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「フレイル対策」テーマに学術セミナー~龍泉堂

入念な感染症対策下で実施

㈱龍泉堂(東京都豊島区)は16日、4回目となる学術セミナーをホテルメトロポリタン池袋で開催し、約60人の関係者が来場した。
新型コロナによる緊急事態宣言下、密な状態を避けるために入場者は定員の約3分の1に制限した。また、スタッフは2度のワクチン接種とPCR検査を実施するなど入念な感染症対策を講じた。事後のPCR検査も行った。
同社の塩島由晃社長は冒頭、「感染リスクを認識しながら、正しく恐れて、正しく予防に努めて、平常通りに生活していくことが大切であると感じている」とし、「お越しいただいた皆様を大切に、皆様だけに、誰よりも先に、弊社の学術情報を共有させていただきたい」と挨拶した。
この日はそもそも、同社の創業40周年記念パーティを予定していた日だったが、コロナ禍の影響で来年2月2日に延期せざるを得なかった。来場者には感謝を込めて、社名ロゴ入りのエコバッグが配られた。

中年期からフレイル対策を

国立長寿医療研究センター理事長の荒井秀典氏は、「超高齢社会におけるフレイル・ロコモ対策を考える」と題して講演。フレイルの概念、評価方法、対策などについて詳しく解説した。
コロナの影響で出生率が落ち込むなか、2050年前後には人口は1億人を割り込むのではないかと予測。2020年に28.7%だった高齢化率は、50年前後には40%近くに達し、75歳以上の高齢化率は25%に至るという。
「85歳以上が10%になることで、現在、約600万人いる85歳以上の人が20年もすると1,000万人を超えてくるのではないか」と試算した。
この計算でいくと、日本人の5人に2人が65歳以上の高齢者、4人に1人が75歳以上の高齢者、そして10人に1人が85歳以上の高齢者という人口構成になる。
荒井理事長は、「今まさに超高齢社会になるというときに備えて、社会としてしっかりと維持できるようにするためにはフレイル・ロコモ対策をきちんと、高齢期ではなく、できるだけ早い時期に、メタボと同じように中年期から対策を取るということが極めて重要」と課題を述べた。

<多病な患者が増加の一途>

同氏は、「最近の傾向として、さまざまな分野で患者の高齢化が進んでいる。消化器、循環器、呼吸器などいろいろな診療科で患者の高齢化が起こり、病態がどんどん複雑になっている」と、臨床医学の分野で診療を行っている自らの経験を語った。
35年前、大学病院や急性期病院に入院してくる患者は比較的若い人が多かったが、最近は70歳代が普通。80~90歳の患者も多いとし、院内の年齢層が様変わりをしている現状を紹介した。患者が高齢化するにつれ、老年症候群といわれる多くの病気を抱え、したがって多くの薬を服用するために「ポリファーマシー」という状態の患者が増えている。
「認知症、うつ、睡眠障害、骨折転倒などの老年症候群のほかにも、尿失禁、高血圧、糖尿病、がん、リュウマチなどの病気を抱えつつ、その治療をしながら非常に複雑な病態の患者を治療していかなければいけないというのが臨床現場における現状」とし、フレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドロームなどをしっかりと見ていくことが重要になっていると語った。

フレイルには年齢+αが関与

例えば、70~80代でも元気な老人は、コロナなどの感染症にかかることで入院し、一時的に生活機能が落ちてもやがて回復することができるが、内臓機能などがぜい弱化し予備能力が落ちてフレイルな状態にある老人は、感染症や手術などのイベントに遭遇したとき、入院中に転倒したり、肺炎を起こしたり、床ずれが起きたりしやすくなるという。
「以前だと、これは年齢のせいだからと諦めていたが、フレイルの概念がしっかりするにつれ、今では適切な介入を行うことで元の状態に戻すことができることも分かった」(同)とし、フレイルに陥るファクターが年齢だけではなく、さまざまな疾病や筋肉の衰え、口腔機能の衰え、運動不足、認知機能の低下、抑うつ状態など多様な原因が関係していると述べた。
また、生活習慣や栄養なども関係しているとし、その対策について説明した。

【田代 宏】

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