6・30措置命令、事業者の受け止め 消費者庁の判断「正しい」34%、「間違っている」21%
機能性表示食品をめぐる「6・30措置命令」をサプリメント・健康食品業界はどう受け止めたのか。㈱ウェルネスニュースグループが今年7月に行った事業者アンケート結果の一部を紹介する。有効回答数は107件。原材料から最終製品まで、幅広い業種の業界関係者から回答が寄せられた。
50%が「どちらとも言えない」
同措置命令は、行き過ぎの広告表示のみならず、届出表示(ヘルスクレーム)そのものが景品表示法違反(優良誤認)とされた前例のないもの。措置命令を行った消費者庁は、届出表示の科学的根拠が不十分だと判断した。そこでアンケートでは、その判断が正しいと思うかどうか尋ねる設問を用意。結果は、「正しいと思う」が34%(小数点以下四捨五入、以下同)、「間違っていると思う」が21%となり、正しいが間違っているを大幅に上回った。
ただ、最多は「正しいとも間違っているとも言えない」で50%。そう考える理由を自由記述形式で尋ねたところ、
「科学的根拠に不足があるのであれば、その点を指摘することは問題ない。しかし、今回の措置に関しては予見することは難しく、判断基準が明確ではなく、予見性のない中措置命令を実施したことは間違っている」(最終製品販売事業者)」
「ポジティブなデータとネガティブなデータが半々であったとしても、研究デザインなど、合理的な理由で説明がつくのであれば、機能性を否定するものではないと考えている」(別の最終製品販売事業者)
「(措置)命令の前に疑義照会や指導があっても良かったのではないか」(原材料事業者)
「(科学的根拠の)『解釈』についての措置命令なので、色んな物の見方があると思う」(受託製造事業者)──など、さまざまな意見が寄せられた。
「実質的な審査」の受け止めも多く
今回の措置命令をめぐっては、消費者庁のダブルスタンダードを指摘する声も業界から聞かれる。あくまでも形式的なものであるとはいえ、届出表示の科学的根拠など届出資料の中身を確認した上で届出番号を付与しているためだ。無論、同庁は「科学的根拠等の事前審査は行いません」と説明しているが、機能性表示食品の届出を行う、あるいは届出に関わる事業者はその点、どう捉えているのか。アンケートでは、実際に事前審査は行われていないと捉えているかどうかも尋ねた。
その結果、「審査はしていないと思う」を選んだ事業者は18%であったのに対し、「実質的な審査を行っていると思う」は34%。また、「経験上、実質的な審査を行っているとしか言えない」を選んだ事業者は23%となり、「実質的な審査」が行われていると受け止めている事業者が少なくないことを示唆する結果となった。一方、複数回答を可としたこの設問で最も多く回答を集めた選択肢は、「担当者によってばらつきがある」だった(37%)。届出資料を形式確認する同庁の担当者によって不備指摘事項が異なる、と捉えている事業者が多いことをうかがわせる。
今後も届出を行うかどうか
このほか、機能性表示食品の届出を今後も行うかどうかを尋ねた。結果は、「今後も変わらず届出を行う」が80%となり、「届出はもう行わない」を選んだ事業者は皆無だった。
今後も届出と行うと回答した事業者からは、その理由として、
「健康食品の法整備が進まない限り、本制度を利用する以外の選択肢が少ない」(受託製造事業者)
「ヘルスクレームを示せるメリットは大きく、市場形成に役立っている」(別の受託製造事業者)
「(機能性を)表示できないデメリットが大きい」(原材料事業者)
「商品戦略上、必要だから」(最終製品販売事業者)
「この制度を残さなければ、エビデンスに沿わないもっと粗悪な商品が出回ってしまう」(別の原材料事業者)
「科学的根拠のある食品成分の機能を、いかに正確でかつ消費者に分かりやすく表示するかという大きなテーマがある。これらに頭を使い、チャレンジしていくことが、日本の経済活性と国民の健康に寄与していくのだという、夢を持って取り組みたい」(コンサルタント)──などといった声があがった。
今回の事業者アンケートは全19問で構成された。アンケート結果のより詳細なレポートは、来月発刊する「ウェルネスマンスリーレポート」10月号(第64号)で行う。また、アンケート結果の全体を取りまとめた資料を後日、アンケートに回答を寄せていただいた事業者の全て、ならびにWNG会員に無料配布する。
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