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第3回契約書面電子化検討会(前) WT会合のヒアリングを受け承諾方法を議論 

 契約書面の電磁的方法による承諾のあり方について、第3回「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」(契約書面電子化検討会)が30日、オンラインで開催された。消費者団体サイドと事業者サイドの間で部分的には意見の一致を見たものの、「消費者の真意の承諾」を得るための方法については、両陣営で平行線をたどり、次回の会合でさらに議論を深めることとなった。

 昨年8月から今年3月まで、7回にわたって開かれたワーキング・チーム(WT)会合におけるヒアリングを受けて整理された論点に対する意見書を各委員が提出、委員は5分の持ち時間で意見陳述を行った。意見書を提出したのは、埼玉消費者被害をなくす会の池本誠司委員、主婦連合会の河村真紀子委員、(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会(NACS)の福長恵子委員、(公社)全国消費生活相談員協会(全消相協)の増田悦子委員、(一財)日本消費者協会の村千鶴子委員、(公社)日本訪問販売協会の小田井正樹委員ら6人。弁護士の高芝利仁委員は書面なしで意見を述べた。

紙の書面を望む消費者には紙で

 事業者サイドに立つ小田井委員は、「健全な事業者の立場としては、法律で厳しい規制を受けるということは基本的には望んでいない」とし、事業者の自主的な取り組みで消費者トラブルの未然防止、再発防止を図りたい。コンプライアンスという意識がなく、改善する気もないような悪質業者に対しては厳しく執行していただくのが最も有効だと述べた。
 その上で、訪問販売協会の要望を示した。消費者の真意性については「消費者に交付書面の意義(クーリング・オフ期間の起算点になる等)を説明した上で、紙か電子を選択してもらうことはトラブル防止に有効であると考える」とし、告知の方法については「後で言った言わないみたいな議論になることを避けたいと思えば、紙に書いてあったものを渡したり、電子メールに記載しておくという事業者もいるだろう。トラブルなどがほとんどないような事業者では口頭でも特に問題ないと考える事業者もいると思う。また、取引類型ごとに取引のルールに差を付ける必要はなく、紙の書面を望む消費者には間違いなく紙の書面が交付される仕組みにすることが重要」とした。ほかにも、書面提供と開封確認の手順、提供の手段などについても言及した。

クーリングオフの起算点は?

 消費者団体サイドからは、①「原則として紙による書面交付を行うこと」、②「一定年齢以上の高齢者に対して電子交付を行う場合は家族などの第三者の関与を行うこと。それでだめなら書面契約に戻すべき」、③「クーリングオフの起算点は、消費者がPDFファイルを閲覧、保存したことを消費者から事業者にメールで通知したときとすること」など、WT会合におけるヒアリングを通じて主張してきた意見でほぼ一致した。NACSの福長委員は、クーリングオフの起算点について、事業者が消費者からの書面を確認した時と主張したが、小田井委員は「最終的にそれは消費者が行うこと。事業者の行為規制とする時は、義務か努力義務とするか、事業者の自主規制に任せることが妥当。消費者からの返信がないことでクーリングオフ期間が起算されないと解釈するには無理がある」と反対している。

 ① については池本委員が、「承諾の意義・効果を理解した上での真意に基づく明示的な承諾の意思表示であるかどうかが不明確だと承諾の有無の判定についてトラブルが生じやすい。承諾の意思表示の存在の立証責任を事業者が負うことを明記することが求められる」とし、事業者が書面交付義務の意義・効果の説明、承諾の取得の際の適合性の確認などが果たされない場合はクーリングオフの起算日が生じないなどのルールの設定を求めた。

 ②について全消相協の増田委員は、高齢者について65歳以上を高齢者の基準の目安としてはどうかとの意見を出したが、これについては(一社)日本経済団体連合会の正木義久委員が否定した。高芝委員は、第三者の了解を得るのも検討課題だとしたが、河上正二座長は、そのあり方については宿題としていったん事務局に預けるかたちを取った。

デジタル技術の進化にどう対応するか?

 ③について池本委員は、SNSによる書面の交付はシステム上適さないとの指摘を行った。これに対して小田井委員は、提供方法は消費者の選択に委ねるべきと述べ、さらに、将来的に新たなデジタル技術の普及も考えて、PDFファイルに限定すべきではないとの意見を述べた。これに対して、㈱川口設計の川口洋委員が「PDF以外に何かあるのか?未来のテクノロジーについては未来に考えるしかない」と切り捨てた上で、現在に適応したテクノロジーが何かを見直す仕組み作りも必要だと提案した。
 
 議論ではほかにも、承諾における細かい手順が提示された。短い持ち時間における発表だったため、細部は消費者庁のホームページで公開されている意見書に詳しい。
 

 後半に入り、(一社)日本経済団体連合会の正木義久委員が小田井委員の提案に対して意見した。同氏は事業者側の禁止行為として、「紙の書面の有料化や、電子交付の場合にプレゼントを付けるなど、電子交付を選択した方が有利であると思わせるような取引条件を設け、電磁的方法を承諾するよう促す行為を禁止してはどうか」、「事業者が消費者の代わりにデジタル機器を操作したり、操作方法を教えるなどの行為を禁止してはどうか」との意見書を提出していた。増田委員はこれを評価したが、(一社)日本経済団体連合会の正木義久委員が「待った」をかけた。

(つづく)

【田代 宏】

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