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機能性表示制度の判断は誰が担うのか 0315通知が生んだ例外と総合判断

 2019年(平成31年)3月15日に医薬・生活衛生局(当時)監視指導・麻薬対策課が発出した課長通知「『医薬品の範囲に関する基準』に関するQ&Aについて」(以下、0315通知)を巡る開示文書を精査した結果、機能性表示食品における医薬品該当性判断は、形式的な成分区分と例外規定、さらに総合判断が併存する構造であることが確認された。その具体的な判断基準や運用手順は明示されておらず、制度上の枠組みと実務の間に一定の不透明さが残る実態も浮かび上がった。

例外規定と総合判断の併存

 0315通知では、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」のリストに収載された成分であっても、それが野菜や果物などの生鮮食料品に元来含まれる成分である場合には、その成分を含有することのみを理由として医薬品に該当すると判断しないとされている。その上で、食経験、製品の表示・広告、販売時の説明など を踏まえ、総合的に判断するとしている。

 また、この取扱いは加工食品にも及ぶ。生鮮食品を原料とし、伝統的発酵を含む加工を経て製造された食品についても、当該成分の抽出、濃縮又は純化を目的とした加工を行っておらず、かつ食品由来でない成分を添加していない場合には、生鮮食品と同様に取り扱うとされている。
 このように、開示文書からは、医薬品該当性の判断において、リストに基づく形式的な区分に加え、例外規定と総合判断が併存する構造が確認できる。

 当時、0315通知の発出に関与した政治家および行政関係者は、根本匠厚生労働大臣(2018年10月2日~19年9月11日)、岡村和美消費者庁長官(2016年8月9日~19年7月)、厚労省医薬生活衛生局・宮本真司局長、同監視指導・麻薬対策課・磯部総一郎課長、消費者庁食品表示企画課・赤崎暢彦課長らである。赤崎課長は同通知を受けて「機能性表示食品に関する質疑応答集」に改正を加えた。少なくとも、当時の省庁の両課長は直接的に同通知の発出および質疑応答集の改正に関与している責任者だ。
 ウェルネスデイリーニュース編集部は今年1月末、両者に取材を試みたが、回答があったのは当時の赤崎課長のみで、磯部元課長からは回答期限を延長したにもかかわらず、回答はなかった。現在、磯部氏は日本OTC協会の理事長を務めており、赤崎氏は全国マヨネーズ・ドレッシング類協会の専務理事を務めている。

 赤崎氏への質問は、①2019年3月に厚生労働省から発出された「『医薬品の範囲に関する基準』に関するQ&A」(薬生監麻発0315第1号)について、消費者庁としては当時、どのような位置付け・前提認識で受け止めていたのか、②機能性表示食品制度において、成分が「食品」か「医薬品」かの判断について、制度上、行政が実質的な事前判断を行わない仕組みとなっている点について、当時どのような整理や考え方が共有されていたのか、③医薬品成分に該当し得る成分を前提とした論文等が届出資料に含まれる可能性があることについて、将来的な安全性上の論点や制度上の課題は、当時どのように整理されていたのか――という3項目。同氏は、7年近く前のことにつき記憶が不鮮明な点があるとしながらも、真摯な回答を寄越した。
 回答を要約すれば、「医薬品該当性は一貫して厚労省判断だが、消費者庁も一定程度関与していた」というものである。

判断基準の不透明さ浮上

 さて、総合判断の具体的な方法や判断要素の優先順位については、開示文書上では明示されていない。食経験や表示・広告等の要素が列挙されているものの、それぞれをどのように評価し、最終判断に結び付けるかについての具体的な手順は示されていない。というか、開示請求には、①課長通知「『医薬品の範囲に関する基準』に関するQ&Aについて」の発出に至るまでの検討過程が分かる以下の行政文書一切。起案文書、決裁文書、内部検討資料、検討メモ、照会文書、関係部署(局内・省内)との協議記録、他省庁(消費者庁等)との連絡・協議に関する文書、電子メール(庁内メールを含む)、文言修正の履歴が確認できる資料。
 ②上記課長通知の発出にあたり、規制改革推進会議の答申または規制改革実施計画(とりわけ平成30年答申における「食薬区分の運用改善」)との関係性が検討・言及されていることが確認できる行政文書。
 ③上記課長通知の内容が、消費者庁における「機能性表示食品に関する質疑応答集」の改正に影響を与える可能性について、厚生労働省内部で検討・認識されていたことが分かる行政文書――などを求めたものの、出てきたのは「食薬区分の運用改善」など、ほとんどがすでに公表されている資料だった。

