消費者庁、空間除菌商品に措置命令
大幸薬品との間に訴訟勃発か
またしても二酸化塩素を発生させる空間除菌商品に措置命令が下された。
身の回りの空間に浮遊するウイルス・菌が除去または除菌される効果が得られるかのような表示を行っていたとして消費者庁は20日、『正露丸』などの医薬品を販売する大幸薬品㈱(大阪府吹田市、柴田高社長)に対して景品表示法(以下、景表法)7条1項の規定に基づき措置命令を行った。しかし大幸薬品はこれに対して法的措置で対抗している。
「クレベリンシリーズ」4商品に措置命令
措置命令の対象となったのは、大幸薬品が自社ウェブサイトで販売していた日用品雑貨『クレベリン スティック ペンタイプ』(携帯型)、『クレベリン スティック フックタイプ』(掛け型)、『クレベリン スプレー』、『クレベリン ミニスプレー』(スプレー型)の4商品の商品パッケージと自社ウェブサイトの表示。
用途別にそれぞれ、携帯型は「電車・バス」、「オフィス」、「病院」、「学校」、フックタイプは「ベビーベッド」、「デスク」、スプレー型は「トイレ」、「キッチン」、「浴室」、「洗面所」、「吐しゃ物」、「玄関」、「ゴミ箱」などで除菌効果が期待できると説明している。
表示は2018年9月以降に行われ、現在も続いているという(スティックタイプのみ2019年9月以降)。
「密閉空間と実生活空間は異なる」(消費者庁)
消費者庁は20日行われた記者会見で、景表法7条2項の不実証広告規制に基づき、同社に表示の裏付けとなる合理的根拠の提出を求めたが、合理的根拠を示すものとして認められなかったとし、景表法5条1項の「優良誤認」に該当するものとみなして行政処分を取ったと説明している。
大幸薬品から提出された資料というのは、ステンレスで囲まれた6畳の広さに相当する密閉された空間と、1立方メートルの狭い空間内において自社で行った実験データを論文化し、学術誌に投稿したもの。商品から発生するガスと同様のものを「二酸化塩素ガスの発生機みたいなものを用いて」(消費者庁)行った試験で、「4商品を用いたものではない」としている。
消費者庁は措置命令の根拠として、「実生活における空間は人が動くことで埃も立つし、換気や湿度・温度、気候条件などがあり、密閉空間とは異なる」、「身の回りに浮遊しているウイルスなどを除去する効果を実生活空間で裏付けるものではなかったと判断した」、「二酸化塩素のような薬剤を空間に噴霧してウイルスや菌を消毒、ないし除菌するという評価方法は日本でも海外でも、基本的に確立されていないと理解している」と説明。①根拠のない表示行為を速やかに取りやめること、②違反表示である旨を一般消費者に周知徹底すること、③再発防止策を講じ、自社の役員や従業員に周知徹底すること、④今後、同様の表示を行わないこと――の4点を命令した。
「置き型」仮差し止めで勝訴?
一方の大幸薬品は20日、自社ホームページ上で「『クレベリン置き型』に関する仮の差し止めの申し立てにおける勝訴と本日の措置命令について」という文書を公表。
そこには、今回措置命令の対象となった4商品とは別の『クレベリン置き型』という商品に対しても、昨年11月26日に消費者庁から措置命令案についての弁明を求められたとし、その顛末を記している。
12月14日に措置命令の差し止め訴訟を提起すると共に、仮の差し止めの申し立てを行ったところ、今年1月12日に東京地方裁判所が「試験結果等が二酸化塩素による除菌・ウイルス除去効果の裏付けとなる合理的根拠に当たることを認め、措置命令の仮の差し止めの決定をした」(大幸薬品)としている。
しかし、今回、措置命令を受けた4商品については同社の主張が斥けられたため、同社は13日、東京高等裁判所に対して即時抗告を申し立てたという。
消費者庁はノーコメント
消費者庁は、この件について複数の記者から事実関係の説明や見解を求められたものの、「中身を承知していない」、「今回の(措置命令の)発表とは無関係」、「一部調査に係る内容にかかわるため回答は差し控える」とコメントを拒否した。
「調査」がどのような調査なのか、課徴金に関する調査なのか、消費者庁は差し止め決定に対してどのような対応を取っているのかは定かではない。今後の動向に注目したい。
【田代 宏】
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YouTube動画:「クレベリン」シリーズの措置命令めぐり、消費者庁と大幸薬品が対立