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コロナワクチン訴訟、判決文を読む 公益目的認めるも名誉毀損成立、原告の逸失利益は認めず

 Meiji Seikaファルマ㈱(東京都中央区、永里敏秋社長)が原口一博元衆議院議員を相手取り、名誉毀損に基づく損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が220万円の支払いを命じた判決の判断理由が明らかになった。
 編集部が4日、東京地裁で判決文を閲覧したところ、裁判所は、原口氏の発言について公共性や公益目的を認めながらも、一部の発言については重要部分の真実性や真実と信じる相当の理由が認められないとして、名誉毀損の成立を認めていた。

「七三一部隊」の発言、名誉毀損成立

 東京地裁は10月29日、原口氏に対し220万円と、2024年10月4日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払いを命じた。原告のその他の請求は棄却し、訴訟費用は5分の1を原口氏、5分の4をMeiji Seikaファルマの負担とした。

 判決では、「七三一部隊」、「審査過程の不公正」、「生物兵器」、「人体実験」に関する4類型の発言について、それぞれ名誉毀損の成否と、違法性・責任を否定する事情の有無を検討。さらに、損害および因果関係を加えた計9つの争点に沿って判断が示された。

 裁判所は、原口氏の発言がMeiji Seikaファルマを指したものと認められるかどうか、つまり「同定可能性」の有無を検討。また、発言が事実を摘示したものか、意見・論評に当たるものかを判断した上で、同社の社会的評価を低下させるものかどうかを検討した。さらに、社会的評価の低下が認められる発言については、違法性や責任を否定する事情があるかどうかも検討し、名誉毀損の成否を判断した。

 例えば、「七三一部隊」に関する発言については、原告との同定可能性があると判断。発言が行われた動画の前後のやり取りや画面上の表示なども踏まえ、原告の社会的評価を低下させると認め、最終的に名誉毀損の成立を認めた。

 これに対し、「審査過程の不公正」に関する発言では、原告を指したものとは認められない発言や、原告の社会的評価を低下させるものとはいえない発言があり、名誉毀損の成立を否定した。

「生物兵器」、発言ごとに判断分かれる

 「生物兵器」に関する発言についても、裁判所の判断は分かれた。
 原口氏が「生物兵器である可能性が極めて高いと思います」と述べた発言については、原告との同定可能性が認められないとして、名誉毀損の成立を否定した。
 また、別の「生物兵器」に関する発言では、原告の社会的評価を低下させると認めながらも、違法性がないと判断したものがあった。

 反面、別の発言については違法性や責任を否定する事情が認められず、名誉毀損が成立すると判断した。
 このように、裁判所は「生物兵器」という表現を一律に評価するのではなく、個々の発言内容や文脈、原告との関連性などを検討していた。

公益目的認めるも真実性は否定

 「人体実験」に関する発言について、判決は、原口氏が当時、衆議院議員として日本の新型コロナワクチン政策を批判する文脈で発言していたことから、公共の利害に関する事実に係り、目的が専ら公益を図ることにあったと認めた。

 しかし裁判所は、原口氏の「実験用の猿が足りないからといって、猿の代わりに人間にレプリコンワクチンの治験をしょうか」(ママ)、「日本人が今、実験台にさせられようとしているのではないでしょうか?」などの発言について、Meiji Seikaファルマが日本人を実験台として利用する目的で製剤を製造販売していたことを裏付ける証拠はないと判断。発言の重要部分について真実性を認めなかった。

 また、原口氏が海外の情報や政府関係者から得た情報などを根拠としていたとの主張についても、客観的な裏付けがなく、推測や疑惑にとどまると判断した。製剤の安全性や薬事承認過程に関する指摘を踏まえても、同社が日本人を実験台として利用しようとしていたと認めるには足りず、原口氏が発言内容を真実と信じる相当の理由も認められないとした。
 このため裁判所は、発言の公共性や公益目的を認めながらも、違法性や責任を否定する事情はないとして、名誉毀損の成立を認めた。

売上逸失利益、因果関係など認めず

 損害額について、裁判所は原告の主張を大幅に退けた。
 原告は、製剤に関する苦情などの電話への対応費用や、売上に係る逸失利益、社会的評価を回復するための広告費用などを損害として主張していた。
 これに対し、裁判所は、苦情電話などが原口氏の名誉毀損行為のみによって生じたとは認められないと判断。電話対応に係る人件費等は認めなかった。

 売上の逸失利益についても、見込み利益の算定根拠の合理性を裏付ける証拠が見当たらないことなどから、損害として認めなかった。広告費用についても、名誉毀損行為との因果関係を認めるには足りないと判断した。

 最終的に、無形損害200万円と弁護士費用20万円の計220万円を認めた。

政治的論評の自由と名誉毀損

 原口氏は判決翌日の10月30日、自身のYouTube番組で、国会議員として国民の命と健康を守る目的で発言してきたと説明。公益を図る目的が判決でも認められたとの認識を示していた。今回の判決文閲覧によって、少なくとも「人体実験」に関する一部発言について、裁判所が公益目的を認めていたことが確認できた。
 ただし、公益目的が認められたことによって、すべての発言について名誉毀損の責任が否定されたわけではない。

 判決は、政治的・公益的な言論であっても、発言の対象や内容、真実性、真実と信じる相当の理由などを個別に検討する必要があることを示したものといえる。
 
※本記事は、11月4日に編集部が東京地裁で閲覧した判決文の記録に基づく。閲覧時間の制約により、判決理由の全てを記録したものではない。

【田代 宏】

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