小林製薬、健康被害めぐり再発防止策 国の原因究明調査終わらぬ中で公表、「やるべきことは見えている」
自社製造の「紅麹」を配合した機能性表示食品のサプリメントとの関連が疑われる大規模な健康被害問題を起こした小林製薬㈱(大阪市中央区、山根聡社長)は、「創業家依存からの脱却」や「品質・安全ファーストの徹底」などを掲げた再発防止策を作成し、17日、公表した。
製造ラインに青カビの混入許した原因には触れず
再発防止策は、問題発覚後に同社が立ち上げた、外部の弁護士らで構成する事実検証委員会が取りまとめた報告書の内容を踏まえたもの。報告書は、7月下旬に公表していた。
厚生労働省らによる原因究明調査が未だ終わっておらず、原因が特定されていない中で再発防止策を打ち出す意図について、公表に合わせて報道関係者向けのオンライン会見を行った山根社長は、「我々がやるべきものは概ね見えている。まずは柱となるものを一刻も早く実行すべきだと考えた」と語った。
健康被害の原因をめぐっては、厚労省らが進めている原因究明調査で、同社の旧大阪工場内に設置された紅麹原材料の製造ラインに青カビが混入、増殖することで産生されたプベルル酸を含む複数の物質が、腎機能障害を生じさせた可能性が指摘されている。
この日の会見で同社は、青カビの混入を許した原因を記者から問われたものの、「我々は(国の原因究明調査に)協力する立場。現時点で不確かな情報はお答えしかねる」(山下健司・執行役員製造本部長)として回答しなかった。
原材料の製造・品質管理めぐる「反省」随所に
再発防止策には、健康被害問題を受けて撤退を決めた紅麹事業をめぐる同社の「反省」が随所に織り込まれている。例えば、同事業は「他社から譲り受けた事業」だったとし、「もともと当社に十分な培養関連技術がなかった」と認め、その結果、「事業譲渡元より移籍してきた現場技術者に製造管理を依存する体制となっていた」と反省した。
会見では、事業譲渡元のグンゼ社から移籍してきた現場技術者の人数について問われたが、個人情報の保護を理由に明らかにしなかった。
また、紅麹原材料の製造ラインに「十分なリソースを配置しきれなかった結果、技術者の育成も奏功せず、特定の現場技術者に依存する状態を継続させてしまった」とも反省した。
他にも、品質管理体制について、外部の製造委託(OEM)先に対する品質管理や監査は実施していた一方で、グループ会社を含む自社の工場に対する品質管理や監査は甘かったと反省。「マネジメント層次第で工場内の品質管理改善活動の充実度に差があり、品質マネジメント部もOEM先に対して行うような監査業務を行えていなかった」とした。
経営目標から「連続増益」を削除 「製品検査の強化」も掲げる
小林製薬は再発防止策に3つの「柱」を掲げた。①品質・安全に対する意識改革と体制強化、②コーポレート・ガバナンスの抜本的改革、③全員が一丸となって創り直す新小林製薬──の3つ。
①では、「品質・安全ファースト」を「最重要課題」に置き、これまで重要な経営目標に掲げてきた「連続増益」を中期経営計画目標から削除する、とした。同社は2023年12月期まで26期連続で最終増益を達成していた。今後は、「有事においても、『品質・安全ファースト』の意識の下、社長が強いリーダーシップを発揮し、品質・安全を最優先した決断を速やかに行う」
また、品質・安全に関する体制強化の一貫として「製品検査の強化」を掲げた。
「製品特性に応じて複数の検査等を実施し、製造された製品に規格成分以外の成分が含まれていないかを確認する手順を導入する」としている。
これは、紅麹原材料の出荷時に「意図しない成分」、つまりプベルル酸などが含まれることに気づけなかった反省を踏まえた再発防止策。ただ、特に天然抽出物について全ての成分を分析することについて同社は会見で、「非常に難易度が高く、今すぐにそれができる状態ではない」と認めた。
【石川太郎】
(冒頭の写真:18日夕にオンラインで開催された報道関係者向け説明会の様子)
関連資料:小林製薬が策定した再発防止策全文(同社ホームページへ)
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