正式名称メチルサルフォニルメタン、略称MSM。米国のサプリメント市場で需要創出が先行した関節ケア素材が日本に導入されてから20年以上が経過した。その間に、グルコサミン塩酸塩などの複合成分として国内健康食品市場に浸透。だが、機能性表示食品市場への本格参戦には今のところ至っていない。米ベルケム社（旧バーグストロームニュートリション社）製MSMの原材料販売を手がけるクロレラ工業グループ㈱CICフロンティアの板波英一郎社長（＝写真）に話を聞いた。

──日本で「OptiMSM」の原材料販売を始めたのは2001年10月でした。

板波　見つけたのはその前年で、ラスベガスで行われた展示会。「サプライサイドウエスト」です。MSMを出展している企業がいくつもあって、そこで初めて知りました。関節向けの素材は面白そうだと思った。当時の米国ではグルコサミンやコンドロイチンが大いに盛り上がっていて、日本もその影響を受けそうな雰囲気でしたから。

　クロレラ以外にも新しい素材を取り扱いたいと考えていました。それで帰国してから取り扱うことを決めた。当時からMSMの製法はいくつかありましたが、蒸留法を採用しているバーグストローム（当時）のMSMを選びました。ただ、決めた後が大変だった。食薬区分のリストに入ってなかったんです。だから私たちでMSMの食経験や安全性などに関する資料を収集したり、厚労省と何度もやり取りしたりして、どうにか日本で販売できるようにしました（編集部注：MSMの食薬区分上の取り扱いは現在、非医薬。イオウの名称で収載されている。MSMは有機イオウ化合物の一種）。

──その後2005年にクロレラ工業の市場開発部門を分社独立させてCICフロンティアを立ち上げます。クロレラ工業時代も含めると販売期間は20年以上になりますね。健康食品市場における現在のMSMをポジションをどう見ていますか。

板波　販売開始当時は新規性もあってかなり注目を集めました。日本の関節市場の拡大もあって、グルコサミンやコンドロイチンに組み合わせる素材として販売量は順調に伸びていった。定着もしました。ドラッグストアで販売されている商品の中には、OptiMSMを使い続けてくれているものが複数あります。最近では用途も広がっていて、雑貨類にも利用されるようになった。ただ、グルコサミンやコンドロイチンのような存在感のある素材にはなっていないですし、非変性Ⅱ型コラーゲンやプロテオグリカンなどの競合素材が伸びています。しかしそうした中でもMSMは、関心が高まりこそすれ低下することはないと考えています。

──OptiMSMを使ったヒト試験を最近、国内で行ったそうですね。今後は機能性表示食品対応素材としても販売していく考えですか。

板波　そうしていきたいです。MSMの届出は今のところありませんから、ヘルスクレームを行えるようになることでチャンスが広がるはず。健常者の膝関節の違和感に対する効果を確かめる試験を行いました。OptiMSMは皮膚に対する有効性も報告されていますが、まずは膝関節から。ヘルスクレームをどのような内容にするかが悩みどころですが、引き続きグルコサミンやコンドロイチンと組み合わせるかたちで利用されていくとものと考えています。私自身、もともと機能性表示食品制度に対して懐疑的な見方をしていたのですが、お客様からのご要望が多いですし、商品数も増えている。しっかり対応していく必要があると考え直しました。

　今、届出の準備を進めているところです。おそらく来年から、SR（研究レビュー）を提供できるようになると思います。クロレラ工業の研究開発部が中心になって作業を進めていて、予定どおりに進行できています。機能性表示食品制度は事後監視ですから準備は慎重に進めています。最近の消費者庁の動きを見ると、より一層慎重になる必要がある。新製品の「マイジノール」（トウモロコシ若葉抽出物、睡眠・ストレスケア素材）もヘルスクレームを行えるようにしたいと考えていますが、やはり慎重に準備を進めているところです。MSMも含め、もう少し時間をいただきます。

──ありがとうございました。

【聞き手・文：石川太郎】

素材概要　製品名：OptiMSM／規格成分：MSM（メチルサルフォニルメタン）／性状：白色の粉末／製法：蒸留法（米国産）／摂取目安量：1.5～3.0g/日

＜COMPANY INFORMATION＞
所在地：東京都港区浜松町1-18-16住友浜松町ビル
TEL：03-3433-1311
URL：https://cicfrontier.co.jp/
事業内容：健康食品素材の輸出入

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