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ゼラチン残渣に価値を見いだす 【SDGsと健康食品産業】中日本カプセルの「ゼライクル」に注目

 サプリメント受託製造企業の中日本カプセル㈱(山中利恭社長)が手がける、カプセル製造時に発生するゼラチン残さを肥料に再利用する取り組みが注目を集めている。「ゼライクル」と名付けて事業化しているもので、今年3月、国が推進する「みどりの食料システム法」関連事業に認定されたことをきっかけに、商品の販売にも弾みがついた。需要に応えられるようにするため、来夏をめどに専用工場を立ち上げる計画だ。

みどりの食料システム、基盤確立事業に認定

 サプリメントなどのソフトカプセルの製造過程では「ゼラチンネット」と呼ばれる残さが生じる。カプセル被膜の原料となるゼラチンをシート状に成型した後、製品となる部分を型抜きする。その後に残るのがゼラチンネット。ゼラチンは動物性のため産業廃棄物として処理する必要があり、同社では毎年、約1,000万円の処理費用を計上していた。処理時に温室効果ガスの一酸化窒素が発生するのも課題で、同社では2011年ごろから再利用の道を模索。まずは接着性があるゼラチンの性質を生かして「にかわのり」として販売を始めた。

 その後、SDGs(持続的な開発目標)の機運拡大を受けて、ゼラチンネットの再利用率100%実現を目指す中で生まれたのが肥料だ。ゼラチンには窒素が一定量含まれることに着目して開発したもので、窒素を10%以上含む粉砕・乾燥品、同7%以上の酵素分解品など3タイプを商品化し、21年秋から販売を開始。窒素の原料となるアンモニアの世界的な不足を背景に当初から肥料メーカーの関心を呼んでいたが、今年3月、農林水産省が推進する「みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業」に認定されたことで注目度を大きく高めた。化学肥料の使用低減への貢献も期待されている。

再利用率70%に到達、100%目指して専用工場

 現在、20を超える肥料メーカーや農家などに出荷しており、出荷先は22年初頭との比較で倍増した。肥料としての効果評価を進めているメーカーも複数存在し、出荷先は今後さらに増える見通しだという。再利用率も大きく高まり、現在までに70%へ到達。にかわのりも含めたゼライクル事業の売上高も増えていて、近く、これまでに要していたゼラチンネット廃棄処理費用と同等の1,000万円に達すると同社では予測する。

 28年9月まで5年間を実施期間とする農水省の基盤確立事業では、地元の農業高校や農家などと連携し、さまざまな農作物に対する肥料としての効果を検証する実証実験を進めたり、PR活動を充実化して新規顧客の獲得を進めたりする。また、需要に応じた生産を行えるようにするため、既存施設を生かすかたちで建設するゼライクル専用工場を来夏ごろに竣工する予定だ。肥料の生産量を拡大することで、再利用率100%の達成を目指す。

 「少なくない費用を投じて廃棄していたものから、新しい商品を生み出すことができたのをきっかけに(SDGsに対する)社員の意識も大きく変わってきた。営業や研究開発などの人材を集める際の企業アピールにも役立っている。最近は、環境への配慮などSDGsに対する取り組みを尋ねられることも多い」。

 ゼライクル事業を担当する同社開発部の須原渉部長はこう話す。同事業に興味を抱いたサプリメント販売会社から新規の引き合いを受けることもあるといい、本業にも好影響を及ぼし始めた。

【石川太郎】

(文中の画像:「ゼライクル」を通じて中日本カプセルが取り組む環境循環型ライフサイクルの概念図。同社提供)

『ウェルネスマンスリーレポート』2023年9月号(第63号)より転載

<COMPANY INFORMATION>
所在地:岐阜県大垣市荒尾町229-2(本社工場)
TEL:0584-93-1013
URL:https://www.nakanihon-cap.co.jp/
事業内容:健康食品・サプリメントの受託製造および包装

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