紅麹サプリ問題、補償判断は会社主導 第三者機関設置せず 1件はなお調査中、枠組みは維持
小林製薬は2月19日、紅麹サプリメントを巡る死亡関連事案の調査や補償体制について、ウェルネスデイリーニュース編集部の追加質問に書面で回答した。質問は、2月10日の第4四半期決算説明会および新中期経営計画発表会でのやり取りを踏まえて送付したものである。記者は2月10日と13日、2回に分けて質問している。
「死亡と明確な因果関係なし」の立場維持
同社はこれまでと同様、「当該製品の摂取により死亡したことが明らかな症例は確認されていない」との立場を維持した。死亡に関連する事案のうち1件については、現在も「調査中」としている。
今回の回答で改めて明確になったのは、補償に関する最終的な判断を下す主体が会社自身であるという点だ。同社は、主治医からの聴取や病状履歴、検査記録の確認に加え、弁護士や医療専門家など外部の専門家の意見も踏まえて総合的に判断していると説明している。しかし、最終的な決定は小林製薬自身が行っており、第三者委員会のような独立した外部の調整機関は設けていないし、今後もその予定はないとしている。
補償の有無や判断基準の詳細については、遺族との個別対応やプライバシーへの配慮を理由に公表しない。また、仮定を前提とする質問については回答を控える姿勢も繰り返された。
さらに、監査等委員会設置会社への移行を決めた後、紅麹サプリ事案の調査や補償判断のプロセスに監査等委員会がどのように関与するのかについては、「現在検討中」として具体的な説明はなかった。
変わった点と変わらない点
ここまでの回答を整理すると、大きく変わっていない部分と、経営上の位置付けとして強調された部分がある。
変わっていないのは、補償の最終判断は会社が行うこと、第三者的な独立機関は設けていないこと、補償の基準や個別案件の詳細は公表しないことといった基本的な枠組みである。意思決定の構造そのものは、これまでの説明と大きな違いは見られない。
一方、同社は紅麹サプリ事案を「重要な経営課題」と位置付け、「信頼回復」、「品質の追求」、「コーポレート・ガバナンスの抜本的改革」などを重要課題として掲げている。中期経営計画では、品質強化や新製品開発、設備の維持更新などに向けた投資方針も示している。

ガバナンス改革と補償独立性は別問題
ただし、制度上のガバナンス改革が、そのまま調査や補償の独立性向上につながるかどうかは現時点では分からない。監査等委員会がどのように関与するのかは検討中とされ、具体像は示されていないためである。
今回の書面回答は、新たな事実を提示するというよりも、現行の判断枠組みをあらためて確認する内容だった。死亡との因果関係が明確とされた症例はないこと、1件は調査中であること、外部専門家の意見を踏まえつつも最終判断は会社が行うこと、補償基準の詳細は公表していないことなどが、改めて示された。
「調査中」1件の判断基準が焦点に
現在「調査中」とされている1件については、その結論だけでなく、どのような手続きと基準で判断されるのかも注目される。仮に因果関係が否定される場合には判断に至るまでの説明が、何らかの関連性が認められる場合にはこれまでの事案との整合性が問われることになる。
2年前の3月26日、紅麹サプリ3製品について自治体が自主回収命令を発出した際、その判断の根拠の1つとされたのは、小林製薬が実施した7日間反復投与試験における「プベルル酸」に関するデータだった。その後、厚生労働省は28日間反復投与試験を実施し、追加的な検証を行っている。
健康被害が発生した事案において、初期段階で用いられた小林製薬のデータがその後の検証や整理の出発点となったことは事実である。だからこそ、検証の過程と補償判断の基準について、どのような情報が、どの範囲で共有されるのかは、これまで以上に重要な論点となる。
同社は「情報発信の在り方は重要であると認識している」と強調した。紅麹問題は製品安全の問題であると同時に、事後の検証プロセスと説明責任の在り方が問われる事案でもある。信頼回復を掲げる以上、どのように情報を共有し、どこまで透明性を高めるのかが、今後の重要な焦点となる。
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【田代 宏】
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