キリンホールディングス㈱（東京都中野区、磯崎功典社長）のキリン中央研究所（矢島宏昭所長）はこのほど、乳由来の「βラクトペプチドの1つであるGTWYペプチド（βラクトペプチド）」を使った臨床試験で、日常的にストレスを感じている人のメンタルヘルスや精神的活力を改善することを確認したと発表した。

　同研究成果を、7月14～15日に、日本うつ病学会が主催した「第19回日本うつ病学会総会」で発表。同研究と関連した成果は、6月17日に行われた「第22回日本抗加齢医学会総会」においても発表し、「最優秀発表賞」に選出された。

　同社は、東京大学や協和キリン㈱（東京都千代田区、宮本昌志社長）と連携した長年の脳科学研究の成果として、カマンベールチーズなどの発酵乳製品に多く含まれる「乳由来のβラクトペプチド」を発見し、ヒトの認知機能を改善することを報告している。
　また、βラクトペプチドは脳に届いて、脳内のドーパミンを増やすこと、うつ病との関わりが知られる脳内炎症を抑制すること、抗うつ作用を示すことが非臨床試験で確認されているが、気分状態に関するヒトへの効果は不明だった。

　試験は、「日常的にいらいらを感じている」など気分状態に問題を感じている45~64歳の健常な中高年齢者層の60人を対象に、ランダム化二重盲検比較試験を実施し、βラクトペプチドを含むサプリメントの摂取が、気分状態や精神的活力におよぼす効果を臨床試験で検証した。
　6週間の摂取前後に、質問紙によって気分状態を評価し、生体指標として唾液中のストレスマーカーを測定。その結果、日常の不安感、ストレス知覚度、精神的活力のスコアが、βラクトペプチドを摂取した群ではプラセボ群と比較して有意に改善した。また、ストレス状態を評価する指標である免疫グロブリンA（IgA）も、βラクトペプチドを摂取した群では同様に改善した。これらの結果から、βラクトペプチドは「日常的にいらいらを感じている」などの気分状態を改善し、精神的活力が向上することが初めて確認された。今回の試験では、認知機能改善効果と同じ摂取量で効果を確認しており、βラクトペプチドが脳と心の健康の両方に役立つ可能性が期待されるとしている。