美容の定番コラーゲン、需要増の理由 ニッピ「タンパク補給用途で大きな伸び」
美容食品素材の定番、コラーゲンペプチドの需要が伸びている。2021年度(21年4月~22年3月)の国内における原材料販売量は、少なくとも5,160トンに上り、前の年度から600トン超を積み上げた。原材料市場で国内最大手のニッピ㈱(東京都足立区)は21年度に昨対比2ケタ増を記録。旺盛なインバウンド消費の影響で販売量が伸びた19年度を上回ったという。需要増の背景には何があるのか。同社のゼラチン事業部ゼラチン・コラーゲンペプチド営業部に取材した。
21年度販売量、2ケタ増で着地
「正直、20年度は新型コロナ禍の影響を受けて苦戦した。インバウンド需要の激減と海外輸出の停滞が大きな要因。しかし、21年度に入り、特に後半に入ってから、状況が変わった。国内、海外ともに販売量が伸びた。背景には健康志向の高まりがあると思う」。
ニッピのゼラチン事業部ゼラチン・コラーゲンペプチド営業部の責任者がそう話すとおり、同社の22年3月期(21年4月~22年3月)決算でコラーゲンペプチドを含むゼラチン関連事業の売上高は、前期比約14%増の103億8,500万円を計上した。ゼラチンに関しても増収した中で、同期のコラーゲンペプチド販売量は、前期比約13%のプラスで着地。コラーゲンペプチド配合健康食品などの通販を手掛ける化粧品関連事業も2ケタの増収と好調だった。
国内外で増加 22年度も「引き続き順調」
21年度の販売状況を国内と海外に分けて見ると、海外は、10年以上前から展開しているタイを中心とする東南アジア、また、北米での販売量が増加した。同社も加盟する日本ゼラチン・コラーゲン工業組合(以下、GMJ)が取りまとめた組合加盟7社(国内ゼラチン・コラーゲンペプチドメーカー)の21年度コラーゲンペプチド輸出販売量を見ると、前年度からやや減少したものの、2年連続で1千トン台をキープ。海外輸出が好調だったニッピでは、「コロナ禍で一部の国では経済活動が鈍化しているものの、コラーゲンペプチドの需要は世界的に伸びている」(同)と話す。
一方、国内も好調に推移したが、その背景には、美容健康食品向けの需要が堅調に推移しつつ「特に一般食品向けで大きく伸びた。とりわけ大きかったのは、タンパク補給素材としての需要の伸び」(同)があるという。言うまでもなく、コラーゲンペプチドはタンパク質の一種だ。
ビューティ・プロテイン、 新コンセプトになる?
GMJの21年度コラーゲンペプチド販売量のうち「食用」は5,160トンと、新型コロナ禍で落ち込んだ前年度から640トンも増えた。インバウンドが健在だったコロナ禍前の19年度と比較しても90トン近く上回っている。20年度以前にはほとんどなかったタンパク補給素材としての需要が、コラーゲンペプチドの販売量を押し上げた可能性もありそうだ。
今年度(22年度)はどうか。足もとの販売状況についてニッピではこう語る。「引き続き順調で、新規の引き合いも増加傾向。美容健康食品向けも順調だが、やはり、タンパク補給源としての需要が伸びている。海外では、『ビューティ・プロテイン』というコンセプトでコラーゲンペプチドを提案する動きが見られるが、そうしたコンセプトが日本でも立ち上がってくる可能性もあるかもしれない。今後に期待している」(同)。
開始した届出サポート、拡販につながるか
「今後に期待」は、機能性表示食品をめぐるニッピの取り組みに関しても同様だろう。同社はこのほど、これまで対応できていなかった機能性表示食品の届出サポートを開始。同社製の魚由来コラーゲンペプチドを使用した文献で構成される研究レビューに基づき、以下のヘルスクレームを可能にした。
「肌弾力性を維持し、肌の健康に役立つ機能性があることが報告されています。また、紫外線により肌が赤くなりやすい方の肌を紫外線刺激から保護するのを助ける機能性があることが報告されています」(一部抜粋)。
現状、コラーゲンペプチドの機能性表示食品は販売アイテム数が限られる。一方で、ニッピやGMJの直近販売量からもうかがわれる通り、コラーゲンペプチドは機能性表示を行わずとも数字が伸びる。ただ、ここにきてアサヒグループ食品㈱が、同社を代表する美容食品ブランド『パーフェクトアスタコラーゲン』で届出を実施するなど、美容食品販売大手が機能性表示に向かい始めている。
機能性に関する消費者認知度がすこぶる高いコラーゲンペプチドといえど、機能性表示が求められる状況がいずれやってくるかもしれない。また、ニッピでは、「海外輸出においても、日本で機能性表示食品として展開できるコラーゲンペプチドであるという点は、アピールポイントになり得る」(同)と指摘。国内外での拡販を進めるために「今後も機能性研究を継続する」と話している。
【石川 太郎】
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