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日本臨床栄養協会、久保明理事長に聞く アドバイザリースタッフ活躍の場、どう広げる?

 「医師と栄養士が手を結べば何ができるか」を探り実践する目的で1979年に設立された学術団体、(一社)日本臨床栄養協会(東京都目黒区)。一般消費者に対し、サプリメントの適切な利用を助言できる民間資格「アドバイザリースタッフ」の養成、資格認定も行う。昨年11月、理事改選があり、任期満了で理事長が退任。新理事長に就任したのは、エイジング医学や予防医療に長年取り組むとともに、サプリメントの臨床研究知見にも明るい医学博士で医師の久保明氏(=写真)である。サプリメント業界関係者の中にもご存じの人は多いだろう。同協会の活動と、その推進を図ろうとしている新理事長の声を伝える。

 臨床栄養とは何か。治療の一環として食事や栄養を捉え、実践的に取り入れることだ。「臨床栄養学」という栄養学領域の学問もある。「栄養を臨床から考え、人間のための活きた栄養学を確立し、医療発展に寄与し、健康の維持・増進に貢献する」。日本臨床栄養協会は、協会の存在目的をそうホームページで説明する。

 食事からの栄養や機能性成分を補助するサプリメントも守備範囲とする。そもそも協会設立の背景には、次の問題意識があった。

 「治療手段としての食事(栄養)の重要性が広く研究され、実証されてきているなか、近年においては、食品と医薬品の中間に位置するサプリメントの市場が形成されるなど、その環境は大きく変化しています。一方、栄養食事指導の果たす役割はますます大きなものとなり、患者の信頼に応えうる医師および栄養士のレベルを確保することが強く求められています」(協会ホームページから引用)

 協会の事業は大きく分けて2つある。まず、臨床栄養分野のプロフェショナル育成。そのために管理栄養士、栄養士、薬剤師などがスキルアップしていくためのセミナー活動などを行っている。もう1つは、食事から得る栄養や機能性を補助するサプリメントについて正しく、かつ、深い知識を持ち、それを一般生活者のために役立たせることのできる「アドバイザリースタッフ」(以下、AS)有資格者の育成と認定だ。協会が認定したASは「NR・サプリメントアドバイザー」(以下、NR・SA)と呼ばれる。

 少しややこしいのだが、ASには、NR・SAの他に、「食品保健指導士」や「健康食品管理士/食の安全管理士」などと呼ばれる資格もある。どれもAS有資格者であることに変わりはないのだが、認定する団体によって名称が異なる。食品保健指導士は(公財)日本健康・栄養食品協会、健康食品管理士/食の安全管理士は(一社)日本食品安全協会がそれぞれ養成と資格認定を行っている。AS資格認定を行う団体は他にも存在するとされるが、AS資格制度の立ち上げを主導したのは厚生労働省。同省のホームページを見ると、ASの養成と資格認定を行う「主な団体」として以上3団体が紹介されている。日本臨床栄養協会によれば、同協会はこれまでに延べ3,700人超のAS(NR・SA)を輩出してきた。

 そういった臨床栄養をめぐる学術団体、かつ、サプリメントのAS育成・認定機関の8代目理事長に就任した久保明氏は1979年慶應義塾大学医学部卒。その後米国ワシントン州立大学医学部への留学を経て1996年に「高輪メディカルクリニック」を設立。16年間、院長を務めるとともに、同クリニックで開発した「健康寿命ドック」を通じて、老化の度合いを科学的に測定することにもつながる臨床データを積み上げていった。その流れで2006年、東海大学医学部東京病院に「抗加齢ドック」を設立。現在は同大の客員教授を務めつつ、都内で診療を行いながら、運動・栄養・点滴療法などを実践している。また、「最新の文献に目を通すのが趣味」というだけあって、サプリメント成分に関する最新の臨床研究知見に精通する。それもあり、サプリメントなどヘルスケア関連企業の戦略アドバイザーとしても活動している。

 久保氏と協会の関わりは10年以上前から。協会誌『New Diet Therapy』の編集長をはじめ、NR・SA有資格者のレベルアップセミナーや、協会が催す大会で開催される「サプリメントフォーラム」の企画および講師を担当するなどしてきた。

 理事長就任にあたって3つの目標を掲げたという。

 「まずは会員数の増加。現在の会員の多くを占める栄養士、管理栄養士、薬剤師の参加をさらに求めつつ、企業会員や学生会員を増やしていくためのプログラムも実現したい。任期中(4年間)に5,000人を目指す」と久保氏。ちなみに、現在の会員数は約4,000人とのこと。

 次いで、NR・SA制度をさらに充実させつつ、NR・SA有資格者の活動を発展させていきたいという。「国民の健康増進に寄与する」ためだ。しかし、それを実現するには、解消する必要のある課題がある。認知度だ。

 「健康食品業界から消費者まで、ASやNR・SAの認知度をもっと高めていく必要がある」と久保氏は指摘。サプリメントをめぐる玉石混交の情報の中から、正しい情報を取捨選択して個々の生活者に提供できるASは、国民の健康増進を側面で支える貴重な存在だといえる。だが、「特に一般消費者には、まだまだ存在そのものが知られていない」のが現状だ。そうした中で、会員数の増加を図るためにも、NR・SAが活躍できる場を広げていきたい、と話す。「従来からの薬局や医療施設などのみならず、介護・福祉施設などにも広げる。そのようにして栄養素や機能性成分に関する国民の理解を深めていきたい」

 以上を実現していくために、3つめの目標として、臨床栄養に関連する団体との密接な連携を掲げた。協会に関連する学会であり、年に1回の合同大会を共催している日本臨床栄養学会(菅野義彦理事長)はもとより、「健康寿命延伸において共通の領域を有する臨床検査、総合健診、身体活動、リハビリテーション、介護福祉、メンタルケアなどの諸団体と密接に連携できるようにしたい」と久保氏は語る。

 最後に、久保氏へ尋ねた。NR・SAが社会でもっと活躍していけるようにするために、サプリメント業界に求めたいことは?

 「健康被害を起こす原因の1に品質がある。ただ、私たちには品質を確かめる術がない。なぜかと言えば、品質は表示されないから。どの成分が含まれているのか、それが何ミリグラム含まれているのか、というところは表示を信じるしかない。だから表示どおりのものを作っていただきたい。それを前提に、私たちは市民公開講座を年に1回、開催している。そうした場も生かしながら、私たちと一緒に市民への啓もう活動を進めていただけるとありがたい」

【石川太郎】

(冒頭の写真:本人提供、文中の画像:日本臨床栄養協会ホームページ画面キャプチャ)

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