「機能性表示食品制度における臨床試験及び安全性の評価内容の実態把握の検証・調査事業 報告書」である。届出ガイドラインの改正や質疑応答集の新たな追加記載、消費者庁担当官のチェックの在り方の変化のきっかけは、これら検証事業報告書であったと考えてよいであろう。
 従って、個人的には「事後チェック指針」の内容自体に驚くこともなかった(「広告・表示の考え方」についても、「健康食品に関する景品表示表及び健康増進法上の留意事項について」記載内容と何ら変わりはない)。しかし、これらの報告書に目を通していない業界関係者が決して少なくないことに驚いた。
 
セカンドオピニオンの依頼増加
 このような事情を受けてか、最近多い依頼が、届出実績のある研究レビューのレビュー、つまり、セカンドオピニオンを求められることが多くなっている。主に、原料メーカーが提供する研究レビューになるが、それを使用して届出を検討している企業から、その研究レビューを使うことのリスクについて評価をして欲しいという依頼である。届出撤回の内容を見てみると、同じ機能性関与成分の届出撤回が集中していることが分かる。つまり、ある原料企業が提供した研究レビュー等に不備があり、その原料を使用した届出企業が連鎖的に届出撤回している状況が窺える。これは、これから届出をしようとする企業にとっては大きな脅威でもある。そのため、あらかじめその研究レビューを使用することのリスクを評価しておきたいということである。

 具体的に行う作業は、その研究レビューが「PRISMA声明に準拠しているか」、「論文と照らし合わせた際、データの扱いに問題は無いか」、「届出表示の妥当性と課題点」、「エビデンスの強さ、リスク、検討すべきポイントなど」について、クリティカルに評価している。

「事後チェック指針」に抵触する恐れのあるレビューも
 これまで研究レビューのレビューを数十件行ってきた。「事後チェック指針」に抵触することなく、安心して使用できる研究レビューが多かったが、なかには、明らかに「事後チェック指針」に抵触する恐れのある研究レビューも見られた。また、直ちに問題とはならいものの、長年、レビューの内容の見直し(再検索等)が行われていない例も見られた。これは、企業姿勢なのかもしれない。

 「事後チェック指針」の運用により、原料企業の提供する研究レビューをそのまま使用するのではなく、その内容を検証し、その原料の使用の有無を決める企業が増えてきている。その結果、原料企業の研究レビューの内容もレベルが上がっている。結果として、機能性表示食品制度における機能性の科学的根拠のレベルも上げってきている。新たに研究レビューや臨床試験を実施しようとする企業も、「事後チェック指針」を十分に理解してその計画を立てている。さらに、検証事業報告書の内容を精査し、その内容を研究レビューや臨床試験に反映させようとしている企業も増えている。「事後チェック指針」の登場により、機能性表示食品制度がより信用できる制度に進化していると実感している。

 「広告・表示の考え方」については、従来の考え方が変わったわけでもなく、特に気をつける点はないと思う。景表法と健増法の基本的な考え方から外れない限り、これまでどおりで良いと思う。

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