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【続】機能性表示食品「届出表示」のなぜ?(前)

<桑の葉由来イミノシュガーで13品目が公表>
消費者庁は8月17日、「桑の葉由来イミノシュガー」を機能性関与成分とする機能性表示食品の届出を公表した(届出番号:F975)。これで、同成分を機能性関与成分とした機能性表示食品の届出公表は、13商品となった。いずれの商品も、表示しようとする機能性は「本品には桑の葉由来イミノシュガーが含まれます。桑の葉由来イミノシュガーには食後血糖値の上昇を抑える機能があることが報告されています」とされている。

<桑由来モラノリンは成分名非表示に>
桑由来と言えば今年1月28日、「桑由来モラノリン」を機能性関与成分とした届出が公表された。公表されたのは、㈱小谷穀粉(高知市高須)の粉末桑茶『OSK(オーエスケー)粉末桑茶』(F740)。表示しようとする機能性には「本品は、糖の吸収を抑え、食後血糖値の上昇を緩やかにする機能があることが報告されている桑由来の成分が含まれています」とある。こちらは、表示に機能性関与成分名を使っていない。「桑葉モラノリン」は「1-デオキシノジリマイシン(DNJ)」の別名で、同成分は「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(医薬品リスト)に収載されている。ただし、クワの「葉・花・実(集合果)」は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に収載されている。こうした背景から、届出者の小谷穀粉では、あえて機能性関与成分名を表示しなかったのではないかと推察された。

実際、小谷穀粉の担当者は、表示に機能性関与成分名を使っていない理由について、「消費者庁から具体的なサジェスチョンがあったわけではなく、何度か差し戻される過程で、薬機法に抵触する可能性を鑑みて表示を変更したところ、公表に至った」と説明している。明確な判断基準は掴めておらず、消費者庁とのやり取りは長期にわたったという。

<薬機法抵触の可能性を回避>
同様のケースは、昨年12月10日に公表された、「γ-オリザノール」を機能性関与成分とする機能性表示食品の届出においても見られた。公表されたのはSBIアラプロモ㈱(東京都港区)の『発芽玄米の底力』(F583)。「本品は、血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能が報告されている成分を含みます」と表示されていた。SBIアラプロモの担当者は、「薬機法に抵触するおそれがあると判断したため、自社の判断で届出表示に“γ-オリザノールは”とは書かなかった。機能性関与成分名は、機能性表示食品の届出ガイドラインに従い掲載した」と説明していた。

この表現に対して関西福祉科学大学健康福祉学部・福祉栄養学科講師の竹田竜嗣博士(農学)は、「成分名のγ-オリザノールと組み合わせると、医薬品成分を想定しやすくなってしまう。また、医薬品メーカーからの反発や厚労省への情報提供も予想されるので、成分名を伏せたということではないか?」と話していた。

<「生鮮食品に元から含有される成分」は医薬品に該当せず>
そもそも、医薬品リストに収載されている成分が食品で機能性を表示できるようになるには、厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課(厚労省監麻課)が2019年3月に、「『医薬品の範囲に関する基準』」に関するQ&Aについて」(薬生監麻発0315第1号)という通知を出したことによる。通知によると、「『専ら医薬品リスト』に収載されているものであっても、それが野菜・果物等の生鮮食料品に元から含有される成分である場合は、当該成分を含有している生鮮食料品の医薬品該当性について、当該成分を含有することのみを理由として医薬品に該当するとは判断せず、食経験、製品の表示・広告、その製品の販売の際の演術等を踏まえ総合的に判断する。また、当該生鮮食料品を調理・加工して製造された食品についても、当該加工食品の製造工程において、当該成分の抽出、濃縮又は鈍化を目的とした加工をしておらず、かつ、食品由来でない当該成分を添加していない場合は、前段と同様の取り扱いとする」と従来の規制を緩和する方向性を示している。

消費者庁はこれを受け、「機能性表示食品に関する質疑応答集」を改正。「届け出る食品の機能性関与成分が、厚労省の『専ら医薬品リスト』に含まれる場合、消費者庁はどのように確認するのか」という質問を追加。これに対し、厚労省の通知で示された考え方を踏まえ、医薬品に該当しないと判断した場合は、機能性表示食品として届け出ることを妨げないと説明している。
以後、消費者庁は届出のあった機能性表示食品について、必要に応じて厚労省とのすり合わせを行っている。

<消費者庁「ガイドラインに従い届出を公表」>
こうした機能性表示食品の届出表示について、消費者庁食品表示企画課長補佐の久保陽子氏は、7月9日に開催された(一財) 医療経済研究・社会保険福祉協会の「『機能性表示』の新たな可能性への挑戦~食薬区分リスト再考を含めて~」をテーマにしたオンラインセミナーで、厚生労働省の生活衛生・食品安全の食薬区分検討会の委員を務める京都大学大学院薬学研究科の伊藤美千穂准教授が「もっぱら医薬品として使用実態があるものは医薬品」と説明したのに対し、「γ-オリザノールや桑由来モラノリンは、原材料たる食品中に含まれるもので、機能性表示食品として届出をすることは妨げてはいない。安全性と機能性に関しての必要な科学的根拠が整えられて届出されたということで公表に至ったもの。ただし表現法について、当該成分名は表現しないなどの工夫をしたことにより、医薬品とは誤認させないような工夫がなされている」と話している。

そこで記者は改めて久保氏に、イミノシュガーに関する届出情報は「表示しようとする機能性」に成分名が明記されているが、他の2成分については明記されていない理由について質問した。
久保氏は、「あくまでも届出であるため、届出表示に成分名を表示するかしないかは事業者の判断によるもの。また、薬機法に抵触するかどうかは厚労省の判断によるため、消費者庁としては、届出段階では、ほかの内容も含め、ガイドラインに沿ったかたちでの届出がなされていることから公表に至った。ただし、届出公表後、事後チェックなどにより何らかの問題があると判断された場合は、事業者に対応を求めることになる。そのため、事業者側も、しっかり情報収集し、届出されているのではないか」と話していた。また、個別の問いには答えられない、あくまで一般論としながらも、「消費者庁が表示の是非について口を挟むことはない」と話している。

回答から判断すると、イミノシュガーの表示に問題がないとすれば、他の2成分も「表示しようとする機能性」に成分名を表示しても問題なしとなる。他方、イミノシュガーに問題があるとすれば、疑義情報などに基づいて事後チェックが行われ、将来的に撤回もあり得るということにならないか――。

(つづく)

【藤田 勇一】

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【続】機能性表示食品「届出表示」のなぜ?(後)

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