甲陽ケミカル、設立50周年 【周年特集2024】未利用資源をヘルスケアに生かした半世紀
キトサン及びグルサミン専業メーカーの甲陽ケミカル㈱(赫珠里社長)は今年2月、設立50年の節目を迎えた。廃棄される未利用資源を、大学などの研究機関と共同で機能性食品素材などに応用し、人々の健康維持・増進ために有効活用してきた半世紀。次世代に向けて同社は今、「ひざ・関節」に特化したヘルスケア企業への成長を目指そうとしている。
廃棄されるカニ殻から機能性素材を開発
設立は1974年。現社長の父である赫勲男氏が起業して設立した。独立前の仕事を生かし、化学工業薬品の販売業からスタート。その後、88年、現在も生産拠点を置く鳥取県境港でキトサンの製造を始める。当時は協力工場に生産を委託していた。
「父は、化学工業薬品を活用したモノづくりをずっと模索していました。その中で、大量に廃棄されるベニズワイガニの殻から、天然の凝集剤として利用できるキトサンを得られないか、となった。カニ加工食品メーカーが集積する境港では当時、大量に生じる殻の処理が問題になっていたそうです。今で言うSDGs(持続可能な開発目標)です。キチンが多く含まれる未利用資源の有効利用に取り組んだということ。鳥取大学などと共同で研究開発を進め、製品化にこぎ着けました」と赫珠里社長は語る。
90年、同社として初の工場(キトサン製造工場)を境港に竣工。名実ともに「メーカー」となった。そして98年、キトサンと同様にキチンから得られるグルコサミンの製造販売を開始する。「すでに米国のサプリメント市場では、関節に良いものとして製品化されていました。しかも爆発的に売れていると。それを知った父は、順天堂大学などと共同研究を進め、製品化を目指しました」(同)。
当初の生産量は小規模だったが、需要の高まりを受け、2004年、グルコサミン専用工場を境港に竣工する。以降、主に通信販売がけん引するかたちで進んだ国内健康食品市場の拡大に歩調を合わせるように製造・販売量をぐんぐんと伸ばしていった。結果、「グルコサミンといえば甲陽ケミカル」の業界認知を得ることになる。
一方で、中国をはじめ海外から輸入されるグルコサミンも存在感を増していった。価格差を埋める付加価値をどう付け、それをどう高めていくかが課題となった。国内で最終加工と品質管理を行うことに伴う「高品質」をアピールしながら、国内リーディング企業のポジションと市場シェアの堅守に務めた。そうした中で19年9月、赫珠里氏が三代目社長に就任する。
50年の節目超えて向かう先は?
50年の節目を超えた甲陽ケミカルは今後どのように歩んでいくのか。歴代の社長が経験したことのない新型コロナ禍を乗り越えた赫社長は次のように話す。
「キトサンの用途は多様で、健康食品にとどまりません。実際、当社のキトサンは止血剤にも応用されています。凝集作用に着目したものです。キトサンの可能性を追求し、これからも用途開発を進めていきます。一方、グルコサミンの用途は健康食品にほぼ限られます。その中で取り組むべきことは、キトサンも同様ですが、何よりも安定供給体制の確保。また、昨今の円安にも対応していく必要があります。それもあって最近、協力工場との間でパートナーシップ契約を締結しました。
グルコサミンについては、いずれ新しい製品を出し、その価値を市場や業界に問うていきたい。さまざまな課題の解消につながるものになると思っています。その上で甲陽ケミカルとしては、グルコサミンを軸に、ひざ・関節に特化したヘルスケア企業に成長していけるような将来を考えています」
キトサン・グルコサミン専業メーカーからヘルスケアカンパニーへ──そのような成長を図り、企業として持続可能な状態を維持していきたい、ということだろう。それを実現するために、同社が今後打ち出していく製品やサービスが注目されそうだ。
【石川 太郎】
(冒頭の写真:キトサンやグルコサミンを製造する甲陽ケミカルの境港工場。同社提供)
<COMPANY INFORMATION>
所在地:鳥取県境港市竹内団地217(境港工場)
TEL:03-5244-4235(東京本社)
URL:https://www.koyochemical.jp/index
事業内容:キトサン、グルコサミン、N-アセチルグルコサミン等の製造販売