FOPNL普及へ課題議論 消費者・事業者・行政が意見交換
(一社)消費者市民社会をつくる会(ASCON)と食品表示活用研究会は25日、「包装前面栄養表示(FOPNL)を考える」をテーマとした意見交換会を都内で開催した。消費者庁、食品事業者、消費者側からそれぞれ話題提供を行い、今年2月にガイドラインが公表された日本版包装前面栄養表示の普及に向けた課題や、事業者が導入する際の実務上の問題などについて意見を交わした。
意見交換会はASCONの「talk&talk in SUMMER 2026」の一環で、食品表示活用研究会とのコラボ企画として開催した。オンラインによる参加も募った。
冒頭、ASCONの阿南久代表理事は、日本でも包装前面で栄養成分を分かりやすく確認できる仕組みを以前から望んでいたと説明。「できない理由を述べるのではなく、どうしたらできるのかを議論したい」と呼び掛けた。
消費者庁、義務化は予定せず
行政の立場から消費者庁食品表示課の松山課長補佐が、日本版FOPNLのガイドラインや検討経緯について説明した。
消費者庁は2023年度から日本版FOPNLについて検討を進め、今年2月にガイドラインを公表した。食品の容器包装の前面など消費者が見つけやすい場所に、1食分当たりの熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量と、それぞれが栄養素等表示基準値に占める割合を表示する。
松山氏は、ガイドラインは食品表示基準には位置付けない任意の仕組みであり、現時点で義務化する予定はないと説明した。日本人の食塩摂取量が多いことを踏まえ、食塩相当量については二重線で囲んで強調する。
2025年度の消費者調査では、栄養成分表示を活用していると回答した人は56%だった。栄養素等表示基準値に占める割合について知っている人は33.1%にとどまったのに対し、食品を選ぶ際にその割合を参考にしたいと回答した人は61.7%だった。
消費者庁では現在、食品関連事業者向けのハンドブックを作成しているほか、消費者向けに動画、リーフレット、ポスターなどを用いた普及啓発を進める方針を示した。
事業者は「様子見」の段階
事業者の立場からは、食品表示活用研究会メンバーがFOPNL導入に伴う実務上の課題を説明した。
説明によると、多くの食品事業者が現時点ではFOPNLへの対応を「様子見」しているとの認識が示された。全商品に一斉に導入するのではなく、商品を優先順位に応じて分類して対応する方法を提案した。
例えば、1食分が明確な弁当、減塩などを訴求する商品、流通事業者から対応を求められるプライベートブランド(PB)商品などは優先的な導入を検討できるとした。
これに対し、調味料やたれなど1食分の設定が難しい商品、小型の商品、業務用商品などは導入のハードルが高いと指摘。特に「1食分」をどのように設定するかが実務上の大きな課題であり、企業内だけでなく業界団体によるルール作りも必要になるとの考えを示した。
パッケージ変更にはコストが発生するため、新商品の発売や商品リニューアルに合わせてFOPNLを導入する方法が現実的としたほか、マーケティング、営業、消費者相談部門などとの社内調整や、ウェブサイトに掲載する栄養成分値との整合性確保なども課題に挙げた。
また、FOPNLは食品の「健康ランキング」ではなく、1日の摂取目安に対して、その食品からどの程度の栄養成分を摂取することになるのかを示す情報であるとの認識を、社内でも共有する必要があるとした。
消費者自身の理解も課題
消費者の立場からは、(一社)FOOD COMMUNICATION COMPASSの森田氏が、栄養成分表示とFOPNLを生活の中でどのように活用するかについて説明した。
現在の栄養成分表示について、100g当たり、1個当たりなど商品によって表示単位が異なることや、容器包装の裏面にあり気付きにくいこと、文字が小さいことなどを課題に挙げた。
FOPNLによって、複数の食品を組み合わせた場合でも、それぞれの栄養成分が1日の摂取目安のどの程度を占めるのかを視覚的に把握しやすくなると説明。特に食塩相当量が突出している場合などに気付きやすくなるとした。
ただ、FOPNLで用いる栄養素等表示基準値は2,200kcalを基準としており、実際に必要なエネルギー量には年齢や性別、活動量などによって個人差がある。このため、消費者自身が自分に必要なエネルギー量を把握することも重要とした。
森田氏は、まず1食分が明確な弁当などからFOPNLを導入し、表示された商品が増えることで消費者が栄養について考えるきっかけにつなげることを提案した。
アレルギーの前面表示も提案
会合では、食物アレルギー情報を容器包装の前面に表示する「アレルゲンマーク」の提案も行われた。現行のアレルギー表示について、容器包装の裏面に小さな文字で記載され、対象となる品目を探しにくいことなどを課題として指摘した。
提案では、アレルゲンを農産物、水産物、畜産物の3つに分類し、ピクトグラムと色を組み合わせて食品への含有状況などを前面から確認できる仕組みを紹介。裏面についても、前面表示と連動した含有品目表を設けることで、消費者が必要な情報を探しやすくする考えを示した。
話題提供後は、会場とオンラインの参加者がグループに分かれ、栄養成分表示の日常的な活用、自身の栄養摂取量の目安、FOPNLの普及方法、事業者が実施する際の課題、食物アレルギー表示などについて意見を交わした。
【田代 宏】
(冒頭の画像はイメージ)

