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SDGsと健康食品産業(前) 地域の特性を生かした取り組みが広がる

 持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)は、2015年9月に国連の「持続可能な開発サミット」で採択された2030年までの国際目標。世界中の国が共通して解決しなければならない経済、社会、環境の課題を17の目標で示している。その達成には公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠で、食品産業においても例外ではなく、ビジネス活動の一環として行う投資・イノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されている。

食品ロス削減と地方創生

 消費者庁は、この国際目標の達成に寄与するため、安全・安心で豊かに暮らすことができる社会を実現するという使命の下、消費者基本計画に基づいた施策として、①消費者の安全の確保(関連するSDGs:目標3.12)、②表示の充実と信頼の確保(目標3.12)、③適正な取引の実現(目標10.16)、④消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成(目標1.4.8.10.12.14.15.16.17)、⑤消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備(目標10.16.17)、⑥国や地方の消費者行政の体制整備(目標1.3.4.20.16.17)を推進している。

 エシカル消費について同庁では、特設サイトを開設。エシカル(倫理的・道徳的)消費とは、地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を指す。1人ひとりが社会的な課題に気付き、日々の買物を通して、その課題の解決のために自分は何ができるのかを考えてみることがエシカル消費の第一歩だとして、フェアトレード認証商品や売上金の一部が寄付につながる商品の購入、地産地消、被災地で作られたものを購入することで被災地を応援、食品ロスの削減などを提案している。
 また食品ロスについて同庁では、デジタルブックや人気芸人を起用した動画による啓発活動のほか、同施策に対する消費者の認知度・関心度を向上させるための広報活動など、積極的に取り組んでいる。また環境省では、「食品ロスポータルサイト 食べ物を捨てない社会へ」を開設。消費者向けの情報として食品ロスの発生状況や食品ロスを減らすための具体策などを紹介。自治体向けには自治体に対する国の支援情報、事業者向けには食品ロス削減に向けて事業者ができることを、業種共通、製造業、卸・小売業、外食産業に分け、情報発信している。
 

 内閣府では、「地方創生SDGs」を推進。地方創生は、少子高齢化に歯止めをかけ、地域の人口減少と地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保することを目指す。持続可能なまちづくりや地域活性化に向けて取り組みを推進するに当たり、SDGsの理念に沿って進めることにより、政策全体の最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果が期待でき、地方創生の取り組みの一層の充実・深化につなげることができるため、SDGsを原動力とした地方創生を推進するとしている。「地方創生に向けた自治体SDGs」に関する動画と冊子を作成するなど、地方公共団体におけるSDGsの達成に向けた取り組みの普及・促進・PRを行っている。

 また内閣府では、地方創生を深化させていくためには、中長期を見通した持続可能なまちづくりに取り組むことが重要だとして、その取り組みの推進に向け、地方創生分野における日本の「SDGsモデル」の構築を推進。具体的には、地方公共団体によるSDGsの達成に向けた優れた取り組みを提案した60都市を「SDGs未来都市」として選定。また、その中で特に先導的な取り組み20事業を「自治体SDGsモデル事業」として選定し、これらの取り組みを支援すると同時に、成功事例の普及展開などを通じて地方創生の深化につなげるとしている。

県単位だけではなく市や町単位でも

 地方自治体の取り組みを一部紹介する。神奈川県(黒岩祐治知事)は、2018年6月にSDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業に選定された。「『いのち輝く神奈川』の実現」を掲げる。また同県は19年1月30日、他のSDGs未来都市等自治体の賛同を得て、「SDGs日本モデル」宣言を発表した。「SDGs日本モデル」宣言とは、地方自治体が国や企業、団体、学校・研究機関、住民などと連携して、地方からSDGsを推進し、地域の課題解決と地方創成を目指していくという考え・決意を示すもの。官民連携パートナーシップ、民間ビジネスの力、次世代・ジェンダー平等の大きく3つの柱で構成され、政府策定による「SDGs実施指針」、「SDGsアクションプラン2020」へも位置付けられている。

 群馬県(山本一太知事)は「ニューノーマルを先導する持続可能で『快疎』な群馬の実現」、埼玉県(大野元裕知事)は「『日本一暮らしやすい埼玉県』を実現する」で選定された。大阪府(吉村洋文知事)は「2025年大阪・関西万博をインパクトとした『SDGs先進都市』の実現に向けて」、鳥取県(平井伸治知事)は「人口最小県とっとりの『小さくとも持続可能な地域づくり』への挑戦」、沖縄県(玉城デニー知事)は「誰一人取り残さない 持続可能な『沖縄らしさ』の実現~SDGs推進による沖縄の継承と変革への挑戦~」で選定された。
 また例えば沖縄県は、このほど「おきなわSDGs認証制度」を開始した。SDGsの理念を尊重し、経済・社会・環境の3つの分野を意識した経営を実践する企業・団体などを認証することで、企業・団体などの持続的な成長と地域の持続可能な発展を図ることを目的とする制度で、沖縄県が認証を与える。対象は、① 沖縄県内に本社、本店、支店、営業所などの事業所を置き、県内において事業活動を行う企業や団体であることと、おきなわSDGsプラットフォーム(沖縄県内において、SDGsに関連する活動に取り組んでいる、又は関心を持つ企業、団体、自治体、個人などの情報共有や交流・連携を図る場として2022年度に創設された)の会員であることが条件。現在、第1回の認証企業・団体の公募を行っている。

後編につづく)

【藤田 勇一】

『ウェルネスマンスリーレポート』2023年9月10日号(第63号)より転載

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