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エラスチン、忘れてならない関節ケア 作用機序として考察される靭帯への働き

 「エラスチン(ペプチド)」と聞いて連想する機能性は何だろうか。真っ先にあがるのは、肌の弾力を維持するなどの美容機能と思われる。最近では、血管ケア機能を思い浮かべる人も多いだろう。一方で、この機能は忘れられがちかもしれない。膝関節ケア機能である。機能性表示食品の機能性関与成分として届け出されているカツオ由来エラスチンペプチドは、膝を支える靭帯に働きかけることで膝関節の動きをサポートすると考えられている。

エラスチン=組織に弾性与えるタンパク質

 エラスチンは、全身の臓器や組織に広く分布するタンパク質の一種。ゴムのように伸び縮みする性質を持つため、肌や血管など、弾力性や伸縮性が求められる組織に多く分布する。

 骨と骨をつなぐ靭帯も同様だ。同じく生体内に多く分布するタンパク質で、剛性タンパク質とも呼ばれるコラーゲンが組織に強度を与えるのに対して、エラスチンは組織に弾性を与える役割を担う。

 そういった特徴のあるタンパク質のベネフィットを、機能性食品として提供できるようにしたのが、林兼産業㈱(山口県下関市)が製造販売を手がける機能性関与成分のカツオ由来エラスチンペプチド。魚類に特有の血管組織である「動脈球」からエラスチンを取り出し、低分子化して粉末にした「カツオエラスチン」(製品名)を開発。サプリメントからドリンクまで幅広い食品に配合できるようにした。

 カツオ由来エラスチンペプチド(=カツオエラスチン)を関与成分とする機能性表示食品の届出件数は累計45件(7月末時点)。昨年来、血管ケア機能(加齢とともに低下する血管のしなやかさ=血管を締め付けた後の血管の拡張度=の維持)を訴求する届出の件数が大きく伸びており、その陰に隠れてしまっている感もあるが、運動器フレイルやロコモの対策にもつながる膝関節に関するヘルスクレームも可能とする。「膝関節の動きをサポートし、軽い違和感を和らげる機能」のある旨が届け出されている。

 同成分が膝関節の動きをサポートするメカニズムについては、筋肉とともに膝関節を支える役割がある靭帯の状態を改善させるためだと考えられている。林兼産業では靭帯とエラスチンの関係をこう説明する。

細胞試験で確認された靭帯状態の改善

 「皮膚や血管におけるエラスチンは加齢とともに機能が低下することが知られる。同様に、靭帯におけるエラスチンも機能および量的にも低下し膝の痛みが発症すると考えられる。そのため、膝十字靭帯細胞に対して賦活作用(機能を活発にさせること)を示す物質は、靭帯の強化や損傷予防に有効であると期待される」

 そこで同社はカツオエラスチンの靭帯細胞活性化機能を確かめる研究を実施。ヒト膝前十字靭帯由来の線維芽細胞を培養し、同エラスチンと吸収ペプチド(カツオエラスチンの経口摂取により吸収されるプロリンとグリシンが結合したジペプチド)の添加による細胞増殖作用、エラスチン発現促進作用、Ⅰ型コラーゲンとⅢ型コラーゲン発現促進作用を検証した。その結果はこうだ。

 「カツオエラスチン、吸収ペプチドともに、濃度依存的に靭帯細胞増殖作用、エラスチン mRNA 発現促進作用、Ⅰ型・Ⅲ型コラーゲン mRNA 発現促進作用が確認された。これにより、カツオエラスチンや吸収ペプチドが靭帯細胞を活性化することにより、靭帯の状態改善の可能性が示唆された」ほかに「骨芽細胞様分化抑制作用も確認され、靭帯の骨化抑制の可能性も示唆された」

 この結果を受けて、膝関節への効果を検証するヒト試験に進んだ。その結果が、カツオ由来エラスチンペプチドに「膝関節の動きをサポートし、軽い違和感を和らげる機能」があるとするヘルスクレームの科学的根拠になっている。

 今後、靭帯の状態を改善する働きがヒト試験でも確認されれば、ヘルスクレームが拡充され、身体的フレイル・ロコモ対策に有用な機能性食品素材としての価値が高まる。研究の発展が期待されそうだ。

【石川太郎】

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