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高品質原料を作る次世代工場(後) オムニカの高尾社長に聞く

置き去りにされている性能

――消費者が品質の高低を見分けるのはまだむずかしい時代ですね。
高尾 消費者の嗜好性を狙ってとても分かりやすい情報で購入するための動機付けがしやすい食品が数多く利用されています。でも長期的に見ると、食品3次機能としてのベネフィットがあるものと、それほどないものが同時に市場で連続して売られた場合、ある一定の時間の段階では性能があるものの方が、性能のないものに対して利用される率は大きくなくてはいけないのではないかと考えています。

 本来、性能に対する要求は高まってくるはずなのですが、現状は業界としての考え方も、行政も、まだそこまで到達していないというのが事実です。すごく長い時間をかけて、最終的には性能が高いこと、これをもってお客様によく利用されるような商品を作り、世の中に役立っていこうと思ってます。ここが最終的な私たちの製造者としての目標になります。

規格基準の3原則

――具体的に落とし込むとどういうことでしょうか?
高尾 規格基準の3原則というのがあります。まず、使われる原料の起源定義が規格化されるということで、受け入れのところで規格されます。2番目が製法、3番目が分析による物質の規格化ですね。この3つで規格基準が成り立つわけなのですが、今のところ機能性表示食品も3番目の分析値のところだけしかやられていませんね。

 起源のところも、由来などを多少は見ているのですが、それを精密ではなく、いろんなものがかなり幅広く許容されているのです。臨床試験で評価した成分がどのような製造方法で作られたのか、それと同じ製造方法で作っているかどうか、ここが規格基準で、これらの品質管理のなかで工程管理を指図し、チェックしなければならないのです。これが製造方法に対する品質管理ですが、臨床試験をして作ったのと同じようにということになると、相当細かい点を点検しないと同じものになりません。

エビデンスの有無を競う

――臨床試験をやっていない成分は効果が期待できない?
高尾 長期的には難しいでしょう。私たちが他社と比べて良いとか悪いとか申し上げているのではありません。私たちは、臨床試験で有用なエビデンスを確認したものと同じものを作るための努力をしています。同じものであるかどうか、同じ条件かどうかの確認を繰り返し行っているだけで、他と比べて良いか悪いかではなく、エビデンスのあるものと同じかどうかにこだわり続け、それを競っているのです。厳しい言い方をすれば、そもそもエビデンスもない成分を、高品質と自負するのは企業として一方的に感じます。

――製造方法は同じであるかどうか、吸収性が同じであるかどうか、含有量組成物が物質的に一緒であるかどうか、これが全部結びついたものがオムニカの製品だということですね?

高尾 冒頭に申し上げた当工場の設立の動機ですが、機能性表示食品という制度が始まるとアナウンスされた直後、当社なりに将来の見通しを立てて、工場新設を判断しました。
 2014年6月24日に閣議決定された規制改革実施計画のなかには「意欲と創意に満ちた事業者に活躍の機会を提供する」とあり、またガイドラインには「機能性表示食品制度を消費者の自主的かつ合理的な食品選択に資するものとするためには、安全性の確保及び機能性表示を行う上での必要な科学的根拠、適正な表示による消費者への情報提供等が適切に担保されることが重要となる」とありました。常々、私たちが強い興味を抱いていた課題がそこに掲げられていたのです。そうであれば、私たちは工場を立ち上げようと、そういった流れでした。

 ところが一方、それまで私たちが見てきたいわゆる健康食品の時代に代表的な広告・表示、販売演術による方法。このための道具としていわゆる健康食品が存在しているという図式。そういうイメージが今も多少あるんじゃないかなと思わざるを得ない。不幸なことに、今もそういうものの中のいくつかが、いろいろな問題を起こしています。

 それで損をする人がいる以上は、そういうことは長くは続かないのでしょうが、損する人がいなくなるために広告とか演術というものが必要でなくなり、高性能の商品が選ばれるようになるというのが一番望ましいと考えたいのです。

――残念ながら、今も機能性表示食品のなかにはグレーな表示・広告、販売演術で売られているものが少なくありません。今の表示では、消費者が合理的な選択を行うための十分な情報が届けられていないということでしょうか? 

高尾 表示できる範囲が不足していることも、事業者が、実際の機能性以上の広告を表示して販売しようとする理由なのかもしれません。ただ、商品よりも広告のほうが重要という考え方について日本は世界でも突出していますし、同じ成分含有量のサプリメントの市販価格が米国と比べて広告費をより多く必要とする日本での価格は倍近いという事実は昔から変わりがありません。

――非常に残念なことですね。

高尾 当初は、機能性表示食品に対して2つの見方がありました。厳しすぎるというのと、甘すぎるというのがあり、私たちは正直なところ甘すぎるんじゃないかなと思っていたのです。
 エビデンスに対する要求のレベルとか、品質に対する要求のレベルとか、結構それを容認させて届け出るという流れですね。完璧に条件を満たしていないということに対して、あまり望ましくないと考えていたのですが、これはやはり、最終的には全部一律に基準を設けて判断をするとういのは難しそうだと思いました。
 なぜなら、企業が売り上げを立て、利潤を増大させることを使命としている以上、それを全て無効化させるほどの阻害要因が揃っていても仕方ないので、ある程度は機能性表示食品の制度の中に、品質またはエビデンスに弱さがあるというのは、これはもう今後もしばらく解決しないだろうと思っています。

 しかし、あえて厳しいとしても、結果的に消費者からの信頼感が高まることで産業界全体が発展していくという道もありますので、誇大広告の許容範囲を模索するよりも、正しい研究を行い、品質や性能を担保することにエネルギーを投入するほうが、長期的には経済活動としても有益だと考えます。ただし、自己満足としてやっていても意味がありませんので、啓発活動にも同じくらいエネルギーを使っていきたいと考えてます。

――選ばれる機会を増やすことですね?
高尾 利用されるチャンスがあるのならばそれを増やし、利用された実績を残す。良いものだから売れるだろうという原始的な考え方で内側に向かってだけの取り決めをしていても仕方がありません。

 研究をしていても、それを論文に書いて、自分たちがそれをある特定の目的だけに使っていても仕方がない。成果を広く知ってもらうためには、いろいろな活動をやっていかなければならないだろうと思います。例えば、成功事例などをケーススタディとしてどんどんリリースしていく。そういう第2ステージを迎えたと思っています。

――ありがとうございました。


【聞き手・文:田代 宏】

<COMPANY IMFORMATION>
所在地:静岡県裾野市今里492-1(本社・工場)
    東京都板橋区板橋4-21-7(東京事務所)
TEL:03-5944-4201
E-mail:www.omnica.co.jp/contact.html
URL:www.omnica.co.jp
事業内容:機能性食品の原材料製造・製品受託製造

(冒頭の写真:裾野工場「実験室」風景)

関連記事:高品質原料を作る次世代工場(中)

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関連動画:映像から知るオムニカの機能性食品成分

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