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更年期ケアを軸に健康事業拡大 キッコーマンの研究資産活用し海外展開も視野

 キッコーマングループの中で健康・栄養分野を担うキッコーマンニュートリケア・ジャパン。大豆イソフラボンやブドウ種子由来成分の研究を基盤に、更年期ケアを中心としたサプリメントや治療食を展開してきた。同社代表取締役社長の澤村厚之氏は、グループの研究資源を活用した商品開発とともに、女性の健康課題への対応や海外市場への展開を今後の成長軸に据える考えを語る。一方で、情報発信や組織体制には課題も残る。食と健康を一体で捉える同社の戦略と、その将来像について聞いた。(以下、敬称略)

グループ内で担う健康・栄養分野の役割

――キッコーマンニュートリケア・ジャパンの事業について教えてください。

澤村 当社はキッコーマングループの中で、健康食品やサプリメントなどの販売、通信販売サイトの運営などを主な事業とする。キッコーマンというと、しょうゆを中心とした食品の製造・販売事業のイメージが強いと思いますが、その中で健康や栄養の分野を担当しているのが当社です。ただ、現状ではまだグループの中で十分な存在感を示せている段階とは言えません。今後は事業を拡大しながら、事業や存在意義をより明確にしていきたいと考えています。

――事業の出発点はどこにあるのでしょうか。

澤村 当社の事業の起点は、1990年代から続いている大豆イソフラボンの研究です。キッコーマンはしょうゆメーカーですので、大豆の研究は長く続けてきました。その中で、大豆に含まれるイソフラボンが更年期の症状にどのような影響を与えるのかという研究を進めてきました。その中で、大豆に含まれるイソフラボンが更年期の症状にどのような影響を与えるのかという研究を進めてきました。そうした研究成果をもとに商品開発が進められてきたことが、現在の事業の基盤になっています。

――研究の成果が商品につながっているわけですね。

澤村 はい。もう1つの流れとして、グループのマンズワイン事業があります。ワインを造る過程ではブドウの種子が出ますが、ブドウ種子に着目し、そこから抽出されたプロアントシアニジンが強力な抗酸化作用を持つことが明らかになりました。この成分もまた、更年期症状の改善や骨粗しょう症予防、さらには美容効果との関連が研究によって示されています。大豆イソフラボンの研究と、ブドウ種子の研究、この2つが現在の事業の柱になっています。

更年期ケア中心に商品展開

――揺らぎ年代の女性のためのサプリメントを販売されていますね。

澤村 主力商品は大豆イソフラボンを主成分とした『基本のサプリ』です。また、ブドウ種子由来のプロアントシアニジンを主成分とした『ブドウの恵み』やクランベリー抽出物を配合した栄養機能食品『クランベリーURタブレット』なども展開しています。
その他、ビオチンと亜鉛を配合した栄養機能食品『はりつや美人』やトマト果皮ポリフェノールであるナリンゲニンカルコンを成分とした『トマトの力』といった商品もあります。

――『トマトの力』という商品はどのようなものですか。

澤村 これはデルモンテの加工トマトの研究の中で見つかった成分を活用した商品です。キッコーマンは1960年代よりデルモンテのトマトケチャップやトマトジュースを製造・販売しています。1990年にはデルモンテブランドの加工商品のアジア・オセアニア地域での商標権・販売権を取得しており、その流れの中でトマトに関する研究も行っています。そうした研究成果の1つとして生まれた商品です。

――グループの研究資源が活用されているわけですね。

澤村 そうですね。キッコーマングループの中には、しょうゆ、大豆、ワイン、トマトなどさまざまな研究領域があります。そうした研究の成果を応用しているという側面があります。

女性社会進出と更年期課題

――女性の健康というテーマについてはどのように考えていますか。

澤村 女性の社会進出が進む中で、管理職になる年代と更年期の年代が重なるケースが増えてきています。仕事の責任が大きくなる時期に体調の変化が起こるという状況です。そうした背景から、更年期ケアへの関心は今後さらに高まっていくのではないかと考えています。

――イソフラボンはその分野で重要な役割を持っているのですね。

澤村 イソフラボンはエストロゲン様作用を補う働きがあるとされており、更年期の症状をサポートする成分として知られています。豆乳などと併用することも1つの方法として提案しています。

