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九大今坂論文入手、単一原因説に再考迫る 成分差異の可視化が示す複合要因の可能性

 ウェルネスデイリーニュース編集部は、九州大学・今坂智子講師らの紅麹サプリに関する研究論文を入手した。分析内容を精査したところ、論文は原因物質の特定を目的としたものではなく、健康被害が報告された製品における成分構成の偏りを明確に示したものであることが分かった。複数ピークの顕著な増加が一貫して確認される一方、その物質特定には至っておらず、単一物質による説明の限界を示唆する内容となっている。今回の知見は、紅麹サプリ問題を複合的な成分構造として再検討する必要性を突き付けるものとなった。

複数成分に着目した分析の核心

 まず確認されるのは、健康被害が報告されたサンプルにおいて、特定のピーク(a〜e)が一貫して増加している点。これは単発の観測ではなく、複数の測定において同様の傾向が確認されており、偶然的な変動とは考えにくい。
 さらに、この増加の程度は顕著である。ピーク強度は最大で約17倍、平均でも4〜8倍程度の上昇が見られており、通常の個体差や測定誤差の範囲を超える差異が存在していることが示唆される。
 一方、これらのピークに対応する物質については、複数の候補が提示されているにとどまり、特定には至っていない。すなわち、同資料が示しているのは「異常な成分の存在」であって、「その正体」ではない。

 また、ロバスタチン(m/z 404)は別ピークとして確認されており、今回増加が確認されたピーク群とは区別される成分として扱われている。これは、ロバスタチンが差分としての異常成分ではないことを意味する(つまり、通常サンプルにも異常サンプルにも見出される成分である)。
 さらに、内部標準を用いた測定により、これらのピーク差が再現性をもって確認されている点も重要だ。すなわち、観測結果は分析手法として一定の信頼性を有している。

 以上を踏まえると、同資料の本質は、「原因物質の同定」ではなく、「異常サンプルにおける成分構成の偏りの存在」を示した点にあると考えられる。

混合系としての毒性構造を示唆

 この知見は、これまでの毒性試験結果とも一定の接続を持つ。厚生労働省および国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)が実施した動物試験においては、製剤そのものに相当するBK2(紅麹コレステヘルプの錠剤)の毒性が、プベルル酸単体よりも強く現れることが確認されている。すなわち、実製品は単一物質ではなく複数成分からなる混合系であり、その全体としての作用が毒性として現れている可能性が示唆されてきた。

 今回の分析が示した複数ピークの増加は、この「混合物としての毒性」という構造との整合を示唆する。すなわち、製品中に複数の成分が存在し、それらが関与することで毒性が発現している可能性を補強する可能性がある。

原因解明は次の段階へ

 もっとも、資料には明確な限界も存在する。第1に、ピークに対応する物質が特定されていないため、どの成分が毒性を担っているのかは不明。第2に、これらの成分と腎毒性との因果関係は直接的には検証されていない。第3に、各成分の含有量と毒性強度との関係、さらには複数成分間の相互作用についても明らかにされていない。
 したがって、同研究の位置付けは、「原因の特定」に至るものではなく、「単一原因モデルでは説明しきれない可能性を示す段階」にとどまる。

 総じて言えば同資料は、「紅麹サプリ問題を単一の化学物質による事案としてではなく、複数の成分が関与する可能性を持つ事案として再検討する必要性を示唆するもの」(日本獣医生命科学大学名誉教授・鈴木勝士)という。
 毒性の存在自体はすでに動物試験により確認されているが、その原因構造については、なおさまざまな研究による解明の余地が残されていると言えるのではないか――。

【田代 宏】

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