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【特集】改正特商法~進化する詐欺行為に対抗する

 詐欺的定期通販を規制するための改正特定商取引法が6月16日に公布。送り付商法に対する規制は7月6日、一足先に施行された。事業者を取り巻く環境が厳しさを増すなか、(公社)日本通信販売協会(JADMA)専務理事の万場徹氏に話を聞いた。(敬称略)

<悪質な事業者は違反を繰り返す>

――(公社)日本通信販売協会(JADMA)ではどのように受け止めていますか?

万場 消費者の脆弱性につけ込む悪質商法への対策強化については、それが蔓延する前にいかに食い止めるかが重要です。行政や消費者団体、事業者団体それぞれの消費者相談の現場との連携が重要です。悪質商法の端緒は、消費者相談の現場でかなり多くの情報を得ているようですから、そうした情報を共有し、警戒情報をいち早く発信できるような体制を構築していきたいと考えます。

――改正特商法では、詐欺的定期商法対策も強化されます。

万場 おそらく、定期購入の規制が、実際に半年後1年後に施行されたとしたら、もうその頃には問題となる事業者も別のことを考えて新手の詐欺的行為をやっているのではないでしょうか。SNSを活用するとか、いろいろ進化すると思います。

<20条が76条を超えた>

――改正特商法の網の目も潜り抜けると?

万場 特商法の歴史はその繰り返しです。法律の条文が増えても、まっとうな事業者が守って、悪質な事業者は別の世界でまた新たな悪質な手口を見出します。そうして規制だけが残っていく。消費者保護と悪質業者排除という視点は大切ですが、罰則の強化、執行強化のための仕組みづくりについては慎重に検討すべきでしょう。特定商取引法は1976年に制定されてから改正を重ね、当初は20条程度だった条文がすでに76条を数えるまでになっています。それだけ増えていれば違法行為は減るはずではないですか?

――正直者が馬鹿を見る法律ですか?

万場 悪質業者は、法規制が強化されても法令遵守の意識に乏しく、法令違反を繰り返す一方です。他方、善良な事業者は法改正のたびに新たな規制遵守のための負担を強いられてきました。今行われているアフィリエイト広告検討会でも、過去の法改正の効果検証を行い、立法事実を明らかにし、合理的根拠に基づく政策立案をお願いしたいと申し上げています。

――最初の検討会でそのように提言されてましたね。

万場 改正特商法の検討会でも指摘しましたが、消費生活相談件数は架空請求問題による相談が多かった2004年をピークに減少傾向にあるものの、PIO-NETの18年度の相談件数は約99万件です。このことは、法改正の効果が表れていないという証左の1つではないでしょうか。

――それが現実ということですね。

万場 対症療法にすぎないということでしょうね。一時的には減るでしょうが、悪質商法の根絶には向かってないということです。本当に根本的に解決するにはどうしたらいいかを真剣に考えなければなりません。

<悪質業者の排除と賢い消費者の育成を>

――具体的には?

万場 悪質商法の芽が出たら、すぐにそれを情報共有して警戒情報をどんどん発するなど、だまされないようにしていくのが一番重要じゃないでしょうか。

――警戒情報を出す仕組みは?

万場 消費者が自分で自分の身を守るようにしないとだめなのではないかと思います。そうでないと、悪い事業者はいつまでもだましてきます。

――だまされないリテラシーが必要だと?

万場 善良な事業者を過剰な規制によって縛るのではなく、悪質業者の排除と、騙されない消費者を育てていくしか道はない。そのためには、第一に消費者教育ではないかと思います。幼小のころから、社会教育の一環として消費者教育を徹底することが、騙されない消費者を育てていく近道であるし、悪質商法をなくしていくことにつながるのではないでしょうか。消費者庁だけでなく、文部科学省、経産省、警察庁などの関連行政機関、消費者団体、業界団体と連携して徹底した消費者教育を行っていくことが、結果的には一番効果のある悪質商法対策なのではないかと思っています。

――今はまだそこまで行われていませんか?

万場 家庭科とか社会科教育の一環で時間が余ったときに有志が教えるぐらいのものですよ。だって、受験の問題にならないでしょう? 

――「詐欺的定期購入商法に対抗するにはどうすればいいと思うか」面白いですね。

万場 そういう問題が受験で出たら子どもも対策を覚えるかもしれません。でも今はない。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:田代 宏】

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