物価1%台、食料高なお続く 塩むすび150円、サンマ1匹1,000円も
物価上昇は本当に落ち着いてきたのか――。
総務省が21日に公表した7月の全国消費者物価指数(2025年=100)は、総合指数が102.3となり、前年同月比1.9%上昇した。生鮮食品を除く総合指数は102.1で同1.8%上昇。上昇率は前月から0.2ポイント拡大し、2カ月連続で拡大した。
数字だけを見れば、物価上昇率は1%台である。しかし、食品を中心に生活に身近な商品の価格を見ると、消費者が実感する物価の姿は少し違って見える。
「生鮮食品を除く食料」は前年同月比3.0%上昇した。緑茶は29.2%、ポテトチップスは13.3%、ハンバーガーは13.2%、輸入牛肉は11.0%、からあげは8.3%それぞれ上昇。これに対し、米類は11.6%下落した。
米価下落でも塩むすび150円
米類の価格が前年を下回る中でも、米を使った身近な商品の価格が一斉に下がっているわけではない。
大手コンビニの最もシンプルなおにぎりである「塩むすび」、「塩にぎり」を見ると、ファミリーマートの「塩おむすび」は139円(税込150円)、ローソンの「プレミアムおにぎり 塩にぎり」は149円となっている。セブン‐イレブンの商品についても、民間の比較記事では「塩むすび」が145.80円で販売されていることが確認されている。
具も海苔も使わない塩むすびでも、今や150円前後となっている。
東京都が25日に公表した7月中旬速報でも、米価の下落と食品全体の値上がりが同時に進んでいる状況がうかがえる。東京都区部の消費者物価総合指数は113.2となり、前年同月比2.0%上昇。10大費目のうち「食料」は4.0%上昇し、総合指数を上回った。
都が生活に密着した商品として調査している加工食品・畜産品では、輸入牛肉が前年同月比9.7%、国産豚バラ肉が7.4%、納豆が6.8%、豆腐が6.4%、国産牛肉が5.1%それぞれ上昇した。他方、うるち米(コシヒカリ)は9.4%、コシヒカリ以外は7.9%それぞれ下落した。
企業物価は7.2%上昇
消費者に商品が届く前の企業間取引では、さらに高い物価上昇が続いている。
日本銀行が13日に公表した7月の企業物価指数(2020年平均=100、速報)によると、国内企業物価指数は135.8となり、前年同月比7.2%上昇した。前月比でも0.1%上昇した。夏季電力料金調整後では前月比横ばいだった。
食品関連では、飲食料品が129.5となり、前年同月比4.0%、前月比0.5%それぞれ上昇した。このほか、パルプ・紙・同製品は前年同月比6.0%、プラスチック製品は9.1%それぞれ上昇した。
これに対し、農林水産物は前年同月比では3.5%上昇したものの、前月比では0.8%下落した。日銀は前月比を押し下げた主な品目として、精米、鶏卵、鶏肉を挙げている。
米を含む農林水産物の価格が足元で下落しても、企業間で取引される飲食料品全体の価格は前年を4.0%上回っている。店頭で販売される加工・調理食品の価格を考える上では、原料となる農産物だけでなく、その周辺で動くさまざまな企業物価にも目を向ける必要がある。
サンマ1匹1,000円も
生鮮食品でも高値が目立つ。
東京都の調査では、いかが前年同月比21.2%、キャベツが15.7%、まぐろが15.3%、じゃがいもが14.2%、だいこんが13.0%それぞれ上昇した。
秋の味覚であるサンマにも高値が付いている。テレビ静岡は25日、店頭でサンマが「1匹1,000円」で販売されるケースを報道した。時事通信も7月、豊洲市場で初荷のサンマが過去最高値を付けたと報じている。
実際、記者が利用する近所のスーパーでも昨日、やせ細ったサンマが800円で売られているのを目撃した。
全国の消費者物価指数では「生鮮食品を除く総合」が物価動向を見る代表的な指標として使われるが、家計が実際に購入する商品には当然、生鮮食品も含まれる。天候や漁獲量などによって価格が大きく動く商品ほど、統計上の基調的な物価動向と日々の買い物で感じる負担との間に差が生じることになる。
エネルギー、政策効果も物価を左右
もう1つ、物価を見る上で注意したいのがエネルギー価格だ。
電気・ガス料金やガソリンなどのエネルギー価格には、政府による負担軽減策が講じられてきた。こうした施策には国費が投入されており、消費者が実際に支払う価格を抑える方向に作用する。
そのため、消費者物価指数に表れるエネルギー価格は、原油や天然ガスなどの市場価格だけで決まるものではない。補助制度の開始、縮小、終了によっても前年同月比や前月比は動く。
7月は、電気代やガス代が前月に比べて上昇したことも、生鮮食品を除く総合指数の上昇率が前月から拡大した要因となった。
企業間取引でもエネルギー関連の価格は上昇している。日銀の企業物価指数では、電力・都市ガス・水道が前月比3.7%、前年同月比6.3%上昇した。
つまり、総合指数や生鮮食品を除く総合指数が1%台に収まっているからといって、全ての商品・サービスの値上がりが1%台に落ち着いていることを意味するわけではない。
「上昇率鈍化」と「値下げ」は別
物価を見る際にもう1つ注意が必要なのは、「物価上昇率が低下すること」と「価格が下がること」は同じではない点だ。
前年同月比の上昇率が3%から2%、さらに1%台へ低下しても、指数そのものが前年を上回っていれば、価格水準は上昇している。これまでの値上げで高くなった価格が元に戻ることを意味しない。
事実、東京都区部では食料が前年同月比4.0%上昇し、全国でも生鮮食品を除く食料は3.0%上昇している。その川上に当たる企業間取引でも、国内企業物価指数は7.2%、飲食料品は4.0%それぞれ上昇している。
米類のように前年を下回り始めた品目がある反面、肉類や加工食品、生鮮食品などでは高い上昇率を示す商品が残る。
塩むすびが150円前後となり、サンマに1匹1,000円の値が付く。そうした店頭の光景と「消費者物価1%台」は矛盾するものではない。
消費者物価指数は、多数の商品・サービスの価格変動を一定のウエートで総合した平均値である。個々の家計が何をどれだけ購入するかによって、実際に感じる負担は異なる。
消費者物価の上昇率が1%台になったという数字だけで「物価高が収まった」と判断するのは早い。食品をはじめ生活に欠かせない商品・サービスの価格がどう動いているのか。消費者物価だけでなく、企業物価や個々の商品の店頭価格まで合わせて見る必要がありそうだ。
【田代 宏】
<参考資料>
総務省統計局「消費者物価指数」
価格動向の概要《令和8年7月(中旬速報)
日本銀行調査統計局「企業物価指数2026年7月速報」
(冒頭の画像はイメージ)