 通知改正の理由は、「機能性表示食品制度の対象食品となるかの判断を明確化するため」とされているが、実際の内容は医薬品該当性の例外的取扱いの整理が中心となっている。食薬区分の見直しと機能性表示食品制度の届出判断との関係についても、開示文書の範囲では明確な整理は確認できない。
 以上の点から、開示文書上は制度の枠組みおよび例外規定が示されている一方で、個別判断に委ねられる部分も残されている構造が読み取れる。制度として一定の基準が提示されていることは確認できるが、その具体的な運用方法や判断基準の詳細については、文書のみからは把握し切れない部分がある。

届出資料にみる整合性の課題

 例えば、個別案件として確認される届出資料に目を転じると、制度上の枠組みと実務上の記載との関係を示唆する事例が見られる。現在は販売されていないが、小林製薬の『紅麹コレステヘルプ』を例にとる。今は消費者庁の届出情報データベースで検索しても、「2年が経過しているために確認できない」との趣旨のアナウンスが表示されるが、過去のデータを基に検証する。

 機能性の根拠とされるシステマティックレビュー(様式Ⅴ)では、機能性関与成分を「米紅麹ポリケチド」として整理している一方で、その引用文献においてはモナコリンK(ロバスタチン)に関する研究が用いられており、同文献中にはポリケチドという用語は確認されない。また、自社の研究資料においても、有用成分としてモナコリンKの吸収性や血中動態が検証されている。
 さらに、品質管理を示す(様式Ⅲ)においても、モナコリンKを前提とした整理がなされているとされる。一方、安全性を示す(様式Ⅱ)の記載を精査すると、紅麹中にロバスタチン(モナコリンK)が含まれる旨の説明がなされており、成分名としては明示されていないものの、その存在を前提とした安全性評価が行われていることが確認される。
 これらを総合すると、機能性の根拠、品質評価の各要素において、同一の成分概念が一貫して用いられているとは言い難い構造である。
 すなわち、機能性関与成分として表示される米紅麹ポリケチドと、実際に根拠として用いられているモナコリンKとの関係について、資料間で整合的な説明が示されていない状況が確認される。この点は、単なる表現の差異にとどまらず、制度の中核を構成する機能性・安全性・品質といった各評価項目の整合性に関わる問題である。

制度と運用の乖離が示す構造

 このような構造は、0315通知が採用した例外規定と総合判断の枠組みとも無関係ではないと考えられる。すなわち、形式的な成分区分に加えて、個別事情を踏まえた判断を許容する制度設計が、結果として個別案件ごとに異なる整理を可能とする余地を残している可能性がある。
 もっとも、開示文書の範囲においては、このような不整合がどのような経緯で生じたのか、あるいは制度運用上どのように整理されているのかについては確認できない。したがって、現時点で断定的な評価を行うことはできないが、少なくとも制度上の枠組みと実務上の記載との間に一定の乖離が存在する可能性は否定できない。

 さらに付言すれば、近年進められている機能性表示食品制度の見直しにおいても、この点に対する直接的な整理は確認されていない。制度の信頼性確保という観点から見た場合、機能性関与成分の位置付けと医薬品該当性判断との関係については、本来、一定の検証と整理が求められる領域であったとも考えられる。

 0315通知は、医薬品該当性の判断に柔軟性を持たせた点で制度運用に影響を与えたが、その運用実態と帰結については、なお十分に検証されているとは言い難い。制度として一定の枠組みが示されたことは事実である一方、その適用の在り方がどのような結果をもたらしたのかについては、引き続き丁寧な検討が求められる。
 この通知によって、本来、医薬品として扱われるべき成分が食品として流通することで、紅麹コレステヘルプのような健康被害を再び生まないための検証が求められる。

【田代 宏】

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