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薬学者が創業、つないだバトンの現在 【周年特集2024】常磐植物化学研究所、創業75周年

 植物抽出物の製造販売など「植物化学」専門企業の㈱常磐植物化学研究所(立﨑仁社長)は今年10月、創業75周年を迎える。旧国立衛生試験所(現国立医薬品食品衛生研究所)所長を務めた松尾仁博士(薬学)が終戦間もない1949年に創業。当時の東京都渋谷区常磐松に本社を置いたのが社名の由来だ。一方、製造拠点を置いたのは、今と同じ千葉県佐倉市だった。本社を同地へ移転した57年、現社長の祖父に当たる立﨑浩氏が社長に就任。75年の歴史を現社長である立﨑仁氏(=写真)が語る。

始まりは医薬品原薬の製造だった

 ソバからルチンを製造したのが当社の始まりです。用途は医薬品の原薬。原爆症の治療薬として使われました。原料に使うソバも、この辺り(佐倉市の本社工場付近)で栽培していたと聞いています。その後、甘草からグリチルリチンの製造を始めました。1970年のことです。これが会社を成長させることになりました。グリチルリチンは用途が多岐にわたるからです。

 健康食品分野に進出したのは1980年代前半です。他の植物抽出物メーカーに比べて早かった。当時製造したのは、今は作っていないのですが、EPA(エイコサペンタエン酸)です。銚子港(千葉県)で水揚げされたイワシを原料にしていたようです。その後、大豆サポニンや霊芝など、さまざまな植物抽出物を健康食品向けに製造するようになりました。

 そして87年、イチョウ葉エキス末の製造を始めることになります。当時、イチョウ葉エキスをバルク(原材料)で供給する企業は世界的に見ても存在しませんでした。その意味で当社はイチョウ葉エキスのパイオニアです。その後、ブルーベリーエキス(ビルベリーエキス)の製造を始めました。92年です。アジアでは当社が初でした。イチョウ葉エキスもブルーベリーエキスもその後、中国からの輸入品に市場が席巻されていくことになりますが、この2つの製造をいち早く手掛けられたことが当社にとって大変大きかった。今の常磐植物化学研究所を形づくることにもなったと思います。

低迷期抜け出し推進するESG経営

 私が会社に加わったのは2007年。社長就任は10年です。当時の当社は業績が大きく低迷していました。主力製品のシェアが中国品に奪われ、ブルーベリーエキスなどに次ぐ新たなイノベーションを起こすことも出来ていませんでした。そこから息を吹き返せたのは、機能性表示食品制度が創設されたからです。

 今、ビルベリー由来アントシアニンの届出全体のうち約半数以上を当社でサポートさせてもらっています。また、ラフマ(由来ヒペロシド、同イソクエルシトリン)は届出件数が100件を超え、最近、新しいヘルスクレーム(健常成人女性の月経前の一時的なすっきりしない気分の軽減)を実現させることが出来ました。オーラルケアのゲッケイジュ葉エキスも当社が製造する原材料ですし、新製品のマテエキスも控えています。原材料の研究開発や適切な品質管理を求められる制度の創設によって、お客様が当社に戻ってきてくれました。

 もう1つ大きかったのは、08年から環境経営やCSR(企業の社会的責任)を導入してきたことです。今で言う、SDGsやESG(環境・社会・企業統治)経営。そのことが今、私たちの企業価値につながっていることを実感しています。ここにきてお客様の質が変わりつつあるからです。環境維持などに対する意識の高いお客様が増えています。

 私の代で本格的に進めることになった経営再建は18年に終わり、資金調達に苦労することもなくなりました。それによって、将来を見据えたESG経営を強化できる好循環が生まれました。99%カーボンニュートラルを実現したり、社員や地域社会に向けたウェルビーイング施設を新設したり出来ています。そういった取り組みが評価され、今年、「エコアクション21 オブザイヤー2023」のソーシャル部門で環境大臣賞(金賞)を受賞することが出来たり、健康経営優良法人ブライト500に2年連続で認定されるなど、対外的にも評価いただきました。

 人、モノ、そして資金のサステナブル(持続可能)に繋がるESG経営とは、法令遵守などと同様に、企業の基本的な責務だと私は考えていますし、今後ますますそうなっていくのではないでしょうか。健康食品業界の中で、私たちのESG経営はかなり進んでいると自負していますが、そうは言ってもまだまだ足りていないと思っています。リサイクルをアップサイクルに変えていくなど、やるべきことはまだまだ残されています。

 そのように今後もESG経営を進めながら、私たちはこれまでどおり愚直に研究開発や製造管理、品質管理を行っていきます。そうすることで、最後は私たちの製品が選ばれると信じています。この先、業況がどんなに厳しくなったとしても、常磐植物化学研究所が存続していけるようにする。それが私の役割だと考えています。

【聞き手・文:石川太郎】

(冒頭の写真:常磐植物化学研究所の立﨑社長。同社提供/文中の写真:同社の報道発表資料から)

<COMPANY INFORMATION>
所在地:千葉県佐倉市木野子158番地(本社・工場)
TEL:043-498-0007
URL:https://www.tokiwaph.co.jp/
問合わせ:https://www.tokiwaph.co.jp/contact/
事業内容:機能性表示食品対応原料、医薬品原薬、化粧品原料等の製造及び販売

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