持続可能性、60年超前からの経営理念 【SDGsと健康食品産業】一丸ファルコス、自然・技術・人をテーマに
1959年設立の一丸ファルコス㈱(安藤芳彦社長)。天然資源を加工した製品の製造販売を生業とするだけに、経営理念には設立当時から持続可能性を掲げていた。すなわち、天然資源との共生、人間尊重・自然環境保全、そして健全経営の3つ。今でいうサステナビリティ経営に60年以上前から取り組んでいたといえる同社は21年1月、社内の各部門を横断するSDGs委員会を発足。経営理念に基づく取り組みをより深めることになった。
数値目標を策定、30年目途に実現へ
同社は、化粧品・健康食品の原材料メーカー。現在までに1,000近くに達している製造販売品目の大半が、植物などの天然資源からソース(原料)を得ている。だからであろう、経営理念の筆頭に掲げているのは「天然資源との共生」だ。それを通じて「世界の人びとの美と健康に貢献」することで同社は成り立っている。
21年1月発足の社内組織「SDGs委員会」では、設立時から変わらぬ経理理念を踏まえ、30年を目途に実現を目指すサステナビリティ目標を3つの視点から策定した。
まずは「自然」、次いで「技術」、そして「人」の3つ。このうち技術と人は、経理理念に掲げた人間尊重・自然環境保全、具体的には「人間尊重と自然環境保全を基盤として独自の研究開発・技術革新・高品質を探求」のほか、同じく経営理念に掲げた健全経営、つまり「健全なる経営を継続することによりお取引先・関係会社の皆様の繁栄と社員の幸福を実現」に関係する。
3つの目標実現に向けた数値目標も策定した。同社のホームページに紹介されているため全てを取り上げることはしないが、「自然」では、海および陸を守る活動として、対象製品1kg販売ごとに100円を環境保護団体などに寄付する活動を続ける。対象製品の大半が化粧品用原材料だが、陸を守る活動の対象製品には健康食品用原材料も含まれる。「ニームリーフエキスパウダー」について、原料となるニーム葉の調達先であるインドの現地機関に売上の一部を寄付し、植樹活動などに活用してもらっている。
また、「技術」では、「生産性の向上」の目標を掲げ、生産現場1人あたり生産数量を20年度比40%向上させる数値目標を設定。他に、数値目標こそ掲げていないが、研究開発領域における製品開発スピードの向上も目指しており、研究所に導入した最新の液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)を活用し、天然物に含まれる新規の活性成分などの同定や定量の迅速化を図るようになった。製造販売品目の大半を占める抽出物(エキス)の歩留まりや生産スピードなどを向上させるための製法改良に向けた取り組みも含め、経営理念に掲げている「技術革新」や「高品質」などにつなげる狙いがある。
そして最後の「人」では、「女性活躍推進」や「ジェンダー平等の実現」などを掲げる。女性活躍推進では、30年までに女性管理職の割合を15%以上に引き上げたい考え。その実現に向けて最近、SDGs委員会の下部組織として、女性社員で構成されるプロジェクトチームを発足した。
「ここ10年ほどのあいだ、出産のため離職した女性社員はいない。その意味で、もともと女性に優しい会社ではあるけれど、(化粧品や美容サプリメントの原材料など)女性に向けた製品を数多く製造販売しているのだから、女性リーダーをもっと育てていく必要がある。製品開発などにも女性の意見をより反映できるようにしてきたい」と、同社で現在唯一の女性管理職は話す。
健食業界でも高まるアップサイクルへの関心
SDGsやサステナビリティにどう取り組んでいるか──それに対する関心の度合いを化粧品業界と健康食品業界で比較すると、依然、化粧品業界の方が顕著に高いと同社では感じている。ただ、ここにきて健康食品業界からの問い合わせも増えつつあるという。廃棄物の有効活用や環境保護などとの関連で語れることの多い「アップサイクル」が注目されるようになったことが関連しているとみられる動きで、取り扱い製品について「アップサイクルかどうかを尋ねられることが増えている」
【石川太郎】
『ウェルネスマンスリーレポート』2023年9月号(第63号)より転載
<COMPANY INFORMATION>
所在地:岐阜県本巣市浅木318番地1(本社・研究所)
TEL:058-320-1030
URL:https://www.ichimaru.co.jp/
事業内容:化粧品。健康食品・医薬部外品原料の研究開発、製造、販売ならびに輸出入
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