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LEAP・JCA、研究費巡り対立 1億290万円の使途巡り原告が釈明要求

 LEAPホールディングス㈱(千葉県流山市、岡村徳久社長)が、(一社)日本化粧品協会(JCA)と引地功一氏を相手取り、1億1,319万円の損害賠償などを求めている訴訟(令和8年(ワ)第6169号)で、双方の主張が対立している。東京地方裁判所で6月18日に第1回、8月6日に第2回弁論準備手続が行われた。

東大贈収賄事件と交差する民事訴訟

 同事件は、東京大学大学院医学系研究科に設置された「臨床カンナビノイド学」社会連携講座を巡る贈収賄事件とは別の民事訴訟だが、両者は無関係ではない。原告側は訴状で、引地氏が同講座の「創設者」や「会長」などと名乗り、東京大学大学院医学系研究科医学部特任研究員の肩書を有していたことなどを挙げ、その立場を背景に大麻草の品種開発・改良に関する説明が行われたと主張している。

 ウェルネスデイリーニュースが裁判記録を閲覧したところ、原告側は、医療用などのカンナビノイド原料となる大麻草の品種開発・改良研究を巡り、引地氏から虚偽の説明を受け、JCAに合計1億290万円を支払ったと主張。これに対しJCA・引地氏側は詐欺行為を全面的に否定し、東京大学の教員や外部専門家を交えて研究の準備を進めていたと反論している。

 なお、訴状では引地氏についてJCAの代表理事を務める人物としているが、JCA側は準備書面(1)で「現在の代表理事は被告引地ではない」としている。編集部がJCAの登記簿謄本を取得するため登記情報を確認したところ、8月14日現在は「登記手続中」となっており、変更内容は確認できなかった。引地氏は今年4月23日に東京地裁で開かれた贈賄事件の公判で、今後は母親が運営する社会福祉法人で就労する予定で、JCAの代表理事も辞任すると述べていた。

「研究する意思なかった」とLEAP社

 訴状によると、原告のLEAP側は、引地氏が医療用などのカンナビノイド栽培事業に関心を持っていた岡村社長に対し、東京大学に設置された「臨床カンナビノイド学社会連携講座」で大麻草の品種開発・改良研究を行うことができる旨を説明したとしている。

 LEAPとJCAはその後、受託研究契約を締結。契約書では、「東京大学大学院医学系研究科臨床カンナビノイド学社会連携講座にて本研究を行う」とし、研究目的として、高含有量・中含有量などのCBD含有量に応じた大麻草の品種開発や、カンナビノイド含有量に関する研究などを掲げていた。

 LEAP側は、引地氏には当初から品種開発・改良研究を実施する意思がなく、研究資金に充てるかのような虚偽の説明によって金銭を支払わせたと主張。不法行為などに基づき、支払額1億290万円と弁護士費用を合わせた1億1,319万円などの支払いを求めている。

 同社はこの受託研究契約を巡って2025年5月20日に警視庁へ刑事告訴し、告訴は受理されたものの、その後、不起訴処分となっている。LEAP側代理人の山口幹生弁護士は編集部の取材に対し、現時点で検察審査会への申立ては行っていないと説明。民事訴訟の結果を踏まえ、今後、申立てを検討する考えを明らかにしている。

JCA「具体的な研究準備進めた」

 これに対しJCA・引地氏側は、6月17日付の準備書面(1)で詐欺行為を否定した。

 JCA側は、品種改良の成功を確約したものではなく、あくまで研究として実施することを説明したと主張。LEAPについても、国外で大麻草栽培事業に投資していた事業者であり、研究開発に伴うリスクを認識した上で、自らの経営判断によって投資したとしている。

 契約についても、東大とLEAPとの直接契約ではなく、JCAとLEAPとの二者間契約であることを岡村社長は理解していたと反論した。

 研究の準備状況については、東大の教員らが臨床カンナビノイド学講座の運営推進会議に参加し、大麻草の品種改良について協議していたと説明。筑波大学の専門家との面談、研究施設や設備の準備、大麻研究者免許の申請準備などを進めていたとして、「当初から研究を実施する意思も能力もなかった」とするLEAP側の主張を否定している。