――クランベリーのシリーズも長い歴史があると聞きました。

澤村 はい。クランベリーURシリーズは30年近い歴史があります。医療や介護の現場でも関心が高い商品です。長年継続して利用されているケースもあります。

――医療や介護の現場との関係もあるのですね。

澤村 そうですね。尿路感染症などは高齢者施設などでも課題になっていますので、そうした分野でのニーズもあります。

医療・介護領域にも展開、女性主体の働き方とは

――治療食の分野にも取り組んでいるそうですね。

澤村 はい。当社では腎臓病患者向けの治療食として低塩分・低リン・低カリウム対応の「だしわりしょうゆシリーズ」なども展開しています。食事制限が必要な方でも食事を楽しめるようにすることを目的とした商品です。しょうゆメーカーとしての技術を生かしながら、健康や栄養に関わる商品を開発しています。

――会社の組織についても教えてください。

澤村 当社は女性社員の比率が約60%で、女性が多い会社です。そのため、女性の視点を生かした事業運営を大切にしています。女性の健康をテーマとする商品も多いため、社員自身の経験や視点が商品作りにも反映されていると感じています。

――働き方の面ではどのような取り組みをされていますか。

澤村 当社は女性の健康を支援する製品を手がけている企業として、社内における女性の働き方にも力を入れています。現在、社員の男女比は女性がやや多く、およそ6対4の構成となっています。働き方の面では、在宅勤務やフレックス制度を導入し、体調や家庭の事情に合わせて柔軟に働ける環境を整えています。また、育児休暇制度も男女共通で設けています。子育て中の社員には週3〜4日勤務など柔軟な働き方も可能にしています。ライフステージに応じて無理なく働き続けられることが重要だと考えています。
一方で、女性管理職の登用についてはまだ課題があり、現時点では女性管理職はゼロという状況です。そこで春以降、まずはグループ長職への女性登用を進め、将来的には課長や部長クラスへの昇進も積極的に後押ししていきたいと考えています。女性が多い職場だからこそ、女性がリーダーシップを発揮できる環境を整えることが重要です。それが結果として、製品開発やお客様とのコミュニケーションの質を高めることにもつながると考えています。

――海外展開についてはどのように考えていますか。

澤村 東南アジア市場への展開を検討しています。欧米よりも生活習慣や文化的背景が日本に近い地域であり、受け入れられやすいのではないかと考えています。まずは更年期ケアの分野で市場をつくり、その後クランベリー製品などへ展開していく構想です。
尿漏れや尿路カテーテルによる感染症など、介護現場での課題に対応する分野にも取り組みたいと考えています。現場ではこうしたニーズがあると感じています。

食と健康で生活を支える

――情報発信の面ではどのような課題がありますか。

澤村 現在のウェブサイトは会社概要が中心になっていて、研究情報などが見つけにくい面があります。今後は研究論文などのエビデンスを整理し、お客様が閲覧できる形で公開していきたいと考えています。

――最後に、消費者に向けて一言お願いします。

澤村 私たちは、「輝きプロジェクト」というコンセプトを掲げ、更年期以降の女性、そして将来的には男女を問わず、自分らしく輝き続けられる人生を応援していきたいと考えています。
そのためには、こころが穏やかで、からだが健やかであることが大切です。どこか体に不調があると、食を楽しむことも難しくなります。だからこそ、私たちは商品やサービスを通じて、日々の健康を支えたいと思っています。食を楽しむことは、毎日に彩りと喜びをもたらします。一人でも、家族でも、仲間とでも、食を楽しむ時間があることで、日常はより豊かになります。高齢化社会の中で、こころが穏やかで、からだが健やかであり、食を楽しめる生活を支える企業でありたいと考えています。
これは、キッコーマングループ全体が掲げる「おいしい記憶をつくりたい」という考え方とも深く結び付いています。しょうゆや豆乳といった食品事業と、サプリメントや治療食などの健康事業が同じグループの中にあることで、食と健康を一体として捉えた取り組みが可能になります。私たちはその接点に立つ存在として、食と健康の両面から生活を支え、皆さまの毎日がより豊かで笑顔にあふれるものになるよう、お手伝いしていきたいと考えています。

――ありがとうございました。

【聞き手・文:田代 宏】

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