1. HOME
  2. 通販
  3. 改正特商法「電子メールによる契約」がアダに~参議院(後)

改正特商法「電子メールによる契約」がアダに~参議院(後)

これまで見てきたとおり、争点となっているのは電子メールによる契約締結において、消費者の利便性を優先するあまり、消費者の被害を防止する施策に手落ちがないのか、十分な予防策が図られているかという点にある。

<消費者庁「当面紙で承諾を」>
 公明党の伊藤孝江議員の質問に対して消費者庁の高田潔次長は、消費者からの承諾の取り方については、承諾を得ていないにも関わらず、承諾を得たなどとする悪質事業者を排除するために、政省令で細かく規定する。口頭や電話だけでの承諾は認めない。消費者が承諾をしたことを明示的に確認する。消費者から明示的に返答返信がなければ、承諾があったとはみなさない。承諾を取る際、その承諾によってどのような効果があるのか、どのような内容のことが電子メールなどで送付されるのかを明示的に示すことを規定することが必要だと述べている。
 そして、消費者トラブルが少ないと思われるオンラインで完結する分野は電子メールで、それ以外のものは当面、紙で承諾を得るとし、Webページ上でチェックを入れるだけで承諾を取ることは認めない。消費者から承諾を取る際に、電磁的方法で提供されるその種類や内容、電磁的方法で提供されるものが、契約内容として重要なものであること、それを受け取った時点がクーリングオフの起算点となることを明示的に示すことなどを考えている、と説明した。
 これらのことが政省令で細かく規定されることになる。伊藤議員は、電子化を無理強いすることがあってはならないと釘を刺した。

 伊藤議員は、詐欺的定期購入商法に対する対策のあり方にも言及した。今社会的に問題となっており、消費生活センターへの相談が急増している「初回お試し無料」や「定期縛り」などの手法で悪質な事業を展開している通信販売事業者などに対する規制である。1回限りと思って申し込んだら定期購入だった。定期購入だと分かっていても「いつでも解約可能」などと強調して契約を結ばせた後、実際には解約に応じないなどの手法である。
 消費者庁によれば、このような被害による相談が2020年は前年比約3割増加(5万6,302件)で、15年の4,141件に比べると約14倍に増加しているという。

<消費者庁「申込みの取り消しを認める制度を創設」>
 改正案の実効性について質問した伊藤議員に対し、消費者庁の片桐一幸審議官は次のように述べている。
 「今回の改正では、通信販売に係る契約の申し込みを受ける最終段階の表示において、定期購入契約において重要な要素となる商品や役務の分量、価格、引き渡し時期、および代金の支払い時期等を表示することを販売業者に義務づけることとしており、これらを表示しない、不実の表示をする、また人を誤認させるような表示をすることを禁止し、これに違反した場合には罰則の対象としている。また、販売業者等が通信販売に係る契約の申込みの撤回または解除を妨げるため、契約の解除に関する事項や契約の締結を必要とする事情に関する事項について、不実のことを告げる行為を禁止し、これに違反した場合には罰則の対象としている。
 さらに、消費者がそのような表示により、誤認して申し込んだ場合に、申し込みの意思表示の取り消しを認める制度を創設する。これらの改正により、詐欺的な定期購入商法対策に万全を期すこととし、通信販売市場における消費者利益の確保および取引の適正化を一層図る」。

<「表示の具体例」6月までにガイドラインを見直す>
 伊藤議員は、改正法案12条の6第2項2号に触れ、その中身の説明を求めた。片桐審議官は、同条項で規定する「人を誤認させるような表示」について説明。「定期購入契約において、最初に引き渡す商品等の分量やその販売価格を強調して表示し、その他の定期購入に関する条件を分かりにくいように小さな文字で表示する場合や、目立たない場所に設置されたリンクから遷移するページにしか表示していない場合などが該当する。改正法案で新設する規定について、どのような場合に違法な表示に該当するのかについての詳細については、法の施行までに、通達等で明らかにしていく方針」と述べた。
 これに対して伊藤議員は、今まさに被害が発生するかもしれない商法に対して、(表示の)何が良くて何が駄目という、その具体例が示されることが有効。法改正を待たずとも、通達やガイドラインなどを見直して、誤解を招きやすい表示方法の具体例を早急に明示してこれからの被害の予防に取り組むべきと指摘した。
 片桐審議官は、「誤解を招きやすい表示方法についての通達等の見直しは非常に重要。現行法下のインターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為に係るガイドライン』というのがあるが、現在、このガイドラインについて早急に見直しを行っているところ。速やかに検討を進め、来月中には公表できるよう最大限尽力していきたい」とガイドラインの見直し作業を進めていることを明らかにした。

<訪販の電子化は経団連からの要請>
 日本維新の会の柳ヶ瀬裕文議員は冒頭、電子書面による契約は取引類型ごとに精査する必要があるのではないか、つまり通信販売と対面販売は分けたほうが良いのではないかと述べた。また、訪問販売における書面交付義務の電子化について「経団連から感染症の予防対策のためとして要請があったのではないか」と、消費者庁に事実の有無を質した。
 消費者庁の高田次長はいったんその事実を否定したものの、随行している事務官からの声に額を集めて協議。議員が速記を止める一幕があった。その後、高田次長はあっさりその事実を認めた。
 柳ヶ瀬議員は、オンラインで完結する分には電子メールで、それ以外のものは当面、紙で承諾を得る。これを政省令で担保するということでいいのかどうか、尋ねた。
 高田次長は、法案成立後の消費者団体、消費生活相談員からていねいに意見を聞いて検討していきたい、と述べるにとどめた。
 ほかにも議員は、詐欺的定期購入商法に対する執行体制、送り付け商法などについて質問した。
 国民民主党の伊藤孝恵議員がワクチン接種に関する質問の後、共産党の大門実紀史議員の質問に移った。

<消費者庁「政省令はオープンな場で議論する」>
 大門議員は、書面電子化をめぐる問題は「消費者庁始まって以来の汚点になる。きっぱり削除すべき」と強い口調で述べた。
 書面契約においては「紙をかませる」必要を強調した。「紙をなくすための改正案として電子化が出てきたのだろうが、滑稽な法案を作ったのだから仕方ない」とし、若年層や高齢者の契約の場合は第三者にもメールを送るなど、「第三者の関与をかませる」ことも必要とし、以上の2点についてその方法を深めていくべき。さらに、取引類型を決め、そのうえで本人の承諾があればそれで良いとした。
 大門議員は現実的な検討として、オンラインで完結するような分野は電子メールで電子書面交付でも良い。それ以外のものは当面紙で承諾を得る。その立て付けを政省令で考えるように政府に求めた。さらに政省令について、法案の成立後、施行期日までにオープンな場で広く聴取する検討の場を設ける必要を求めた。
 消費者庁は、具体的には法案成立後に考えるとしながらも、「密室ではなく、どのような場で議論され、どのような形で決まっていくかが外から分かるような場を考えている」と答えた。
 大門議員は最後に、今回のように政府によって誘導されてしまうような消費者委員会の事務局については信用できないとし、「今後はその運営に国会が関与し国会の意見を反映すべき」と述べた。

(了)

【田代 宏】

TOPに戻る

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

LINK

掲載企業

INFORMATION

お知らせ