 研究が実現しなかった原因については、東大の担当教員らとの間で生じた別の問題によってプロジェクトが頓挫したとの主張を展開している。
 JCAは7月27日更新のウェブサイト上の見解でも、LEAPとの受託研究契約を巡る詐欺疑惑を「全くの事実無根」と否定し、研究計画書や品種開発センターの施工計画書などが存在するとしていた。

LEAP社、研究準備の実態に反論

 LEAP側は、第2回弁論準備手続で提出した第1準備書面で、こうしたJCA側の主張に反論した。

 原告側によると、JCAと東大との社会連携講座等設置契約では、大麻草の品種開発は研究目的に追加されておらず、東大の研究者らには、JCAがLEAPとの間で1億円を超える受託研究契約を締結したことも知らされていなかったという。

 JCA側が研究準備の根拠として挙げた外部専門家との協議についても、公開文献を基に品種候補を絞り込む作業などにとどまっていたと指摘。研究施設についても設備工事は正式な発注や着工に至らず、品種開発に必要となる大麻草研究栽培者免許についても申請されていなかったと主張した。
 なお、大麻研究者免許と大麻草研究栽培者免許は異なる。吉崎元特任准教授は編集部のこれまでの取材に対し、大麻研究者免許はその後取得したものの、大麻草研究栽培者免許については、栽培施設が整わず申請できないまま、取得には至らなかったと説明している。

 原告側は、これらの事情から、被告側が主張する準備行為をもって、受託研究契約に基づく品種開発研究を実施する意思があったとはいえないとしている。

研究費1億290万円、使途が争点に

 裁判記録に提出された受託研究契約書によると、研究委託費は総額1億1,910万円(税込)。別紙には、研究計画立案、既存品種の選定・調達、設備整備、研究室賃貸、水道光熱費、栽培研究者人件費、栽培キット・消耗品、種子の遺伝子検査、試作品種のカンナビノイド含有量・成分分析など、研究に要する費用が項目ごとに記載されていた。

 JCAがLEAPに発行した請求書などによると、2023年12月~24年3月までに、研究計画立案200万円、既存品種の選定・調達1,000万円、設備整備2,300万円、研究室賃貸1,800万円などが順次請求された。LEAPからJCAへの支払額は合計1億290万円に上る。

 JCA側は準備書面(1)で、LEAPからの支払いは契約書に定めた期日とは若干異なるものの、おおむね契約に沿ったものだったと説明。資金についても、研究の準備・維持費などに充てられていたと主張している。

 これに対しLEAP側は第1準備書面で、1億290万円について、JCA側が実際にいつ、いくらを、誰に対し、何の目的で支出したのかを明らかにするよう求めた。支出を裏付ける資料や現在の残額についても釈明を求めており、研究費の具体的な使途が新たな争点として浮上している。

求釈明(LEAPホールディングスの準備書面より)
本件詐欺行為に係る1億290万円は、被告協会名義の銀行口座(株式会社りそな銀行赤坂支店に開設された普通預金口座(口座番号1824539)に振込入金されたものであるところ、その資金使途は、被告引地の詐欺の犯意を認定するうえで、重要な事実であるので、被告らに対し、以下の事項について、釈明を促すよう求める。

・資金使途の各年月日および各金額
・使途の明細(各使途先及び具体的な用途等)及びそれらを裏透ける資料
・残金の有無及び金額

吉崎氏の陳述書も書証に

 今回の訴訟では、東大の臨床カンナビノイド学社会連携講座で講座長を務めていた吉崎歩元特任准教授の2025年2月27日付陳述書も、LEAP側から書証として提出されている。
 LEAP側は同陳述書などを引用し、東大側がLEAPとJCAとの受託研究契約を認識していたか、品種開発が社会連携講座の研究として位置付けられていたか、研究計画や施設整備がどこまで進んでいたかなどについて主張を展開している。

 同講座を巡っては、JCAと東大との間でも別の民事訴訟が進行しており、本件でも双方の主張の中に東大の教員や同講座を巡る事実関係がたびたび登場している。
 今後、1億290万円の具体的な使途や研究の実施体制、東大との関係を巡って、被告側がどのような主張を行うかが注目される。

 次回の第3回弁論準備手続は9月25日午前11時に予定されている。

【田代 宏】

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