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アフィリエイト広告検討会を総括! (1)
景表法26条ありきの議論進む(後)

アフィリエイト広告の巧妙なからくり

 アフィリエイト広告の仕組みはこうだ。広告主は、EC運営事業者から提供されたツールを利用して広告を出稿する。ツールに組み込まれたプログラムはクリック数などに基づき、自動的に「良い広告」を評価する。この場合、良い広告というのは成果を指標としたパフォーマンス性の高い広告のことで、決してクリエイティブの高い広告のことではない。

 業界に詳しい関係者によれば、「酷いクリエイティブの広告を悪質な広告主が大量に出稿することができる仕組みになっている」という。従来型の広告であれば、まず広告主が広告の良し悪しを審査し、次に出稿先の媒体社が掲載の可否を判断する。そうすることで初めて媒体に掲載される。そしてその時点で出稿料は決定しているものである。通常だと気を使って審査を行っている広告主でも、ネットの場合、業務フローが異なるため、攻める広告に対して目が行き届きにくく、出稿後の監視パトロールに頼るしかないという弊害も生まれている。悪質な広告主は、代理店に丸投げするところも少なくない。

 出稿の際に入札が行われる。広告主は効果のある広告をできるだけ安く買いたい。他方、媒体社は広告枠を高く売りたい。そのために多少値付けを高くして入札が行われる。その際、プログラムの自動判定で効果が評価されやすい広告というのは過激なものになる。自然、過激な広告の方が入札に有利だし、プログラムも過激な方を広告表示しやすくなるため、消費者の目にも触れやすい。関係者はアフィリエイト広告のからくりについてそう明かす。

「極悪層」排除に向けて一色に

 ただし、注意しなければならないのは、アフィリエイトプログラム自体が悪いのではなく、それを悪用する一部の事業者が悪いという点だろう。
検討会の委員も務めた日本アフィリエイト・サービス協会(JASK)の加盟6社だけでも、約1万1,000の広告主、アフィリエイトメディアの登録数が600万サイトという膨大な数を占める。ただし、同協会によれば、加盟社に悪質な事業者はほぼないという。また、国民生活センターのPIO-NETに寄せられた5万件の相談のうち約半分が、苦情相談の多い上位10社で占められているとの報告もある。
 「極悪層を排除する」これが検討会に出席した事業者側委員を一貫して支配したトーンだ。しかし報告書では、「ごく一部の悪質な広告主への対応策のみを検討するだけでは不十分」との見解が示された。検討会は最初から、景表法26条に基づき「アフィリエイト広告の責任は広告主にある」との指針作りにあったと言っても言い過ぎではないだろう。

景表法第26条規定とは?

 法26条とは、13年に阪急・阪神ホテルズを発端とし、複数のホテル・レストランなどで発生したメニュー偽装表示問題を契機に定められた条文で、第5条「不当な表示の禁止」に違反する表示を未然に防ぐために事業者に必要な措置を講じることを求めている。措置については「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年11月14日内閣府告示第276号)によって、景表法の周知・啓発、法令順守の方針の明確化、表示に関する情報の確認など7項目について解説し、その事例なども紹介する。だが同指針は「事業者内部で完結する表示システムを念頭に置いたものになっている」(検討会報告書)ことから、有識者会議はアフィリエイト広告に特化した指針を策定することを消費者庁に求めた。消費者庁は今、夏ごろの完成をめどに新たな指針作りを進めている。

 実は、アフィリエイト広告の責任については、2011年に消費者庁が策定した「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」や、2016年策定の「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」にすでに言及されているのだ。そのいずれにおいても、アフィリエイト広告における不当表示の責任は「広告主」にあると明言している。検討会では結局、アフィリエイト広告の責任の所在を明確にさせることにとどめ、アフィリエイターやASPの責任は不問とし、事業者側が恐れた景品表示法の改正も見送った。
 
「広告」である旨を表示

 検討会の報告書にはほかにも、「アフィリエイト広告で『広告』である旨を表示する」、「関係事業者が主導する協議会を設置する」などの対策が書き込まれた。消費者庁が行ったアフィリエイト広告に関するアンケート調査において、商品を購入する際に「体験談・口コミ・レビューをインターネットで紹介する個人のブログや商品紹介の記事についてどう思うか」との質問に対して88%の消費者が参考になると回答したのに対し、それらが「企業からお金をもらって書かれたものである場合、どう思うか」との質問に対し、66%もの消費者が「参考にならない」と回答。これらの調査結果を受けて、「広告」と表示する必要性が問われることとなった。
 これに対して、事業者側に立つ委員は「効果なし」と正面切って反対している。かつて行われた迷惑メール規制でオプトアウト規制が導入された際、件名欄に未承諾広告※印を入れるという規制があり、悪質な事業者は、それさえ入れればいいということで、件名欄に未承諾広告※印を付けて広告の迷惑メールを大量に送信したという。「それだけの話なんですよ。広告っていう表示があるとか、報酬を頂いていますというのがあったとしても、それは見る人にとっては何の関係もない」と主張。悪質な事業者はむしろ積極的に「広告」であることを表示するだろうと指摘している。
 一方、消費者側の委員は、「表示することによりアフィリエイト広告を管理する広告主の責任が明確になる」、「実効性を持つ是正につながるかどうかはここにある」と高く評価している。検討会ではしばしば、各論に移ろうとすると座長が議論を遮る場面が見られたようである。結果、総論賛成で報告書がまとめられるかたちとなったが、それをいかに各論に落とし込み、実効性を持つ指針とするかが今後の課題となる。いずれにせよ、これらの措置は事業者が自主的に組織する協議会によって運用されることになる。
 報告書の最後には「今後の対応」として、景品表示法の改正は現時点では不要としながらも、アフィリエイターが広告主の指示や表示内容のレギュレーションを超えて問題のある表示を行うなどの問題行為が多数生じれば、景品表示法を改正し、供給主体・責任主体の位置づけの見直しを検討すると付け加えられた。

 消費者庁は3月16日、有識者会議「景品表示法検討会」を設置。16年改正法(18年施行)の5年後見直しに取り掛かった。


(了)

【田代 宏】

(冒頭の写真:第5回アフィリエイト広告検討会)

関連記事:景表法26条ありきの議論進む(前)

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